宵闇残光記
メガーネ
プロローグ
西暦3421年第三次世界大戦が勃発した。大戦は予想されていた通り核戦争になり、多くの国家、人民が失われた。
核兵器の影響で地表は焼け焦げ、天は紅に染まった。
世界人口は11億人から6000万人程になり、住める場所も限られてしまう。
環境問題も悪化、もはや地球は人類が住める場所ではなくなったのだ。
そんな中でも人類が生きていけると判断された場所はたった五つ。
皇国都市 ロンド。
帝国都市 モスクア。
軍事都市 ペキナ。
連邦都市 ニューヨキリア。
王朝都市 東都。
地下にある街は汚染は進行せず、都市として発展し。地表は汚染が進んだ。地下に暮らせないものたちは地表部分に貧民街を形成して暮らしている。
人類は今度こそ戦争を繰り返さぬよう、一丸となって平和に暮らそうとした。
しかし、汚染された地球上で生きていくのは無理がある。人類は燃料問題、環境問題、人口増加問題の3つを課題を達成するべく、新たな挑戦に試みた。それは宇宙への侵略である。
既に何万光年離れた場所に移動できる術を人類は開発しており、地球外生命体が存在していることも確認していた。
他の星々に人類を移住できたら環境など考えなくてもいい、人口だってどんなに増えてもいい。
人類にとって宇宙というのはあまりにも魅力的だ。
プロジェクトはどんどん進められ、様々な開発も進んだ。
代表的なものは、太陽熱エネルギーを圧縮させた永遠燃料材「サンタイト」。これにより目標の一つである燃料問題があっさりと解決したのである。
そして、「魔術」と呼ばれる技術の発明もされた。
魔術。全世界の空気中に散らせた魔術元素を特定の音の振動を加えることで様々な事象を引き起こせる技術である。
魔術元素はおよそ2000年ほど前の中世の時代まではあったとされ、人類の進歩により変わった環境についていけなかったものとして消えたはずだったのだ。
しかし、西暦47年に火山の噴火により埋まったポンペイ遺跡の土から魔術元素は発見された。
魔術元素の用途は多岐にわたる。回復、攻撃、支援、弱体化等々。
しかし、魔術元素を操るのは素質がないといけない。
魔術を現在の軍で兵器として運用するには使用者が少ない。そこで、人類は都市の垣根を超えた軍、地球連盟を立ち上げることによりさらなる戦力増強を測った。
魔術元素を発見したことにより世界情勢は傾き、魔術元素を軍用にまで昇華させたロンドは他都市に対する圧倒的な優位性を持つようになった。
そしてついに西暦3608年人類はロンド指揮の下宇宙への侵攻を開始した。戦争を吹っかけたのである。後の銀河大戦の始まりだった。
市民たちは兵役を課され、満16歳になると都市部の市民は各都市の正規軍の育成機関に、貧民街の市民は地球連盟軍の育成機関に3年間の教育を受け、戦場へと駆り出された。
育成機関は各都市の最先端技術研究施設とともに海中に存在する。
なぜならば、水というのは地球にしか存在しない物質であるゆえ地球外生命体に対しての圧倒的防御性、そして魔術の基本となる音の振動を伝える速さは水中のほうが速いからである。
侵攻は当初はうまくいった。数々の星を破壊、技術や生命体、全てを狩り尽くさんとする勢いであった。
魔術を使う魔術師達は英雄扱い。まさに人類は無双状態だった。人類に勝てるものなどないと言われる程に。
その後も人類は快進撃を続け、地球に似た惑星も発見した。
これにて戦争は人類の一方的搾取で幕を閉じた。かのように思えた。
搾取された側としてはたまったものではないだろう。彼らは結束を強め他の惑星をも巻き込んで対人類の議会まで作り上げてしまったのである。(通称︰宇宙連合)
連合の規模は凄まじく、地球VS全宇宙という絶望的状況へと戦争は変貌した。
人類軍2万に対し、連合軍400万といった戦線もあったのだ。
戦況は逆転。戦争が開始してからおよそ400年。地球は地球外生命体に侵略されている。
地球は太陽の光すらもささぬ暗闇の中の生活を強いられたのだ。
人類が日の目を拝むことができるのはいつになるだろうか。
*
西暦4005年9月2日 マリアナ海溝 地球連盟軍 育成学校 入学式
「第402期入学生。総勢24万5616人を祝福する!ようこそ戦場へ」
馬鹿でかい学園広場に木霊する教師長の声。約25万の各貧民街の少年少女を七絵と送る声である。
「我々人類は…………」
教師長の熱弁が続く。人類がどうとか、これからの地球がどうとか…。そんなものはっきり言ってどうでも言い。と、ここに居る24万5616人は思う。
この地球連盟軍は各都市の正規軍と違って、装備が貧弱、資金も少なく、入軍するのは金がない貧民街出の奴らだけ。
