入学 02

「60人以上も仲間を増やして来ただと……しかも全員☆4だと」


 マーカスさんは驚愕の表情で俺達を見た。


 中央セントラルに戻った俺達は早速冒険者ギルドへ向かい、合流した仲間を登録……そして一日かけて昇級試験を行い全員のランクを上げた。


「おまけにワレワールでエルフ達の反乱を治めてきたと……」


「あぁ、ここにいる全員で協力してな……実力は見ての通り。俺達はこのメンバーで中央学院セントラルアカデミーを目指す。だからこのメンバー全員で依頼達成出よろしく頼むぜ」


 依頼を受けた順番と冒険者登録は前後するがここは何とか全員を☆5にしてもらおう。


「まぁ、依頼を受けた後に協力者を増やすのは規約違反じゃ無い……出来れば先に登録をして欲しかったがな。まぁ、なんとかしてやろう」


「さすがマーカスさん、頼りになるぜ」


「でもどうするんだ? 中央学院セントラルアカデミーに入学出来る人数は自分をいれて51人だ。人数が余る分はどうするつもりだ? 今からパーティーを分けてもその実績には出来ないぞ」


「まぁ、そこは問題ないはずだ……明日にでも入学手続きをしてくるさ」


 入学するグループは俺とレイドガーディアン組、そしてリリアをリーダーとするエルフ組だ。何せリリア達は既に入学資格を有している。

 当然ファーガスがちょっかいを掛けてくるだろうが、その対策も抜かりない。


 騙し討ちで国を乗っ取るような悪逆国には目に物見せてくれるってヤツだな。


「エイジよ、悪い顔をしておるの」


「まぁな、悪い奴にざまぁする瞬間は最高に気持ちいいからな」


「明日が楽しみだね」


 入学のための全ての準備を終えた俺達は明日学園に乗り込むのだ。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 目の前に聳え立つ高い門……ここが中央学院セントラルアカデミーの入り口だ。門の位置は東西南北四カ所に存在している。

 門を守る衛兵に☆5を証明するギルド証を見せると、俺達ゾロゾロと門を潜っていく……この時期は大人数での入学手続きが多いらしいので対応も慣れた物のようだ。


「人数が50人以上いますね? 2クラスという事ですか、とりあえず1クラス来て下さい……このゲートを潜って頂ければ登録がされます」


 受付嬢の指示に従い、まず俺達が進み出ると駅の自動改札を高くしたような物を潜った。


『ギルド証のスキャンだけじゃ無くて身体データも登録されているみたいだニョ。ギルド証と身体データが紐付けされたから、ギルド証だけ盗んで入れ替わりとか出来ないニョ』


 なるほど、超遺物アーティファクトを利用しているわけだな。この惑星はファンタジーなくせに変に科学的な所があるから面白い。


「人族だけじゃなく、エルフにドワーフにビーストと色々な種族でクランを作ったんですね……リーダーがエイジさんですね? 記録しました」


 特にクランとかは作っていないが反論する必要は無いだろう。ゲートを潜るだけで個人認証か……今後は気を付けないといけないかもしれないな。


 続いてリリア達のエルフのワレワール組だ……さて、どんな反応が出てくるやらだな。ちなみちエルフ達はまだフードを被っている。


 「……え? いえ……まさか?」


 戸惑いを見せる受付嬢……そして全員がゲートをくぐり抜けた。


「あ、あの……全員エルフの方ですね? そ、それはともかく、こちらのパーティーもリーダーがエイジさんとなっております。1クラスはリーダーをいれて最大51人ですので、入学を許可するわけにはいかないです」


