第67話 話し合い


唯さんの家の前まで来た

いつもだったら普通に入っていけるのに今は緊張してしまう

理由は足を怪我してしまったから

唯さんは多分とても心配してくれるだろう

だけどそれが嫌だった

唯さんにあまり心配をかけたくなかった

もしかしたら歩けるかもしれない

そんな1%もない希望に託して右足を地面に着けてみる


「っっ」


声にならない程の痛みが右足を襲った

すぐに右足を宙に浮かせたのでなんとかバランスは保つことができた

さぁここからどうしようか

なんとかバレないようにできる、、のか?


どうしようかと考えていると右側から声をかけられる


「もしかして姉さんに迷惑かけちゃうとか思ってるかもしれないけど、姉さんはそれ以上に桜井に恩を感じてるから大丈夫だよ」


唯さんが俺に恩義を感じることなんかあったかな?

と思ったけど芽依さんの発言はなんとなく腑に落ちた


「ここってもしかして純平の家じゃない?」


左側から優愛が問いかけてくる


「あれ?優愛ちゃん知らなかった?」


不思議そうな顔で芽依さんが言った

俺はそこで思い出した

動物園で優愛と唯さんが出会っていた事を


そのことを思い出してからはさっき以上の緊張が押し寄せてきたが芽依さんが入ってみてのお楽しみーと呼び鈴を押してしまった


家の中から足音が聞こえてきた


ガチャ


唯さんがドアを開けた


「あれ?芽依どうしたの?って、純平くん足どうしたの?、、、あれ?その子って」


唯さんは今の状況を受け入れられていないようだった、というか俺がメッセージアプリで伝え忘れた


「えっと、とりあえず入って?」


何故か唯さんが疑問形になった

芽依さんに続いて申し訳なさそうに優愛が入る

そして唯さんに手伝ってもらって最後に俺が入った



家に入ってからは靴が脱げずに苦労したがなんとか唯さんにこれも手伝ってもらって脱ぐことができた


リビングに行くと麻衣さんがいた


「純平くんどうしたの?あれ?芽依?」


「えっと、」


なんて言ったらいいものか

悩んでいると芽依さんが助け舟を出してくれた


「その辺は後で話すから一回座らせてあげようよ」


全員確かにとなり俺はリビングのカーペットの上に右足の底をつけないように座った


「それで、これはどういうこと?」


動物園の時程までは行かなくても少し怒ったような、真剣なような口調と声のトーンで唯さんが口を開いた


「っ」


なにか言わなくてはいけない

だけどまだ頭の中で言わなきゃいけない言葉がまとまっておらず何も発言できなかった


「ここはあたしから説明させて」


唯さんが芽依さんの方を向く


「今日は文化祭の準備があって少し遅くまで残ってたの、外が真っ暗で地面に穴が空いてるのに気が付かなくて、それで転んで足捻っちゃったみたいで」


「分かった、あとは少しそこの子とお話させて」


唯さんはそう言うと優愛を連れて別室に向かった



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る