魔術師の育成と言う名の目的で作られ、壁になって死んでくれたらラッキー程度のものだ。
この軍に入った兵士の死亡率は72%。兵役と言いながら任期終了はなく、各都市の最前線に派遣される使い捨ての駒。
故に生き残りたい。強くありたい。ただその思いだけしか頭にない。
「現在地球は他の生命体の餌食となっている………」
地球外生命体は日々戦いを仕掛けてくる。そして、それはここも例外ではない。
各都市の最先端技術研究施設だってあるし、育成学校もある。水という不利もあるが、地球外生命体からしたら絶好の狩り場だろう。
人類だって反抗はしている。現に領土を取り返した都市もある。
しかし、ここマリアナ海溝には戦闘員が教師を含め、数百人程度しかいない。だから育成学校の生徒たちは侵攻してくる敵に対して戦闘の義務が課されている。訓練兵にもかかわらず、である。
「さて、これから能力テストを行う。君たちの右側に一人一人ロボットがあると思う。それの指示に従って行動してくれ。この能力テストはクラス編成、及び、生徒会メンバー決定に使われる。励みたまえ」
ピッとロボットが一斉に作動し始める。
直接クラス編成に関わる項目は4つ
学力、身体能力、魔術適正、魔術性質である。
*
3時間後 教師陣
「今年の新入生はどうですかね〜」
攻撃魔術授業担当ボイル・マークローが口にした。
目の前に並ぶのは24万5616人の試験結果のデータ。これからクラス編成と生徒会を決める教員会議が始まるのである。
「この作業が来ると9月ってことを思い知らされるよ」
科学授業担当クロノ・エクセルがぼやく。
「まぁまぁ、これから私達の後輩になるかもしれませんし。始めますかね。そろそろ」
学園長が諭すと一斉に教師達は作業に取り掛かる。
教師56名が24万5616人分を処理するため、一人あたりの量は4386人。
それを出身地、学力、身体能力、魔術適正等々。あらゆる情報が書き込まれているデータを分類していかなければならない。
分類は主に3つ。
科学クラス:学力が高く、身体能力が低い人で構成。
主に兵器の改良、整備が仕事である。
戦闘クラス:身体能力、魔術適正が高い人で構成。
魔術班と機械兵器班に分かれる。
魔術班は治癒魔術、攻撃魔術、支援魔術に
更に分かれる。
主に学園都市全体の警護が任されている。
生徒会:魔術適正が特に高く、通常の魔術の規定を超える
強さを持つ超級魔術が使える者と基礎能力が特に高いもので構成。
主に同期の生徒の管理、及び戦闘の際の司令塔と
して活躍する。
分類したあとは、他の教師と意見を交換し合い、もう一度熟考する。
そうして生徒会以外の生徒は分類し終わった結果。
科学クラス8万9256人
戦闘クラス15万732人 内魔術班5万2315人
機械兵器班9万8417人
生徒会候補12人
例年通りなら、生徒会は4人運営。会長、副会長、戦闘班長、科学班長だけだ。
候補生の内2名が超級魔術師。この2人は確定。
あと2名を誰にするかが問題となる。
候補の残りの8名は厳選の厳選をして選んだ選りすぐりの8名。甲乙付け難く、決めるのに時間がかかった。
長い間議論は白熱し、卓上には4つのデータが並べられた。
―――――――――――――――――――――――
名前:?
出身:ロンド
性別:女
生年月日:?
学力:A+
身体能力:A
魔術適性:超級
魔術性質:処理能力の増加(常人の約600倍と推測)
魔術属性:闇
身体的特徴:身長 162cm
髪色 淡い紫
―――――――――――――――――――――――
名前:明智
出身:東都
性別:男
生年月日:4月27日
学力:A+
身体能力:B
魔術適正:超級
魔術性質:共有(感覚や意識を他人と共有できると推測)
魔術属性:空
身体的特徴:身長 168cm
髪色 黒
―――――――――――――――――――――――
名前:シュテルケ・ストラーフ
出身:モスクア
性別:男
生年月日:2月21日
学力B
身体能力:A+
魔術適正:A
魔術性質:攻撃系
魔術属性:炎
身体的特徴:身長184cm
髪色:金
筋肉質
―――――――――――――――――――――――
名前:スカアハ・アメリカ
出身:ニューヨキリア
性別:女
生年月日:1月4日
学力:A+
身体能力:C
魔術適性:A+
魔術性質:支援系
魔術属性:水
身体的特徴:身長158cm
髪色:白銀
―――――――――――――――――――――――
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