♪26

「もう半分過ぎたのか。」


俺はそう呟く。正確には半分とちょい。俺と桜花が完全に分断されるまでの時間だ。


 桜花が死んで3週間半が経った。初めこそそういう気持ちを押し殺さないとと思っていたが、今なら言える。


「会いたい」


そう気づいたのはつい最近。やっぱり、窓を開ければ会えた相手がいきなり居なくなるのは、悲しいし、寂しい。だから、会いたいという思いが積もっていって、俺にとって桜花は大切な存在なんだなと改めて気づいた。


 それでも、もう会えないのは分かってる。今は塞ぎ込んだまんまで外に出る気も失せてるし。でも、いつかはちゃんと行かないと行けないってのも分かってる。だから、今は自分の気持ちを整理しとかないと。


 いつも桜花が座っていた俺のベッドを見る。昔はここで駄弁っていたんだなと思うと懐かしい。


「早く区切りをつけないと。」


この胸の中に眠っている気持ちは何なのか。俺は桜花とどうなりたかったのか。そして、桜花に伝えたいことは何か。それを全部知らないと。


『この時間が続くと思ってた

 秋の風がそっと頬を撫でた

 通り過ぎた季節と時間だけが

 僕の心の傷を癒した


 きっとまだ受け入れられないんだろう

 気がつけば溢れてしまうんだろう

 でも君がいなくなった悲しさが

 僕の心を蝕んでくる


 会いたいと 思うことが

 君の救いになるのかい?

 答えはまだ出そうにないけど

 過ぎていく 秒針を

 傷つければ

 きっと 君が 溶ける



 まだ道のりは半分なのに

 手の届かないそんな気がした

 ずっと近くにいる気がするのに

 僕の心の傷をえぐった


 きっとまだ忘れきれないんだろう

 ずっと心の中に居座っているんだろう

 僕の隣にはいつもその姿が

 チラついてしまってどうしようもない


 忘れたいよ 君のことを

 僕の救いになるから

 そんな僕が歌う君への歌

 忘れたら 誰が君を

 想ってくれるの?

 ならば 僕が 溶ける



 君がいなくなって 僕の心には

 ぽっかりと穴が空いたようだ

 きっと君のことを思い出せたら

 僕の心は満たされるよ


 会いたいと 思うことで

 さらに遠くなって

 少し寂しく思うけれど

 廻る巡る 歯車を

 傷つければ

 きっと 君が 溶ける

 きっと 思い 溶ける』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る