第16話 死神手帳06-式神活動開始

あちらこちらに可笑しな輩

関わらないことで増えてます

面倒臭いは知らぬ顔

それではかえって面倒臭い事に悩まされます

自正義の味方だと言う奴ほど痛い

痛い、異体、遺体、妖怪変化

目をみりゃ分かる

どんより曇って、腐っている

精神が病めば、思考が止む

視野が狭まり、一途に迫る

形振り構わず、蠢く輩

駆除には厳罰でしょうか

そうならないように無関心は

関心できまへんなぁ~


 善田海斗は「エロエムエッサイム」と冥界(ドゥアト)へ入るための呪文を唱え、式神を呼び出した。「荒ぶる神」や「妖怪変化」の類である荒御魂であるギルと人の善悪を監視する和御魂ゲルが現れた。


善田「お前たちが式神か」

ギル「俺はギル、こいつがゲルだ」

善田「役割はあるのか」

ギル「あるが気にするな。その方が動きやすいからな」

善田「分かった。ゲルも異論ないな」

ゲル「ああ」

ギル「で、何がしたい」

善田「田別細道と細野不四夫を追い込んで欲しい」


 ゲルは善田から聞いた人物を瞬時に探った。


ゲル「そのふたり、既に魂界の龍晟と龍櫂が憑いている。その状

   況で私たちに何をしろと」

ギル「魂界の者が関わっている?私たちは必要じゃないな」

ゲル「お前、分かっていて依頼してるのか。あいつらと俺たちで

   は役どころが被る所が多いぜ」

善田「ああ。魂界の者は個別に担当しているが憑依はしていな

   い」

ゲル「魂界の者が憑依していない?どういうことだ」

善田「魂界の者は憑依した者を成功に導くが今回は逆だ」

ゲル「逆?貶めるってことか」

善田「そうだ」

ギル「あいつらも担当した人間にそんなことをするのか」

善田「特例だそうだ」

ギル「特例?意味深だな。それで何をすればいいんだ」

善田「君たちには田別細道と細野不四夫が接触した者、関わった

   者に仕掛けて、奴らに不安を与え孤立感を植え付けてく

   れ」

ギル「仕掛けるだけぇ~やらないのか、つまらないなぁ~」

善田「やるのは簡単だがそれでは本丸を落とせない」

ギル「本丸?ラスボスか?雑魚は叩きのめすだけか」

善田「そうだ。雑魚の事で騒がせれば本丸の逃げ道を作るだけ

   だ。真綿で首を締める形で逃げ道を絶つ」

ギル「お前、悪魔の素質があるな、気に入った」

善田「私も君たちを気に入った。そこで情報・状況を共有したい

   からどちらかが窓口になってくれ」

ギル「それは俺がやる、いいなゲル」

ゲル「ああ」

ギル「しかし、魂界の奴らの為に働くのか、俺たちも見下された

   たものだ」

善田「それは違う、その逆だ」

ゲル「どういうことだ」

善田「魂界の周りには邪鬼や餓鬼が纏わりつく。邪鬼は兎も角、

   餓鬼となると彼らには荷が重いからな」

ギル「確かに。下手すれば餓鬼に喰われて終わりだ。しかし、そ

   れは俺たちも同じだぜ」

善田「そうらしいな。そこで邪鬼・餓鬼の対応は君たちの判断で

   駆逐してくれ」

ギル「やってもいいんだな」

善田「必要に応じて」

ギル「それは面白い。ストレス発散に邪鬼を消滅させ、餓鬼とは

   真っ向勝負できるってことだな」

善田「ああ。しかし、逃げるも勝ちを覚えて置いてくれ」

ギル「俺たちが負ける?面白い冗談を言う奴だな」

善田「油断大敵だ。足元を掬われないため絶対、深追いするな」

ギル「大丈夫か?指示を出す奴がそんなに弱気で」

ゲル「そうじゃない。俺たちを仲間だと思っているからだ」

ギル「まぁ、ゲルがそういうならそうしておく」


 荒ぶる神・ギルと人の善悪を監視する和御魂・ゲルはすぐさま

龍晟と龍櫂から得た情報を基に人間関係を洗い出し、田別細道と細野不四夫に関わると「自分に不利になる、疫病神だ」と夢やレム催眠の状態の際に囁き洗脳していった。

 周りの者が田別細道と細野不四夫を疫病神だと遠ざけ始めると貧乏神のビンドゥがニコニコと彼らに近づき、彼らが出す選択肢を悉く裏目に導き奈落の底へと落として行った。

 ゲルとギル、貧乏神のビンドゥの働きかけに田別と細野は孤立し、田別と細野との関係も疑心暗鬼になり「破滅」の未来に不安を募らせていた。

 彼らを裏切り者に仕立てた煮貝の死霊と毛木幹事長は裏で動いていた今までと違い表で動くようになっていた。疫病神が関わるとその周りの者も警戒心が薄れる傾向があった。


 組長選挙の敗北の原因を高倉大臣に負わせて総理候補から完全に削除するつもりが、県連の大物議員が「責任なら俺に」と大声を上げ始めたのを皮切りに「俺だ」と追随する者も多く現れた。県連は自己犠牲の魂によって強固な一枚岩となった。論理だてて組長戦の敗北の原因を県連は精査し始めた。高倉大臣は今回の敗北の原因は「党則の曖昧さだ。それを明確化すべし」と個別の責任から切り離して見せた。

 声に出さないまでも議員の誰もが選挙管理本部に責任がある事は浸透し、幹部への信頼感は失墜したのは如実に表れ始めていた。それに危機感を感じた毛木幹事長は当選の実績作りに仲間の甲野大臣が推す中酷から帰化した候補者の応援に熱を入れた。

 この候補者は日本を嫌うものだった。ある議員が帰化した候補者に皮肉な質問をした、「あなたは戦争になれば日本の為に戦えるか」と。候補者は「戦う」と答えず、戦争反対だと頓珍漢な回答で逃げまくった。帰化の本性見たり、だった。夫婦別姓や外交人参政権に賛同し、日本が確立してきた世界にも例を見ない戸籍制度や道徳観を崩壊させようとしていた。

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