ケディーの生涯

街田小夜

父との別れ

ジョンソン家は熱心なクリスチャンで、日曜日になると、教会へ出かけ、フィリップ神父の言葉に耳を傾けます。

貧富の差は激しく、ジョンソン家もそんなに楽ではありませんでした。

ジョンソン家は、父親がロバート、母親がマロニー、物語の主人公ケディーは、まだ3歳。

ロバートは、ミサが終わると、神父と長い時間話をするのです。

「ママ、パパは何を神父様と話しているの?」

「パパと神父様は、幼馴染なのよ。」

二人の長話には、マロニーも少し呆れ顔。

「戦争か、、、終戦間近らしいし、大丈夫だろう、、、。」

神父は言いました。


ロバートは帰るなり、

「マロニー、ケディー、ピクニック行こう!」

「何よ、いきなり、何処へ行くの?」

「君と新婚の頃、良く出掛けた原っぱへ行こうよ。」

「ケディーが 産まれて全然だったわね。行こうか?じゃ支度するわ。」

「ピクニックって、何処?」

パパとママばかり楽しそうにしていて、ケディーはちょっぴり不機嫌でした。

ロバートがケディーを背に、マロニーがお弁当を持って、一家で初めての外出でした。


「あっ蝶々、蝶々。」

「原っぱに行けば、珍しい動物が沢山居るよ。」

「早く見たい、見たい。」

「そんなに暴れたら、落っこちてしまうよ。」

「あはは、あなた達見ている方が面白いわよ。」

三人は大きな原っぱに着き、初めてのケディーは大はしゃぎ、不機嫌もどこへやら。

「鳥さんが、いっぱいいる。」

何か黒い物が、ケディーの頭上を横切った。

「何!?今の!?また、、、?」

「モモンガだよ。70m飛ぶんだよ。多い時は200m飛ぶ事もある。」

「私も飛びたい!」

「ケディーなら飛べるかもな。」

「そうね、飛べるといいわね。」

三人は、久々に外出をして、新鮮な気持ちでした。

「パパ、また連れてって。」

「楽しかったかい?」

「たまには外に出ないとね、今度行く時は、パパにお弁当を作ってもらおうかしら。」

「よし、任しとけ、凄く旨いのを作るよ。」


それから暫く経った、ある日の夕方、ロバートに召集令状が来たのです。

ロバートは、神父を訪ねました。

令状が来た事、妻と、まだ幼い娘が心配な事。

神父はしっかりお見通しでした。

「ロバート、君の家族の事は任せてくれ、、、そうだ、馬鹿のふりをしてみるのはどうだ。

コイツは駄目だと思われれば、直ぐに帰してもらえるかも知れんぞ。」

「はは、そいつはいいな。やってみるよ、、、ありがとう、フィリップ。」

翌朝、朝食を済ませ、マロニーとケディーも起きてきました。

「お早う。」

軍服に着替えたロバートが居ました。

「あなた、無事に帰ってね、、、ううっ、、、。」

「パパ、嫌だ、何処にも行っちゃ嫌だ。」

「ケディー、ママを助けて、良い子にしているんだ。そうすれば、パパは早く帰れる。」

これが永久の別れとなるのです。

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