警死庁死霊課粛清係(死神手帳)

龍玄

第1話 胸糞悪い人間界

 この世の不条理、晴らして見せましょう警死庁

 異論、反論、barrenness(不毛論)

 総理、総理、I'm sorry

 クンクン、散歩の犬

 クレームばかりに鼻を効かせ

 目の前の暴走に気づけず、あの世行き

 落ち度を見つけて、提案なし

 「えっ、それ、改善?明らかな破壊です!」

 何が正しいかも分からない

 これじゃ、お話にもなりません。

 

 閻魔大王は、憂いていた人間界に一石を投じる。異例とも言える人間界への介入。大王の側近・義は大王に賛同し、大王の設けた機関の総監を受諾した。


大王「人間界を正すためある機関を設ける」

義 「いよいよですか」

大王「警死庁死霊課粛清係。これを発端に自由に動けばいい。責

   任の全ては私が負う故」

義 「頼もしい限りです」

大王「人間界と通じる魂界とは話がついている。協力は惜しまな

   いとのことだ。注意すべきは魂界が動けば魔界が擦り寄

   る故、可笑しな方向に動かぬようにな」

義 「肝に銘じておきます」

大王「義の側近に仁を使えばいい」

義 「大王の側近は如何に」

大王「礼、智、信を就かせる。未熟ではあるが才能はある者よ」

義 「彼らも喜びましょう」

大王「うん。注意は厳重に。神界も黙っていないだろうからな」

義 「前例がないだけにどう動いてくるか興味深いですね」

大王「頼もしいな。三厄神はこの件には認知はするが黙殺すると

   の事だ。よって、リストに加えることはできないからな」

義 「善意の隠れ蓑を剥す、を目指します」


 大王の思いを受け、義は警死庁死霊課粛清係の活動に粛々と向き合う覚悟を決めた。

 神界は閻魔大王の動きを既に察知していた。閻魔大王が人間界を裁く機関であるのに対し、それを裁くのが神界の裁き所・雷界だ。普段は魂界の者を裁くのが主な任務だが、稀に神々に及ぶこともある。人間界に介入し過ぎ、「欲」によって道を誤る例は少なくない。神にとって人間界と直接関わる事は「感情」というウイルスを喰らう危険性を秘めていた。ワクチンのような物はなく、憑りつかれれば自分では排除できない。だから、神々は人間界との接触を避けるのが慣習とされていた。

 戦争や大規模なテロは、誤った思考に憑りつかれた一部の神の暴走だ。神が神を裁くのは、あってはならない事だと慣習化されていた。雷界は、神界の日常に沿わない慣習を憂いていた。

 性善説が崩壊しつつある人間界を知りつつ動かない事は、人間を育成する事から逸脱し、見て見ぬ振りをしてやり過ごそうとする事なかれ主義に傾斜していると雷界は憂いていた。


優仙「ある閻魔大王が動きましたな」

秀仙「ああ、暫く見守る事に致しますか」

優仙「善意の皮を被った悪意を砕く。思いは賛同に値するが行い

   方によっては厳重に対処しなくてわな」

秀仙「しかし、三厄神と魂界を巻き込むとは厄介な事を」

優仙「胡散臭い奴らを懲らしめるには仕方なしかと」

秀仙「監視体制を整えませんとな」

優仙「郷に入っては郷に従え。異なった考えでも融和させる神の

   お告げを無視して、善意を盾に混乱を招く。可笑しな輩に

   手を貸す、いや作り出す神の造反の抑止力にもなるだろう

   からな」

秀仙「地球は狭いようで広い。世界に散らばった神々も当初は性

   善説にて動かれていたがそれを伝えた者によっていつの日

   からか独自の解釈がなされ変異した。それに気づいていな

   がら神が放置した結果、人間を導くはずの宗教がもとで戦

   を行うまでに発展した。嘆かわしい」

優仙「もとを正せばアダムとイブのようなもの。植物や量産され

   るものはおしべとありめしべ。魚もこれに類す。動物には

   雄、雌の凸凹。神が作られた構造的原則だ」

秀仙「知識を得て理解する力を与えた人間は個別を尊重し、交譲

   にて対応する。変容も同じだ。寛容という教えを見失った

   人間は醜い」

優仙「他の生き物に比較し、脳の大きさとその育成に必要な五感

   から得る情報量の多さに時間を要する。その結果、子育て

   に従事す時間を設けさせるために女に美の追求を与えた。

   美は男を引き寄せ、守りたい気持ちを高めさせる。優れた

   芸術には女の形態や感性を形にしたものが多いのも当然

   だ。その道を究めれば女性かしても不思議ではない」

秀仙「その当たり前を欲が悪道へと導く。女が美を追求する。男

   を引き付ける技を磨く。それを欲情を誘うなどと規制させ

   る。愚かな。それを抑制するのが持つべき意志の正義であ

   り強さなのに」

優仙「秀仙お得意の仏界の批判か」

秀仙「仏が神を目指しても神になれないのはその拭えない不手際

   を人間界に根付かせたせいだろが」

優仙「儒教のことか。確か堯・舜・文・武という古代の君子たち

   の政治を理想とし、周礼を重んじて仁義を実践し、上下の

   秩序を守ることを唱えた。武力によって他者を支配しよう

   とする覇道を批判し、君子の徳によって政治をおこなう王

   道で天下を治めるべきだと主張したやつだな」

秀仙「教えは素晴らしい。それがどうだ、学んだはずの人間は、

   武力によって他者を支配し、独裁者と率いる者に徳を与

   え、天下を治めるものに魔改造されている」

優仙「違約したのは欲かく人間だ、仏界ではなかろう」

秀仙「直接説いた者の罪として怒りを覚える私は可笑しいか」

優仙「確かに。臀部や乳を機能だけではなく美を追求された神の 

   遊び心を欲情の根源とは情けない話だな。曲線美は強靭さ 

   を備えている。雨風などの外敵からしなやかに身を躱し、

   健気にも耐え抜く、その象徴として神は女を創造された。

   欲情するのは抑制力の欠如。精神力の弱さの問題。それを

   男女差別などと言うものこそ愚かなり」

秀仙「男も女から生まれたもの。うん、待てよ。女が尊い者だか

   ら競争相手を減らすために。尊いが遠ざけるに変わったの

   か…。そういう奴らは花を観ても美しいと思わないんだろ

   うな」

優仙「そういう奴らこそ、男女比を持ち出す。数を合わせるので

   はなく能力を持つ数を合わせる。そもそも女は農耕民族。

   男は遊牧民族として互いに助け合う仕組みで神は人間を創

   造された。同じものを求めることは愚問だ。凸凹の意味を

   考えれば答えは見つけられる。それを行わない愚かさ」

秀仙「寛容を失った愚かな者が蔓延っているのが今の人間界」

優仙「ならば、仏界の教えを一から学ばせるか改心させねば人間

   界は身勝手な欲に乱された醜悪な世界になるな」

秀仙「懸念は同じか。ならば、閻魔の動きを期待込めて見守りま

   すか」

優仙「そうするか、これで仏界も目覚め、新たな救世主でも人間 

   界に送り込んでくれればよいのにな、あははははは」







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