魔女のハコにわ――インドア系ホビー魔女の作った謎空間で、ネズミ人形から人間に戻るためにゆるゆるライフを送る話――
サーキュレーター
・プロローグ
魔法……、
みんな大好き、それが魔法。
使ってみたいな、それが魔法。
でも、実際には不可能だ。
だって、魔法はファンタジーの世界のものだものね、しかも、この物語の舞台は日本だものね。
……と考えている人は多いだろう。
だが、その考え、正確には間違いなのだ。
事実、この世界には、そして日本には魔法があるのだから。
主に公務員たちによって、徹底的に隠されていることの一つが、
人間は魔法の才能を持って生まれてくる(ことがある)。
ということだ。
たが、しかし
「やったぜ!これで、明日からは、世の中、みんなが魔法使いだぜ!」
……と、いうわけにはいかない。
期待させておいて申し訳ないが、その確率は、年末に発売される大型宝くじで1等前後賞が当選するのとほぼ同じである。
――役所
ここ日本では、母子手帳を貰う日、魔法の才能を持つ子を生んだ親たちの前に、
初対面の職員が現れ、不意に耳打ちをされる。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「あなたのお子さんは魔法の才能をお持ちです」
「は?」
「ごくごくごく稀なことなんですよ、喜ん下さい」
……と、
意味不明な説明をされた後、魔力を抑える特別なお守りを渡され、子供に出来る限り身に着けさせるように勧められる(勧められるといっても、強く強く強く!勧められるので、ほぼ義務)。
形は様々用意されており、指輪、ネックレス、お札、ICチップ等々から自由に選ぶことができる。
お守りに代金はかからない。その代りに再度、耳打ちされて、
「魔法のことは内緒だよ……」
とささやかれる。これは魔法のキーワードで、親の記憶消去を行っている(それまで長々と荒唐無稽な説明をしておいて、挙句に記憶を消去する恐ろしい所業)。
親は帰宅後、何事も無かったかの様に騒がしい育児生活を始めるのだが、なぜかお守りを子供に持たせることだけは忘れない。
個人差はあるが、おおよそ10代の半ば頃、魔力が充分に溜り、魔法のコントロールできる様になる。すると、お守りは反応し魔力による通信を行った後、その効果が切れる。
そして、次に魔法学校のパンフレットが郵送されてくる。
これにも丁寧な魔法が施されており、魔法の才がある者だけが読める様に工夫されている(本当に両親や家族にとっては迷惑な話である)。
兎にも角にも、回りくどい上に非効率的なやり方だが……、制度として決まっていることなので、どうしようもない。
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