第66話 気づかい
「大丈夫?足痛くない?」
先程から5分に一回ほどのペースで優愛が俺に質問してくる
「地面につけなきゃなんとか」
「そっか、良かった」
俺が優愛に質問の答えをすると安堵したような表情で今までなら絶対に言わなかったことを言ってくる
「なんとか、着いたね」
芽依さんの言う通りなんとか駅につくことができた
普段は両足で歩くので手伝ってもらっているとはいえ、何度も転びそうになった
「電車あと15分くらい来ないね、これだから田舎はな〜」
優愛に促されるように電車の時刻を確認する
田舎でももう少し本数を増やしてほしいと思う
「イス座ってたら?」
芽依さんに連れられホームの椅子に座る
「足本当に大丈夫なのか?」
芽依さんは先程から優愛にセリフを取られていたように心配している視線をこちらに向けていた
優愛は自販機でなにか飲み物を買っているようなのでやっと二人になれたとでも言うのだろうか
「まぁ最初よりは痛くないので」
「本当か?」
「はい、」
芽依さんに本当のことを見破られたようで少し怖かった
実際は最初よりも赤みは増しているし、痛みもそれに比例するように増していた
けれどこれ以上心配をかけるわけにもいかなかった
ポケットからスマホを取り出し唯さんに連絡を入れた
純平「今から帰ります」
唯さん「気をつけてね、変な人とかいない?大丈夫?」
純平「大丈夫ですよ」
唯さん「それならいいけど、本当心配してるから気をつけて帰ってくるんだよ」
最後に猫の絵のスタンプを送り唯さんとのやり取りが終わった
足怪我してますとは言えなかった
「どれがいい?」
少し経つと優愛が飲み物を3本持って俺たちの方に来た
「これかな?」
3本の中から1つ選び優愛の手の中から取った
「そういえば、お金渡すよ」
ジュースは大体150ぐらいかな〜などと思いながらバックの中にある財布を探す
「ううん、いらない、」
優愛から意外な言葉が出た
いや、今日の行動を見ていたらさほど意外ではないかもしれない
「じゃあかわりにこれあげる」
俺はそう言うと優愛に貼らないタイプのホッカイロを渡した
この季節に優愛は自販機から買った冷たい飲み物を持ってきてくれたのだ、せめて温まるものをと思ったがホッカイロしかなかった
「ありがとう、」
小さい子が買ってもらったお菓子を食べるのがもったいないといったような表情でホッカイロを見つめていた
ちなみにジュースの残り2本はというと
一本が芽依さん、残った最後のものを優愛が飲んでいた、さっき会ったばっかりの優愛と芽依さんがすぐに打ち解けあっていてすごいなと思った
あと、優愛が俺は冷たいジュースが好きということを覚えていてくれて嬉しかった
そんなこんなで駅に電車が来た
飲み物は飲みきらなかったが優愛はこれを見越して蓋付きの物を買ってきてくれたのだろうか
電車の中はあまり混んでおらず3人とも座ることができた、さっきまで両脇で支えてくれていたため
座り方も右から芽依さん、俺、優愛になった
電車が唯さんの家の最寄り駅につく
芽依さんの家はここからさほど遠くないことを聞いたのだが優愛はどうなのだろうか?遠いなら悪いことをしてしまった
唯さんの家まではもう慣れた道なのだがこの状態だといつもと見える景色が少し変わった
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