『 逃がれの街 』あらすじ

水井幸二は、長野の工業高校を出て二年。

東京の電気店の配達員をしていた。



同郷の同級生、沼田の職場で強盗事件が起こり

幸二も事情聴取を受ける事になる。

沼田の嘘の供述で、罪を被され誤認逮捕される。


事件の時間、幸二は恋人の牧子と会っていた。

ところが、そんな女はいないと刑事にアリバイを否定され、愕然とする。


覚えのない罪で拘留された幸二。

名前と電話番号しか知らない牧子は、幻だったのか。

眼光鋭く、冷徹な黒木刑事の捜査で、

牧子は偽名で、まだ高校生という事が判明し釈放される。



この誤認逮捕により、会社で居場所を失う。

理不尽な雑用ばかりの日々。

社長のお気に入りの元ボクサーの社員、八田の挑発を受け

殴り合いとなる。八田をぶちのめし、会社を辞める。



牧子の本名は、悦子である。

自分が逮捕された原因は、その嘘のせいだった。

悦子を呼び出し、問い詰める。

力ずくで抱きながら、ようやく牧子という謎の女ではない

現実の悦子を手に入れたような気になった。


悦子の、通い同棲のような日々。

スナックを営んでいる、悦子の母のヒモの暴力団員

渡辺が悦子を連れ戻しに来た。



数日後、悦子に会いに行くと渡辺が現れた。

悦子を奪った渡辺と争いになり、渡辺を殺してしまう。



クリスマスが近付く街並みと、喧騒の中の孤独。

都会の真ん中の公園で、5歳のヒロシと出会う。

初めは、子犬でも拾ったような気分だった。

ヒロシと過ごす時間の中で、幸二は少しずつ心を開いていく。

乾いた孤独が、潤っていくようだった。



ところが、渡辺の弟分達にヒロシをさらわれ

争いの中で、連中の一人を刺してしまう。

警察と組織、双方から追われる事となり、二人で逃避行を開始する。


暗闇の海へボートを漕ぎ、追手を巻き、車を盗んで逃走する。

捕まりたくなかったら、逃げればいい。

今日が居づらければ、先回りして明日へ走るだけだ。



疲労困憊の中

気付けば実家のある、長野の上田方面に向かっていた。

碓氷峠を超え、軽井沢へ。


信号待ちの交差点を行き交う沢山の人たち。

今日いた人間が、明日にはいなくなる観光客ばかりの街。

ならば、この街に紛れ込めば、誰にも気付かれず潜めるのではないか。



軽井沢の奥深い別荘に忍び込む。

誰にも見られない、気付かれない、雪で覆われた奥地の別荘が

逃れ辿り着いた、ふたりの安住の地。


他には何も要らない、ヒロシと二人だけの、かりそめの幸せの時間。




組織の者たち、そして黒木刑事たちの捜索が

二人を追い詰めるように、徐々に迫ってくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る