アイラ フランキー コネリー
「駅の名前を教えていただける方?」
と腹から出した大声で叫ぶ気怠い様子の目の少し赤く充血した女性、列車の方々から"何処何処!"ときちんと返答が上がる。また一駅が過ぎた頃に、
「ところでみなさまは、子どもの名前に対して女性が決めるべきと思われますかあ? それとも男性ですか、個人的には女性だと思ってるんですけど」
と再び腹から出た通りの良い声で尋ねる。方々から困惑3割の笑いが起こる。
「アイラに一票入れる方?」
笑い。
「フランキーだと思う人、名字がコネリーになるからフランキー・コネリー」
と今度は父になるのであろう男性から声が上がる。
また笑い。
「それはバカだと思うんだよね~」
次第に赤ちゃんの名付け論争に巻き込まれていることが判明して、朗らかな笑い。イヤホンを耳に、スマホをいじっていた若い男性も顔をあげてえがお。
「フランキー・コネリー、フランキーコネリーが良いと思うひと?」
そこでひとりが賛成した。
「ほら、良いっていってるじゃん」
負けじと女性、
「ほらアイラがいい人、手あげて~」
笑い。女性が重ねて、
「アイリッシュの名前でおすすめがある人?」
と尋ねて、誰かが答えたのに女性はろれつの回らない様子で
「それはまじで好きなやつだわ」
と応じる。
「ところでいつが期限なの?」
座席に座るおばあさんが聞く。
「子どもは来年だけど次の駅まで」
と男性。笑い。
「アイラ・フランキーはどう?」
とおばあさん。
「アイラ・フランキー? ぶっちゃけ、悪くないね」
女性がふらふらと頭を揺らしながら答えたのに、一同再び笑い合う。乗り合いの人々がその場で築いた一瞬の和気藹々が列車の中で会話の輪になったこと、車内を照らす黄色いライトの暖かさとあいまってすてきなひととき。
「アイラ・フランキーで決定だね」
「解決じゃん」
と端々でも会話が起こる。
「ちょうどついた、ここで降りるよ」
と男性が先にホームへ出る。女性はぐらつきながら扉まで歩いたあと、挨拶をして降りて行った。幕が降りるみたいにドアがバタンとしまり、電車は動き出して進む。皆の唇にほほえみを与えて。
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