第7話 噂は事実へ
馬車に乗っている時、気になっていたことをメルヴァント殿下にお聞きした。
「殿下、とある噂を耳にしたのですが…。」
「それは、『親が妹ばかりを着飾らせ、さらに妹は姉の全てを奪った』と言うやつかい?」
「はい…。」
「私の側近に君の過去のことを話したんだよ。そしたらそれを聞いていたメイドが、広めたらしくてね。もっと注意しておくべきだった…すまない。」
「いえ、殿下が謝ることではありませんわ。お気になさらずに。」
「やはり君は優しいな…。」
どこの貴族か知られていない為、伯爵家への直接的な影響は無いようだ。
しかし、噂は時に人生を大きく変えるものだ……。
「殿下、サリーエ様、着きました。」
「ご苦労。」
「お疲れ様です。」
私達は護衛2人を連れて伯爵家へと入る。
するとすぐにお父様が来た。
「どんな面をして戻ってきたのだ、サリーエ!」
「本日は大切な報告があり、参った次第です。」
「報告だと…?」
「初めまして、ルザリシャルエ伯爵。私はルアと申します。」
「貴様か!?サリーエを連れていった張本人は!」
「本名はメルヴァント・ディア・イジェガルドと申します。サリーエとの婚約を、ご報告に参りました。」
「何だと!?第二王子殿下、サリーエとの婚約など、私は断じて認めんぞっ!」
お父様はそう叫んだ。
お母様とシファナも、怒鳴り声を聞いて駆けつける。
怒りにものを言っていたがために、咄嗟に言葉が出たようだ。
そんなお父様に、私は告げる。
「報告に参ったと私は申し上げましたわ。もう決定事項なのです。陛下は認めておられます。お父様に拒否権はありませんわ。」
「知るか!私は認めん!」
「ルザリシャルエ伯爵。報告は以上ですので、帰らせていただきます。」
「待て!貴様、勝手なことは許さん!」
あろうことか、殿下の胸ぐらを掴んだ。
さらには殴りかかろうとする。
当然護衛の騎士がお父様の首元へ剣を向けた。
「今すぐ殿下を離せ!」
「っっ!」
お父様が殿下を離すと同時に、騎士が手を縛る。
「第二王子殿下への不敬罪で、このまま王城へと連行する!」
2人を置き去りに、お父様は私達と共に王城へと向かった。
不敬罪は、死刑以外ない。
しかし、お父様は殿下の意向により終身刑となった。
そしてそれは瞬く間に、貴族社会で知られていった。
貴族社会で知られた話--
『ルザリシャルエ伯爵は、殿下との婚約という大変光栄な事を、認めないと叫んだ挙句に殿下に暴力を振るい、不敬罪で終身刑となった。
さらに、妹が姉のものを奪い続けたという噂は、ルザリシャルエ伯爵の次女、シファナが行っていた本当の事であり、長女サリーエ様はそれを責めないとおっしゃった。
責めるということは、自分がされていた事を相手にするのと変わらない、というふうな事を言ったサリーエ様のお優しさに殿下は見惚れ、婚約を申し込んだ。
サリーエ様は、海のように広く、深い優しさを持った、見目麗しく素晴らしいお方である。』
少し事実とは違うが、大方間違っていない。
この一件で、シファナは地獄を見ることになる…。
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