◇俺、おしゃれカフェへ行く

――大学

「魔女ねぇ……」

と、俺は仲間に聞こえない様に、ぼそっとつぶやいた。半分、無意識のつぶやきだ。


俺は学食からの帰り道、我が大学の都市伝説である『魔女』の件について、なんとなく、ぼやっと、考えてみていたのだった。


確かに、さきほど食堂で見かけた娘は、いかにも魔女ですよ〜〜といった不思議な格好をしていた。全身黒い服だったし、雰囲気の中もそれっぽい。


ん、いや、いやいや、待てよ俺……、あんな服は、案外、普通なのかもしれないぞ。


最近、進化が著しいファストファッションのお店。そこでも、あんな感じの服を見たことがある!そんな、気がしてくる!


そうでなくてもだ。

なんでも有りの現代だ、カオスの聖地、秋葉原や池袋等に行ってからものを言え!ってやつだ。奇抜な衣装を着る人もたくさんいるぞ。


そうそう、もう一人の西部劇スタイルおねえさんも含め、コスプレしているんだよレイヤーさんだレイヤー!きっとそうだ。魔女なんてウソさ!


俺が脳内で、とっ散らかった考察をしていると、

「あ、そうだ、明日、空いてる?」

と、話しかけられた。俺はすぐに返事をする。

「あぁ、空いてるよ」

「じゃあ、駅前のカフェ行くか?」

「駅前の……あのおしゃれなカフェ……か!この前、話していたところだよな?」

そうそう、と仲間がうなずく。


「あそこで働いている岬くんが、お前に会いたいって言ってたし」

「え?何で?」

「知らね」


あまりおしゃれなカフェは行ったことが無いが、まぁ、明日、ドラマの再放送を観ようとしていたぐらいヒマだったしな……うん、行ってみるか。


――翌日

駅前で待ち合わせ……カフェでの集合にしなかったのは、一人で入店となると緊張するからだ。


「おーい!」

仲間がやって来た。

おしゃれなカフェはすぐ側だ。


……。


カフェで一体、何が起こったのか?


……特に何も起きていない。


仲間の友人……というか、知人の岬くんと出会っただけだ。


だけだ。


だけだ。

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