第102話 その後と今とこれからと
そこから先はびっくりするほど早く流れた
正式に唯さんと付き合うことになった俺はすごくうきうきしていた
周りの人にも「どうしたの?」と言われるほど
優愛を通じて唯さんの耳にも入ったらしい
「純平くん、最近あまり学校生活に身が入ってないって聞いたよ?」
「…」
俺が何も返す言葉がなく固まっていると
「それは姉さんもじゃん」
と隣からまたまた遊びに来ていた芽依さんの言葉が飛んできた
「そっ、それは〜」
返す言葉がなくなった唯さんに芽依さんはやれやれといったような感じで追撃をした
「まぁ桜井の前でカッコつけたいのは判らなくもないよ?年上彼女だし?初彼氏だし?だけど、今日何枚皿割ったの?それに今日転んでばっかりだし、」
「唯さん今日転んだんですか?大丈夫でした?」
「ちょっと桜井は黙ってて」
芽依さんの言葉に俺はしゅんとして聞くほかなかった
「えっと、五枚ぐらいです、」
唯さんもしゅんとして答える
「ていうかなんで付き合ったの知ってるの?しかも初彼氏って言うのも、2つとも誰にも言ってないのに」
唯さんは気付いたようにぷりぷりと怒り出した
「そりゃわかるよ、二人してふわふわしてんだもん」
はぁ~あという言葉が最後につきそうに答える
「そんなこと言ったら芽依だって彼氏いたことないじゃん」
芽依さんは図星をつかれたように答える
「20過ぎまで彼氏いたことないやつに言われたくないよ〜だ」
今にも喧嘩が起こりそうな雰囲気
もう起こってる判定かもしれないけど
「ちょっとふたりとも、喧嘩は、」
「純平くんは、」「桜井は」
「「黙ってて」」
「はい〜、すいません……」
なんてことがあったり
あっという間にクリスマスが来て
「本当に良かったんですか?どこにも行かなくて」
「うん、初めてのクリスマスだし」
そんなことを言われて2人して赤くなりながらケーキを食べたり
特にその後は2人で夜ふかししてゲームをしたり
あとは付き合ってから逆に緊張してできなかった手つなぎしたり、そんなクリスマスだった
正月には一応お見合いでってことで両方の親に報告しに行った
麻衣さんは
「まぁ〜やっとなのね、ここまで長かったわ〜」
ふふふとそんな感じでどこまでいったのか聞かれたけど唯さんが怒ってからは特に何も聞かれなくなった
お父さんは
「そうか、」
と一言だけ、別に他の言葉が欲しかったわけじゃないけど、なんかなぁ〜と思っているとテーブルのしたでバレないように繋いでいる唯さんの手に少し力がこもった
「純平、その、なんだ、まぁそういうことは2人でいるときかバレないようにしろ」
しっかりバレていたらしい
唯さんの手の力も抜けていた
今までで一番濃くて一番早く感じた冬だった
そんな冬はあっという間に去り
文字通り春がやってきた
新学期、新しいクラスメイトに、新しい教室
どうなるかと思いながら出発の準備をした
「大丈夫?忘れ物ない?」
「はい!大丈夫です」
「そっか、いってらっしゃい!」
唯さんはぎゅっとハグをしてくれた
「行ってきます」
俺は心からの笑顔を見せて家を出発した
外で嫌なことがあっても家には待っててくれる人がいるそう思っただけで不思議と不安はなくなった
まるでみんなのこれからの未来を祝福してくれているかのような大きな桜の木が風に揺られていた
春を告げる
そんな光景だった
第一部完
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