前線都市

アフターノーツ

第1話

第1章 第1節「Prologue」

 

 彼らは、よく晴れた夏の日に訪れた。


 かつて日本と呼ばれていた島国の、工業地帯が広がる田舎町。その中央に、突如として地下深くまで続く大穴が開いたのだ。地盤沈下か、あるいは埋め立て工事の際に欠陥があったのかと、政府が調査計画を立て始めたころ。彼らはずるりと穴の中から這い出した。

 怪物らしさはそのままに輪郭だけ人間に似せたような歪な容姿。おぞましい呻き声。人知を超えた異能力。なにより、手当たり次第にヒトを食い荒らす凶悪性。

 その「外敵」を恐れた人々は現代科学の総力を上げてとある「生体兵器」を作り出し、外敵諸共封じ込めるという策を打ち出した。

 故にこの町は、こう呼ばれる。


――前線都市、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る