慰労!決闘、お疲れさまでした!

「いや~! 流石はユーゴたちだ! 俺たちが見込んだ男だけのことはあるな!」


「父上? なんかいい感じで締めようとしているように見えるでござるが、そうはいかないでござるからな? 今回もしっかり反省してもらうでござるよ?」


「タダカツおじさんだけじゃなく、お父様たちも反省してくださいね? 今回もまたリュウガさんたちに尻拭いをしていただいたという自覚を持ってください」


「次にまた厄介事を持ち込んできたら、流石に私たちがユーゴたちに突っぱねさせるわ。毎回毎回、来る度に面倒事だけを置いていくんだから……!」


「め、面目ない……」


「ライハ、龍の瞳を覗かせるのは止めてくれ。色んな意味で落ち着かないから……」


 ヤマトの珍客三名との決闘は、大方の予想通りユーゴたちの快勝で終わった。

 ただ、それでめでたしめでたしといかせるわけにはいかない戦巫女三人衆は、自分たちの父親をまたしても正座させてお説教の真っ最中だ。


 背中から怒気を放ちながら父親たちに詰め寄るサクラたちの姿に、ユーゴたちも苦笑を浮かべるしかない。

 まあ、確かに彼女たちの言う通り、厄介事を持ち込むのはこれっきりにしてほしいなと思いながら、ユーゴは可哀想な父親たちをフォローしに入った。


「まあまあ、その辺でいいだろ。もうタダカツさんたちも反省しただろうし、こんな面倒なことは二度と持ち込んだりしませんよね?」


「持ち込んでくると言われても僕は対処しないぞ。なんだったら、この場で全員斬り捨ててやろうか?」


「リュウガ? 流石にそれはマズ過ぎる発言じゃねえか?」


「いえ……それが一番確実な方法ですし、もしかしたらその方がいいかもしれませんね……」


「ライハ? 真剣な表情で父親を見殺しにするかどうかを検討しないでくれないかい? 流石の私も泣くよ?」


 この二人、思考が似てきている気がする……と、物騒な話を真剣に検討するリュウガとライハを見ながらユーゴが思う。

 娘に見捨てられかけているウジヤスにはまたフォローが必要だなと彼が考える中、またエレナに引っ付かれているマルコス(既に諦め気味)が父親たちに問いかけた。


「それで、あの三人は今、どうしているんでしょうか? あれだけの惨敗を喫して無様を晒したのです、開き直って騒ぐ可能性もあるのでは?」


「ああ、それなら多分大丈夫だ。とりあえず、軽傷のカツヨリは病院で手当てを受けて回復してるし、エンジの方も大した怪我じゃないって診断を受けて、病院で安静にしているよ。カツヨリは負けに納得してるし、エンジも今は騒ぐ元気もないだろうさ」


「……途中でどっかに逃げ出したマサナガはどうなんですか?」


「彼はもう帰り支度を整えて、病院で治療を受けている二人を放置してヤマトに帰還しようとしているよ」


「舐めていたリュウガくんに負けただけじゃなく、あれだけの醜態を晒してしまったからね……気位の高い彼のことだ、この学園の子たちに好奇の目で見られることが我慢できないんじゃないかな?」


 三人の内、戦いの中で怪我を負ったカツヨリとエンジは順当に病院で治療を受け、経過観察も兼ねての入院が決まったようだ。

 残る一人であるマサナガは怪我こそ負っていないものの、そのプライドはズタズタだろう。


 見下していたリュウガに負けただけでなく、自分の将としての素質も否定され、剣士の魂である刀も叩き斬られ……おまけにふんどし一丁に剥かれる始末。

 しかもこれ全部がリュウガからの徹底的な舐めプによってやられたことだというのだから、あの場で憤死しなかっただけ奇跡的といえるだろう。


 これはマサナガだけの話ではないが、この決闘の詳細は遅かれ早かれヤマトにも伝わるはずだ。

 そこに至るまでの話だとか、決闘中に三人がどんな振る舞いをしたかがヤマト本国や家の面々、周囲の人々に知られてしまったら、カツヨリはともかくエンジとマサナガの面目は丸つぶれ間違いなしだ。


 ぶっちゃけ、似たような経緯で勘当された立場であるユーゴは、これから彼らを待ち受ける過酷な運命を想像してちょっとだけ同情したのだが……でもやったことがやったことだしなと考えを改めた。

 カツヨリとの一対一のぶつかり合いは気持ちのいいものだったし、彼だけは無事でいてくれたらいいな~とユーゴが同情する相手を一人だけに絞る中、なんにせよといった様子でタダカツが口を開く。


「まあ、これで一件落着ということで……! また面倒をかけて悪かったな、ユーゴ。詫びの品は改めて届けさせてもらうから、少し待っていてくれ」


「まったく……! 父上! 後で謝罪したり報奨を贈れば何もかもが許されるというわけでは――」


 どうにか傷を広げずに話を収めようとしている父へと、サクラが叱責の言葉を投げかけようとしたのだが……誰かがその肩をポンポンと叩いた。

 驚いて振り返った彼女は、背後に立つアンヘルが非常にいい笑顔()を浮かべている様を目にして、少し心をざわつかせる。


「安心しな、サクラ。これで終わりじゃあない。っていうか、アタシにとってはここからが本番さ」


「……アン殿、何かしたんでござるか?」


 別に自分に敵意が向けられているわけではないのだが、アンヘルの笑顔を見ているととても嫌な予感がする。

 いったい、彼女は何を企んでいるのか……? とサクラが考える中、一同が話をしていた部屋の扉が猛烈な勢いで開き、大いに焦った叫びがその奥から聞こえてきた。

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