第49話:サンフランシスコ占領

 サンフランシスコ市に上陸した日本陸軍は続々と他の地にも上陸を果たす。


 “オークランド”・“リッチモンド”を始めとするサンフランシスコ湾とサンパプロ湾沿岸及び日本戦艦部隊の主砲範囲内の土地を制圧する。


 防御側である米軍は確かに強力な戦車や重火器及び物資・弾薬を山のように準備していたが戦艦部隊の砲撃により全てが灰燼と帰したのである。


「フハハハ、米軍なんて大したことなかったな! 本土からの増援を待たずにこのままロスアンジェルスに進撃……いや、ワシントンまで進撃だ! 牟田口中将に辻参謀、直ちに計画を立てたまえ!」


 寺内大将の上機嫌な声に牟田口や辻も笑みを浮かべて勿論ですと言う。

 その会話を聞いていた他の軍団長は眉を潜めるが誰も反論しなかったというか出来なかった。


 親の七光りといえど親が親であるから逆らえば大変なことになるので意見を言う事が出来なく心の中ではまずいことになったなと思っていた。


 それは樋口中将も一緒で芯の底から厳しい軍隊の上下関係が染み込んでいるため、何も反論出来なかった。


「(今の石原閣下なら遠慮なくズバズバ言って下さるだろうが……ふむ、しかし……あの伊400という潜水艦となら可能じゃないか?)」


 樋口中将がそう思っていた時、辻政信から早速、日系人収容所に行き我が軍に協力してもらうようにいくのだと言われて樋口は了解しましたと敬礼をする。


 樋口はそのまま第13軍を率いて出発する。


「よし、これからそのまま南下してロスアンジェルスを攻略する! 海軍に連絡して調整に入りたいと連合艦隊司令長官に伝えてくれ」


 寺内大将の命に牟田口中将が敬礼をしてその場から去ると寺内はそのまま他の軍団長に直ちに出撃準備を早急に整えていつでも出撃できるようにしておくのだと言うと席を外して部屋から出ていく。


 それを見送った各軍団長だったが阿南中将が苦り顔で困ったものだと言うと山下中将も頷いて何とか中止させたいものだと言う。


「しかし、思っていたより遥かに楽だったな? 無血占領だぞ? 結局、敵の反撃や攻撃は一切なくサンフランシスコ市という大都市を制圧できたのだ」


 梅津中将の言葉に今村もそれに同意するがやはり海軍の力が大きいのではないかと言うと他の者達も渋々ながらも同意する。


「事前の偵察状況によると全ての湾岸には4個師団が張り付いていたそうだがあの艦砲射撃によって殆どが壊滅して内陸奥地に撤退したという。しかし海軍さんも砲弾が尽きたのではないかね? どう出てくるのだろうか? 後、補給もきちんと考えなければいけない」


 板垣中将の言葉に殆どの者が頷くが中には勇ましいことを言う。


「たとえ、どんな困難に陥ろうと我が皇軍の力と精神力があればワシントンまで進撃できる! 補給に頼るのは軟弱の証である! 不屈の精神力があれば誇りある日本軍人ならわかるはずだ」


 この言葉を石原莞爾が聞いたなら一笑に付して罵詈雑言の嵐が彼らの頭上に降り注ぐであろうがやはり補給軽視は日本陸軍伝統で優秀な将であっても精神力があれば何でも可能だという事は変わらないのであった。


♦♦


 一方、サンフランシスコ湾沿岸及び北上してサンパウロ湾に行き片っ端から艦砲射撃を以て沿岸陣地を叩き潰した日本艦隊はサンフランシスコ湾の真ん中で砲弾の補給と燃料を補充していたのである。


 “武蔵”甲板を歩きながら色々と考えている山本長官に陸軍の寺内大将から相談があるとの連絡を聞くと直ぐに察する。


「宇垣君、悪いが寺内大将に砲弾が尽きてしまって砲弾や燃料を補給すると共に整備・休息等で本土から増援が到着するころに出撃できると言ってくれないか? このままいけば一週間ぐらいかな?」


 溜息を付いた山本の表情を見ながら宇垣は了解しましたと敬礼して防空指揮所から離れていく。


「石原さんの言う通りだったな。流石に海軍の援護を受けれないと分かれば諦めると思うのだが?」


 ちなみに日本艦隊は本当に砲弾を撃ち尽くしてしまい補給を受けなければいけない状態だったのである。


「サンフランシスコの港が使えればかなり楽になるが……被害のほどはどれぐらいなのか?」


「完膚なきまで破壊し尽くしましたので……」

 変人参謀『黒島亀人』が答える。


 現在、機動部隊の艦載機がサンフランシスコ市上空の制空権を握っているのだがなぜか一機たりとも米軍機が来襲してこなかった。


 これは“晴嵐”による攻撃で片っ端から潰しまわっているからであったがそれを知っているのは山本だけであった。


♦♦


 伊400の指令塔で日下と吉田が真剣な表情で語っていた。


「“晴嵐”のメンテ時期が来たという事ですか……。ルーデル機と岩本機が使えなくなるのが痛いが仕方ないな」


 日下の言葉に吉田が残り一機で運用しないといけませんがどうしても米国本土は外せないので他の空域は諦めるしかないですねと言う。


「……幸い、日本近海は“いせ”“しらね”と旧型駆逐艦10隻・軽巡4隻・戦艦2隻がいるから大丈夫だと思う」


 このタイミングが吉と出るか凶と出るかまだ分からない。

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