♪11

 何を思いついたのか、俺は文房具を漁っていた。目的は分からない。ただ本能が「探せ」と言っている。


「あった。」


引き出しの奥底から出てきたのは、箱に入ったシャーペン。いかにも高そうなやつだ。たしか、これは桜花に貰ったやつ。なんのお祝いかは覚えていないが、何かがあることだけは覚えていた。


「ん〜、使ってみるか。」


―カチカチ


ん?


―カチカチカチ


んん?


―カチカチカチカチカチカチカチカチ


あぁそうか。芯を入れてなかったな。0.5mmのシャー芯を入れてまたカチカチ。少し芯を出してメモに線を描く。


「おぉ!書きやすい!」


感触としてはカリカリよりスラスラに近い。桜花のやつ、最高のものを残してくれたな!


「ありがと〜!」


天に向かって、お礼をする。これは何故か届いたような気がした。


『忘れていたけど これの存在も

引き出しの奥の お宝発見!

記憶の隅だけ 覚えていたのよ

他はなんにも 覚えてない


全然足りない 全然足りない

頭のHDDが

もっと余裕が欲しい 後付けでもいいし

なんならお金も払うから


頭の数だけぶっ飛んだ

ネジの数だけ後悔した

今更何も言えないけど

ただそこにいると感じてたい



忘れていたけど これの存在も

本棚の裏の お宝発見!

「えっ?そこに隠しているのはだいたいエロ本って?」

まぁいいか


全然足りない 全然足りない

頭の内蔵メモリが

もっと覚えていたいし 忘れたくないし

なんなら保証もしてて欲しい


頭の数だけ外れてた

ネジを拾い集めていた

今更何も変わらないけど

ただずっと一緒にいてほしい



こんなバカでごめんね

こんなアホでごめんね

世間知らずでごめんね

でも私だけは許してね


頭の数だけぶっ飛んだ

ネジがどっかに行っちゃった

だけど探す必要ないよね

だって君が許してくれる

頭の数だけ飛んでった

夢の数だけ笑っていた

言葉じゃ何もわかんない

だからちゃんと見つめててね』

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