「いや、それは大丈夫なはずだ……俺のパーティーに所属はしているが、彼等のグループは入学資格があるはずだぜ」


「え? ど、どういう……」


 戸惑っている受付嬢を余所に俺はリリアに頷いて合図を送ると、エルフ達ワレワール組は一斉にフードを外した。


「妾はワレワール王国の王女である、リリアーヌ・エル・ワレワールじゃ!! よしなに頼むぞ」


「わ、ワレワール!? しょ、少々お待ちくださいませ!!」


 慌てて去って行く受付嬢……まぁ、そうだよな? 滅んだと思われている国のお姫様が入学したいってやって来たんだからな。


 リリアは悪戯が成功したという顔でこちらに笑いかけてくる。隣でエイシャがゴホンと咳払いをしていた。




 しばらくして受付嬢が何人かの男性を伴ってやって来る。そのうちの一人、いかにも性格の悪そうなおっさんが出会い頭に……


「こいつらがワレワールの王族を騙る不届き者か!!」


 ……などと言い放ってくる。


「お待ちください、これからその確認を取る所です」


 もう一人の男がおっさんを止める。ある程度予想していたが、あっさりと事を運ぶ事が出来そうにないな。


「偽物に決まっておるだろう!! 今もワレワールの門はファーガスが見張っているわ!! 調べるまでも無い!! 引っ捕らえろ!!」


「いけません、状況証拠で決断など規則違反ですし、それを決める権限はあなたにありません」


「何をっ!!」


「なぁ、その寸劇いつまで続くんだ? 俺達も暇じゃ無いんだが」


 時間が掛かりそうなので俺はストップをかけるつもりで話しかける。


「何だと!? 貴様、俺を誰だと思っているんだ!!」


「知らないな、いきなり現れて自己紹介もせずにギャーギャー喚き出したのはアンタだろう」


「おのれ、無礼な!!」


 何というか、いつだったかの騎士団のハゲチャビンに通ずるものがあるな。


「だから無礼も何もアンタが誰だか知らないって言っている……ごちゃごちゃ言う前にワレワールのお姫様の身元確認をするべきだろう? それとも何だ? お姫様の身元が確認出来るとマズい事でもあるのか?」


「ぐっ!? 貴様……」


「ゲイオンさん、ここはあなたの管轄じゃ無いんですから引いてください」


「っていうか、ワレワールのお姫様の身元が確認出来て困るヤツなんてファーガスの奴らだけだよな……アンタ、ファーガスの関係者か?」


「何故それを!? 貴様ワレワールの間者か!?」


「ゲイオンさん!! 君も挑発しないでくれ!!」


 おっと、怒られちゃったぜ……リリアが笑いを堪えている。ちょっとからかいすぎたか?

 受付嬢が何やらクリスタルのようなものを持ってきてリリあの前にやって来た。


「入学前に中央学院セントラルアカデミーに届けられた、ワレワール王女殿下の生体データが登録されている超遺物 アーティファクトです。これを額にかざして頂くと本人の認証する事が出来ます」


「おお、確かに以前これを使った覚えがあるのじゃ……構わぬぞ、確認するが良い」


「それでは失礼します」


 受付嬢がリリアの額に水晶を近づけると、その水晶から緑色の光があふれ出す。


『リリアーヌ・エル・ワレワールと認識しました』


 水晶から合成音声が聞こえてきた……生体認証の超遺物アーティファクトか。


「ワレワール王女殿下本人様と確認が取れました……王女殿下の入学資格は失効しておりませんので、当然入学可能となります」


「待て!! もう国が滅びているんだぞ、アカデミーに入学する意味など無いわ!!」


「学園の規則では問題ありません。それに彼女が王の資格を得れば再び国を得る事も可能です」


「すぐにファーガス本国から引き渡しの要求が来るぞ!!」


「それに従う義務はこの中央学院セントラルアカデミーにはありません、そのような事を行えば彼の国はどうなるかあなたはよくご存じでは?」


 おっさんと男達の言い争いが続いている……いつまで続くんだこれは?


「そういやワレワールはまだ滅びていないからファーガスが必死になってお姫様を探しているって聞いたけど、どうやら本当の事らしいな」


「なあっっっ!!!?? そ、そ、その話を、ど、どこでっっ!!??」


「やはりアンタはファーガスの人間か、そしてその態度で今の話が真実だと確信が持てたぜ」


「おのれ、やはり貴様は間者か!!」


「何を言っているんだ、この程度の話はギルドで噂で聞けるレベルだぞ? この程度でスパイだ捕らえるだの言っていたら冒険者ギルドは誰もいなくなるぜ」


「なんだと!?」


「っていうか、さっきからアンタは何なんだよ? 入学のイチャモンを付ける係なのか? それで給料貰えるとか楽で良いな」


「ぐおおっ、ぐぬおお、き、貴様……許さん」


 どうやら怒りでまともに声を出せないようだ。少し挑発しすぎたか? とにかくこいつはファーガス関係者で間違いなさそうだ……ネジコ、チェックしておけ。


『了解だニョ……インセクトを付けておくニョ』


「君、いい加減にしたまえ!! ゲイオンさんも戻ってください、あなたがいると話が進まない」


「ごめんなさい」


「おい、離せ!!」


 おっと、また怒られちゃった。おっさんは衛兵に連れられてどこかへ行ってしまった。


「こほん、とにかくだ、2クラスとも入学の資格は確認出来た……歓迎する」


「それでは手続きがありますからこちらへお越し下さい」





 ……どうやら無事に中央学院セントラルアカデミーへ入学出来そうだ。




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そろそろストックが切れます……不定期になると思います。


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