第75話:衝撃の内容!

「何だと!? バイエンが大敗して奴も死亡しただと!?」


 デンバー総司令部にて総司令官『アイゼンハワー』元帥は報告書を読んで叫ぶ。


 報告書には詳細に壊滅した様相が記されていてアイゼンハワーも唸るように声を出すと他の人物も吃驚する。


「戦艦の主砲を要塞砲として使うとは……な! 日露戦争で確か203高地や旅順港攻略時にも戦艦の主砲を使用したと聞いている」


「するとサンティエゴ基地の東西南北にも同じ要塞砲が取り付けられていると見た方がいいな」


 アイゼンハワーの言葉にパットンが吠える。


「んな事、どうでもいい! ジャップの手の内が分かったのだ! 今こそ攻めて攻めまくるだけだ! 物量でな! 砲弾も無尽蔵ではないだろうからな」


「……ふむ、将軍の言う通りだ。だが、未だその時ではない、そうだな……二週間後には全面攻勢に移れるだろう! それまで準備をしておこう」


 アイゼンハワーはそう言うと先日、ホワイトハウスから極秘に来た秘密情報部の顔を思い出して顔をしかめる。


「(……ふん、気に食わないな! 何処にでもいる獅子身中の虫だな。勝ちを譲られるとは、まあ……お手並み拝見するか)」


♦♦


「何ですと!? 本土から帰還命令ですか!? しかも全軍?」


 サンフランシスコ湾内に停泊している連合艦隊旗艦“武蔵”司令長官室内で『山本五十六』聯合艦隊司令長官とサンフランシスコ駐留軍総司令官『今村均』中将がいたが山本長官の言葉に今村は大声で叫ぶ。


 山本は不服そうな表情をしながらも海軍軍令部から厳命だから従わなければいけないと言うと共に、明日から撤退を開始して一週間で全面撤退をするという。


「山本長官? 前から思っていましたが……海軍中枢部に獅子身中の虫がいるのではありませんか? 元々、海軍さんは米国被れが沢山いますし? それに……長官も米国に長年、武官として赴任されていましたが?」


 今村中将の強烈な皮肉に山本は少々、困った顔をしたが今村の質問に答える。


「まあ正直に言うと私も米国とは戦いたくはなかったが米国の国力を遥かに超える存在が出現してそれを活用しようとした今は亡き石原元帥に感化されたのだ」


 そういうと山本は目を閉じて、本当に石原莞爾を失ったことに無念さを感じていたのである。


「幸いと言うか不幸かと思うか分からないが南雲君の艦隊は引き続き、残るそうだ。何しろ、樋口大将管轄に入っているからね? それに艦の保守が必要と言う名目にて少しでも南雲君に艦艇を残そうと考えている」


 そういうと山本は南雲に空母“隼鷹”“飛鷹”・戦艦“山城”“扶桑”重巡洋艦四隻・軽巡洋艦三隻・駆逐艦五隻を渡すと言う。


「後、司令官として『木村昌副』少将と『田中頼三』少将を南雲君の傘下にはいってもらおうと思っている」


 山本は『石原莞爾』や『日下敏夫』と話した時、先程の両名は自分たちがいた世界では名将と呼ばれていたと聞いていたので彼らの能力が必要になると思ったのである。


「所で陸軍さんの方はどうなるのだ? 軍令部からは陸軍の撤退まで面倒見切れないから自分達で考えてくれとの事だ。それに関して、東條首相は激怒して海軍大臣の所に殴り込みに行ったそうだが?」


 今村はまさか東條英機が殴り込みに行った事は初耳で吃驚したがさもありなんと思ったがそれでも方針が変わらない事にショックを受ける。


「陸軍としては海軍の思惑には賛成できないしサンフランシスコを放棄することは考えていません。幸いに物資は豊富にありますので陣地を構築するだけです」


 それから数時間後、山本と今村の会談は終了して今村が司令部に戻るために甲板に出た時、山本から改めて詫びの言葉が出る。


「本当に済まないと思っている。何とかして本土に帰り軍令部と話してここに戻ってくるから持ちこたえてくれ」


 山本の言葉に今村は小さく頷いて先程の無礼を許してほしいと言う。

 二人は固い握手をすると今村はサンフランシスコに戻っていく。

 山本は溜息をつくと艦内に戻っていく。


♦♦


 一方、サンティエゴ基地でも南雲中将経由で本土からの命令が届いてその内容を樋口季一郎に伝えると彼も驚いて直ぐに牛島と栗林を読んで緊急会議を開く。


 先日の勝利の高揚も一瞬で吹き飛ぶ


「どうなっているのだ? 南雲中将?」


 樋口の質問に南雲も困惑な表情をして今しがた山本長官から聞いた事を言い自分の艦隊のみ残して残りは全て本土へ帰還するという事だと説明する。


「サンフランシスコの今村中将からも緊急電として送られてきたが……由々しき問題だな? 海軍の助けがなければ到底、カリフォルニア州沿岸部を守り切れない」


「海軍軍令部は何を考えているのだ? 戦局が分からない馬鹿ではあるまいに」


 樋口は南雲に山本長官からこの地に残す艦艇の事を聞いて二手に分けて守護するしかないのではと言うが南雲は首を横に振りそうすれば布哇諸島が奪回されてしまうことを懸念する。


「……日下艦長に相談してみるか……。ただ、伊400は北極海に向かっていると聞いているが何か良い案が無いか連絡してみよう」


 樋口はそういうと司令部の自室に入り特殊無線機をセットして電源を押す。

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