第25話 夢の中では

 彼女は歩いていた。

 手を引かれ彼とともにゆっくりと緩やかな坂を上っていくと、歌が聞こえてくる。

 小高い丘の上に古びた四阿がみえてきた。

 そよぐ風と共に歌はそこから流れてきている。

 優しい響き、澄みわたる歌声は青い空へと吸い込まれていくようだ。

 五つの影は、来訪者にも気に掛ける様子はない。

 遥かなる時を超えて、魂に刻み込まれた歌は続く。

 心からの想いが、そこには込められている。

 いつしか彼女も歌の輪の中にいた。

 六つに増えた影。高らかに歌は世界にこだましていく。

 彼はただそれを見つめるのみだった。

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