第二部終了:新たなる展開

「艦長! 今しがた“晴嵐”から報告ありましたが日本艦隊が米国機動部隊を完膚なきまで叩き潰し他との事です」


 通信班が電文を日下に渡すとそれを見た日下は橋本に渡す。

 橋本もそれを見て頷く。


「艦長、それと……米国機動部隊から発艦した艦載機150機がこちらに向かっているとの事です」


「……ほう? もしかするとスプルアーンスは日本機動部隊の位置を間違えたという事か。そして……不幸なことにこの伊400に向かっているのか」


「はい、米軍機がこちらを視認するまで未だ30分はありますが?」


「……対空MOAB弾で殲滅する。準備急げ」


 日下の命令に通信班員は敬礼すると急いで艦内に滑り込むように入っていく。

 橋本は日下のほうを見ないで前方の海を眺めながら答える。


「これで太平洋方面の米軍は無きに等しいですね? このまま米国本土に上陸するのでしょうか?」


「今の情勢を考えると無理ではないかな? 何しろ、本土では東條英機さんが倒れてしまったから今まで通り南方及び豪州遮断に向かうのが濃厚と言えるが……」


 日下もいつもと違って歯切れが悪い応えであった。

 その時、対空MOAB弾発射準備が整いましたとの報告を受けると日下は頷いてCICに発射命令を出す。


 数秒後、後部15センチレールガンの砲身が自動で仰角45度まで上がると轟音と共に砲弾が打ち出される。


 それを見送った日下は独り言ともいえる口調で喋る。


「……もしかするとだが本土を攻撃されたという事で報復のため、米国本土上陸戦が開始されるかもだがそれは石原閣下ではなく牟田口等の無能集団が指揮を執るだろうな」


「……そうなれば難儀ですね? 彼らは私達の存在をどう思うのでしょうね?」

「まあ碌でもない対応されるのがおちだな」


 その時、司令塔から米国艦載機150機を瞬殺したことを報告してきた。

 日下はそのまま頷くと橋本にそれでは一旦、布哇に戻るとしようかと言うと潜航命令を出す。


 伊400はそのままゆっくりと潜航を開始して数秒後には海面から消えたのである。


♦♦


 太平洋から一隻残らず米空母が消滅したときから一週間後、ホワイトハウス内で悪魔大統領『ルーズベルト』は海軍の大損害の報告を聞いて大激怒していた。


「たかが極東の端にある黄色いサルの集団である下等民族に崇高なる我が白人国家の軍隊が完膚なきまでやられるとはいったい、どうなっているのだ!?」


 執務机の上にある書類等の物を荒正しくぶちまけて怒声を放っているルーズベルトに他の閣僚も何も言えなかった。


「スチムソン君、原子爆弾の開発を早く急がすのだ!! オッペンハイマーの尻を蹴飛ばして来年には完成させるようにするのだ!! ノックス君、米国の総動員をかけて艦船等の建造を急げ!! 一週間に護衛空母を全土で100隻、一月で正規空母100隻、戦艦をはじめとする艦船も月に50隻は就役させろ! 来年には1000隻規模の大艦隊でイエローモンキーのジャップをこの地球上から消滅させるのだ!」


 頭の血管が切れてしまうかもしれない凄まじい悪魔の形相をしながら口角泡を飛ばしながら叫ぶのを閣僚たちは了解ですという。


 ここまで荒れ狂っていたルーズベルトはやっと少しは冷静になってとにかく米国全土で戦時体制に移行して各種生産を急がせろとの命令を出す。


 その時、秘書官が大慌てで執務室に飛び込んできて欧州から急報が入りましたと国防省が纏めた資料を渡す。


「アイクからか? 何事が起きたのだ?」


 アイクこと、米国最高の人物と言われているアイゼンハワー陸軍大将からであり、ライバルでもあるマッカーサーとは犬猿の仲でもある。


 ルーズベルトがその内容を見始めてからみるみると顔色を変えてくる。


「……馬鹿な!? モスクワが陥落してスターリンは赤の広場で民衆の眼前で射殺されてソ連としての国の組織が崩壊した……?」


 ルーズベルトの報告を聞いた閣僚たちも驚愕した表情をしてスチムソンが信じられないという口調で喋る。


「確かヒトラーは三方方向からモスクワを目指すのではなかったのではないか? コーカサス地方を制圧してその中継点にあるスターリングラードを占拠して北上と聞いていたのだが?」


「いや、途中まではそうだったがヒトラーは突然、戦略を変更して全兵力を集中して一気にモスクワへ進撃しろとだ」


 報告書を見ながらルーズベルトは信じられない様子をしながらも大変なことが起きたと感じる。


「……ソ連が脱落したと決まれば英国もやばいかもしれないな? チャーチルも今頃は真っ青になってあたふたしているだろうな」


 ノックスとスチムソンがお互い顔を見合わせて頷くとルーズベルトに具申するがその内容はルーズベルトも驚く。


「欧州を捨てて米国派遣軍を本土に戻して西海岸や東海岸に配置しろと?」


「はい、元々はチャーチルから二方向からの進撃でナチスを倒す予定でしたがソ連が滅亡して無くなった今、意味がありません」


「すると君達は……イギリスを見放せと? 欧州をあのヒゲ伍長に引き渡せと?」


「はい、恐らくジャップは今年の終わりごろか来年には西海岸に上陸するかもしれませんので重防御陣を構築しないといけません。パナマ運河も破壊されていますので決断は早くに越したことはありません」


 ルーズベルトはじっと黙りながら頭の中で色々と考えた結果、決断する。


「よし、派遣した米軍全軍を引き返すようにアイクに言うのだ。太平洋に回すためには喜望峰を回らなければいけないからな? チャーチルには王室と共にカナダに亡命することも考えておくようにと言っておこう」


 こうして米国も戦略を大変更するのだがそれは日本も同じで果たしてどうなるのか?

 そして……我が伊400はどのように行動するのか? 日下敏夫はどんな判断を下さすのか? 歴史のページが新たに開かれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る