第39話
◇◆ ◇◆
昼食どきになっても目を覚まさなかった
サイズ調整はすでに終わっていて指輪を受け取って宝飾品店をあとにした。
その足で市場に向かって露店で試術用のネックレスを十個購入した。これは魔力を混ぜ合わせることができるかどうかの確認用。
午前中に試した付与で問題点もいくつか出てきた。それを踏まえた上で露店で売っている安価な物を使って試すことにしたのだ。
市場での買い物を済ませたあと、探索者組合に顔を出した。
家を借りるにしても広いところに移るとなるとそれなりにお金がかかる。俺にできる仕事といえばやっぱり探索者組合での依頼。等級の関係であまり報酬が高額なものは受けられないが効率良く回りたい。その想いから張り出してある依頼書の確認に訪れたのだ。
「いいのある、エイシャ?」
「ん〜、採取系だとグロフゥコンの卵を十個、アコニッツを二十株」
アコニッツは採取自体は難しくないが精製すると害獣駆除の毒薬ができたはず。グロフゥコンは翼を広げると二から三メートルになる大型の鷹。ただ、アンディグの近くに棲息に適した場所はなかったと記憶している。確か比較的高地を好む習性だったはずだ。
「他には何かある?」
「護衛依頼が二件。アンクロ行きとブレウ行き」
「ねえ、それならアンクロにしない」
「リイサはアンクロに用があるの?」
「アンクロというよりはルゥビスにかな。詳しくは家に帰ってから話すけど。出発の予定はいつか分かる」
「ん、六日後」
「それなら、今の予定とは被らないな」
「受ける?」
「俺はいいけど、エイシャはどう?」
「ん、私もいい。じゃあ、受けてくる」
エイシャがエルネスさんの元に行っている間、俺と
彼とは何度か会話をしたことがある名前はヘクゼン。確か等級は俺より二つ上でオパール(D)、ショートソードと小型盾を装備する中堅探索者。
「よう、レオ。この間ライパンの集団が発生しているのを見つけてただろ」
「俺、その現場は見てないんですよ」
「そうなのか、今その辺りの調査依頼が出ててな。俺達も参加する予定なんだがお前らはどうする?」
「俺達はアンクロまでの護衛依頼を受けようと思ってます」
「あの内容の割に報酬が安いやつか?」
「ええ、丁度アンクロへ向かう予定があったもので、そのついでです」
「成程な、それなら報酬が安くても問題ないか」
「そうですね。馬車の乗車賃が出ていくだけより、護衛の報酬が入って来ますからね」
「ヘクゼンさんはいつ出発ですか?」
「俺達は三日後だ」
「お、レオ、明日の午後待ってるからな」
「何かあるのかレオ?」
「ガンドさん話しても大丈夫ですか?」
「お、ああ、レオが解体して持ち込んだものと普通に狩ったままのライパンの試食だ」
「へぇ〜、レオはそんなこともしてたのか」
「まあ、俺にできるのは採取とか解体くらいですからね」
「一芸に秀でていればいいんだよお前は」
「おっと、そろそろ俺は行くわ」
入り口の扉の脇にはヘクゼンさんに向かって手招きする人物がいた。
「じゃあ、ヘクゼンさんも気をつけて」
「おう、レオもな」
ヘクゼンさんが去って行ったあとガンドさんが本題を切り出してきた。
「グロフゥコンの卵の採取に行かないか?」
「ガンドさん、今、アンクロへの護衛依頼受けてきた」
俺が答えるより先に受付から戻ってきたエイシャが答える。
「そうかぁ、いや、それならいいんだ。レオが解体したらグロフゥコンの肉がどんな風に変わるか興味があっただけだからな。それにグロフゥコンの生息地の近くにはいい素材があったと思ってな」
「ガンドさん、参考までにどんなものが採れるんですか?」
俄然興味が湧いてきた。どんな素材が取れるんだろうか。
「噂の域を出ないが聖銀砂が出たらしいな」
「聖銀砂って、あの聖銀砂ですか?」
「あの聖銀砂らしいぞ」
「ねえ、そのセイギンサってなに?」
「俺も実物は一度しか見たことが無いんだけど、魔力の伝達効率が非常に高いと聞いたけど」
「概ねそうだな。特定の鉱石を鍛造する際に加えるということだけは俺も知っているがその技術を持つ者は限られているな」
「希少価値は高いのね」
「それがなぁ、普段は殆ど価値が無い」
「え〜、希少な素材なのにどうして?」
「扱える職人がいないんだよ。だから値段が付かないんだ」
「聖銀砂を扱える職人なんてそうそういるもんじゃ無い」
「そうですよね。俺も見たことないですよ」
「まあ、生きてるうちに一度は拝んでみたいけどな」
「俺はいいですよ。そんな人に関わると碌でもないことになりそうなんで」
「ハハっ、違いない。じゃあ、明日な」
「はい、明日」
「じゃあ、依頼の詳細は帰ってからにしようか」
「ん」
「
「うん、帰ろっか」
「ああ」
「ん」
なんか余計なフラグを立てられた気がするから絶対にグロフゥコンの卵の採取には行かないぞ。
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