◆魔女、魔法学校の授業を受ける


魔女のハコにわ


――インドア系ホビー魔女の作った謎空間で、ネズミ人形から人間に戻るためにゆるゆるライフを送る話『ある一族編』――


はじまりはじまり



魔法歴127X年……もとい西暦201X年


――魔法学校

ここは、魔法大学である。天文学的確率で生まれる『魔法の才能を持つ者たち』を育てる教育機関。


……なのだが、実際はそんなに立派なモノでは無い。


とにかく教える側も教わる側も人数が少ないので、毎日授業がある様な、きちんとしたカリキュラムがあるわけではない。どちらかといえば、大学のゼミのスタイルに近い雰囲気だ。


それもそのはず、魔法学校は大学の施設を借りているのだ。


キャンパスの隅の奥の果てにある部屋。移動に時間がかかるため、放置されていた場所が魔法学校として使われている。


ガチャ……

ドアを開けて、2人が入って来た。


魔女とその師である。



◆魔女、魔法学校の授業を受ける


私は魔女、呼び名も魔女だ。半人前だが……。

今日は久しぶりの授業だ……。


部屋の奥では、師が授業の準備をしている(いつも10分ぐらいかかる、先に準備を済ませておけよな)。

私は椅子に座り、ぼぉーっと習慣の考え事をしていた。


……魔法の才能とは何か?


だいたい同じ確率とされている宝くじの1等前後賞の当選は、一気に、ドカッと大金を手に入れることができる。


一生働かなくてもいいとまではいかないが、人生に劇的な変化をもたらす。金銭トラブルに遭うデメリットを差し引いてもメリットは大きいと言えるし、ハッキリとしている。


反面、魔法の才能はどうだろうか?


――師の準備が終わる。

「さぁ、授業を始めるかぁ……」

「遅いですよ!」


「だってお前、考え事していただろ?魔女にとって考えることは大切だからな、邪魔してはいけない。ゆっくり準備をさせてもらったよ」

「なんといういいわけですか!師がサボりたいだけじゃないですか!」

「ははは、言うな!」


自由な師である。


「それじゃあ今日は久しぶりに炎でも出してみるか!さぁ出してみろ」

「ふぅぅぅん!ふぅううううん!」

魔法は、魔力と……気合いだ!

「そうだ、ふんばれ!指先に集中しろ!」

「ほのおぉぉ!でろぉぉぉ!!」

ボッ

小さな、小さな炎が指先に灯った。

「あらかわいい」

「……」

この様に努力すれば、炎を出すことができる。

……だが、出せるのは小さな炎がやっとだ。それはライターの炎とそれほど変わらない。


同様に雷とか水とか風とか氷とか、いろいろなものを出すことはできる……のだが、修得までの労力は大きい。その反面、威力や量は少なく、他の方法を使った方が簡単だ。


「今、魔法ってショボイなぁ……と思っていただろ」

師が私の心をのぞいた。その証拠に鼻から血が出ている(心をのぞく魔法は使うと鼻血が出る欠点がある)。

師はティッシュで鼻を押さえながら、

「あれだよ、一つ一つの魔法はショボくても、組み合わせる、工夫する、応用する、そうすることで大きな効果を発揮するのだよ」

「その話、何度も聞きましたよ」

「まぁ、お前の場合、インドア系の魔法の方が向いているからな」


……。


魔法にインドアとかアウトドアとかあるんかい!

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