第18話 死神手帳08-R(recycle)の悲劇

幽霊の正体見たり枯れ尾花

王様の耳はロバの耳

聞く耳持たない、成りすまし知識人

偏食し過ぎて脳が溶ける

解ける説ける、難題が溶ける

本題忘れて、自己満足

何が正義か、そんなの関係ねぇ

自分が潤えばそれが正義

自分の正義が犯されれば、他は悪

それじゃ~世の中、糞詰まり


 岸部総理が応援演説に和歌山に出向き、襲撃される事件が起こった。安倍川元総理の悲劇が繰り返される?その衝撃は日本を震撼させた。


 冥界の仁・義、魂界の龍厳は驚きを隠せないでいた。


仁 「これは…、何が起きた?」

龍厳「どうも厄介な餓鬼が参戦した事を疑うべきですな」

義 「餓鬼?そいつは何をする奴か」

龍厳「短絡的に結論を導く者。後先は考えず、行き当たりばった

   りで破壊して喜ぶ輩ですよ」


 冥界と魂界の住人の会話に式神が参入してきた。


ゲル「ギル、君に似てるな」

ギル「気が合うかもしれないな。興味があるな、ちょっと調べて

   くるか」

義 「探れるのか」

ゲル「少しでも関われば臭いを辿り、その者の過去を辿れる」

仁 「犬の嗅覚並みだな」

ギル「馬鹿にしているのか、喰らうぞ!」

仁 「すまん、褒めたつもりだった」

ギル「気を付けな。まぁ、いい。じゃ、行ってくるわ」


 ギルは岸部総理を襲撃した土川旭二に入り込み過去を遡った。武器を作る工程まで遡り、そこから注意して接触者を探った。土川の異臭を辿ると牛角を持つ者に行き当たった。ギルはその怪物の残留思念を辿って驚いた。


 ギルは異臭を頼りに土川の思考にダイブした。警察に拘束され孤独な時間を狭い場所で過ごす人物を特定するのは然程難しいものではなかった。対象物が定点しているから、蠢く周囲の情報は彼の周りに吸い寄せられるように集まってきていた。それも餓鬼の仕業だった。集まってくる情報は彼を英雄視し、政権批判の声を高めるものだった。餓鬼はその報道を利用し、狭量な者を探り当て騒ぎの駒としてキープしていた。


ギル「何だよこの報道。まるで英雄扱いじゃないか。実行犯の生

   い立ちだって…。こんなのそこらへんにゴロゴロしてる

   ぜ。しかも自分たちのシナリオに合わせて拡大解釈。さぞ

   かし気持ちいいんだろうな」


 ギルは、呆れながら土川旭二の脳内にダイブした。


ギル「何だこれ?こいつ馬鹿なのか?こんな奴を英雄に仕立て上

   げているマスゴミは存在価値はないな。手にするだけで毒

   だ」


 ギルは、マスゴミが土川の犯行動機を作り上げる過程に嘆きさへ感じていた。安倍川元総理の国葬の許可、選挙制度への不満などを何とか大きな問題へと育てようとしているのに糞害さへ覚えていた。


ギル「罪を犯す者の共通点は情報の貧弱さだな。国民が反対して

   いる国葬を岸部が行ったって。日本が狂ったかとBBCが現

   地取材して日本のマスゴミに騙されたと、安心したやつだ

   ろ、馬鹿だこいつ」


 ギルは、思考層に触れ、土川の本質と話してみる事にした。ギルは土川深層心理に語り掛けた。


ギル「今回の犯行の心理は?」

土川「家族に周囲に馬鹿にされた。一目置かれる立場になってあ

   いつらを跪つかせてやる」

ギル「どうやって?」

土川「先生と呼ばせてやる。働いても評価されない。碌な仕事に

   就けない。そこで知ったのが何もしないのに先生と呼ばれ

   て高額な収入を得ている奴がいることだ。地方議員だ。場

   所によれば数千票で高額収入の職に就ける。議員に直接、

   聞いてみた。その議員も口では偉そうに答弁していたが何

   もやっていない。議会に座っているだけで大金を得てい

   る」

ギル「いい所に目を付けたじゃないか。最も楽に高額収入を得ら

   れ、先生と呼ばれ一目置かれるからな」

土川「そうだろ。でももっと儲かる職がある、それが国会議員

   だ」

ギル「…」

土川「国会議員になるためには年齢制限・供託金が必要だと知り

   その不自由さに怒りを覚えた」

ギル「なぜ、そうなっているか調べたのか?手製のパイプ爆弾の

   作り方や岸部の行動を調べたのに」

土川「興味があったからな。興味のないものは調べない。時間の

   無駄だ。俺には邪魔な壁だ。そんな取り決めは!」

ギル「だからそれを決めた親分の岸部を襲ったのか?でも、そ

   れ、岸部が決めたんじゃないぜ」

土川「トップには違いない。自分たちの取得権益を守るため私の

   ような優秀な者を遠ざけている」

ギル「優秀?…じゃ、政策ってあるのか」

土川「政策?俺が楽に過ごせればいい。俺のように蔑まされた者

   が俺に追随すればいい。それが俺の政策だ」

ギル「それが政策?」

土川「困窮する若者を救える」


 その時、土川の周囲に纏わりつく陰に気づいたギルは土川から離れて影の正体を見極めた。ギルは、呆れ果てその場を後にし、すぐさま報告に戻った。


ギル「行って来たぜ」

仁 「早いな」

ギル「歴史書を見るようなものだ。それに異臭が酷いからな」

義 「それでどうだった」

ギル「驚くな」

龍厳「安倍川元総理の襲撃犯と同じ、だったかその餓鬼は」

ギル「え~、先言っちゃう、詰まんねぇ~な」

仁 「少しはギルに花を持たせてやれ」

龍厳「す、済まない」

ギル「まぁ、いい。まんまと多くの支持を得ていた安倍川を喰ら

   ったその餓鬼は巨大な力を手に入れた。俺たちが束になっ

   て掛かってもやばいかも」

ゲル「ギルが弱音を吐く…、初めてだな」

ギル「真実を伝えた迄だ」

龍厳「洞察力のあるギルなら他にも探り当てた事があるのでは」

ギル「上げたり下げたり忙しい奴だな。気に入った。その通り。

   大したことではないし、防ぐ方法は見当たらないがな」

仁 「何だ?」

龍厳「それは…」

ギル「はぁ、気づいたなら言ってみろ、聞いてやる」

龍厳「顔・体格、生い立ちが似ている自ら孤独になった青年」

ギル「そうだ。邪鬼が探し出したごまんといる犯罪者予備軍の中

   の一人だ。特徴を探り当てても対象者が多く、事前に防ぐ

   のは無理だ」

仁 「うん?」

龍厳「どうした仁」

仁 「閻魔大王はこの怪物の存在に気づいていた。それで警死庁

   を創設されたのか」

龍厳「そのようですな。大王が気に掛けられたのはその怪物が安

   倍川を喰らい巨大な力を得たことに旨味を知った事か」

仁 「人食い熊になったか。でも、なぜ大王は気づかれたか」

龍厳「それは安倍川の怒りの魂に触れられたからでしょう」

仁 「確かに」

ギル「ごたごたした訳の分からない話は後にしてくれ」

龍厳「済まない。味を覚えた餓鬼が動いた。ターゲットも絞って

   な。期間も九ヶ月か…。短くならなければいいんだが」

ゲル「だとすれば今回の失敗は餓鬼の執念を高めるな」

ギル「そうだな、政治家の旨味を知った奴は思想など関係なく隙

   あらば襲うだろうな。いまは、安倍川のいた自由民党の議

   員に限られているが他に波及することも考えられる」

義 「超党派の親中議員に辿り着くのも時間の問題だな」

仁 「有難いような厄介なような」

ギル「ああ、で、どうするんだ、この後」

龍厳「米国に派遣されている魂徒からは米国からの強酸党批判は

   現政権の不備から目を反らさせるため過剰になると聞く」

仁 「反日を唱える者には不都合だらけか」

ギル「込み入った話はまだ続きそうだな。じゃ、俺たちは戻る

   ぜ。行こうぜゲル。用があればあの人間を通して呼べ」


 そう言い残してギルとゲルは消え去った。


龍厳「炙り出しが本格化してきましたな」

仁 「あらゆる危機感を煽り立て内部崩壊を仕掛けるか」

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