伊400戦記 ー 無限に散らばる並行世界にて危機に陥っている祖国日本を救え!
@vizantin1453
第一部:風雲、布哇諸島攻略戦!
第1話:邂逅!
「何だと!? もう一度言ってくれないかね?」
昭和十六年三月十五日、広島湾呉軍港に停泊している連合艦隊旗艦である戦艦“長門”司令官室で山本五十六連合艦隊司令長官と陸軍中将の肩章を付けた将官と顔を合わせていた。
「ええ、海軍さんが真珠湾攻撃を企画している事はこちらでも把握していますがその企画に我々の計画も一緒に実施して頂きたいとこちらまでお伺いしたのです」
陸軍軍人の言葉に山本は息を呑んで暫く沈黙状態であったがやっと口を開いて彼に問いかける。
「石原莞爾さん、貴官の満州事変における行動は称賛出来るが貴官の言った事は満州と状況がまるで違うと思うがそれは認識しているのですか?」
山本は石原と呼んだ陸軍中将に確認すると彼はゆっくりと頷いて十分に可能であると太鼓判を押す。
「山本長官、今からいう事は信じられないかもしれませんが本当の事です! 何しろ、他の者が聞くと頭が狂った狂人と言われるのは必須なので」
石原の言葉に山本は、彼の表情や言葉に嘘はなく真剣な内容だと確信してこちらも襟を正して聞く態勢をとる。
石原が語った内容に山本は直ぐには信じられなかったが色々と辻褄が合う事に吃驚すると共に考え込む。
「今現在、住んでいるこの地球上の世界は無数の多次元に浮遊する一つでこの世界と全く別の時間軸として進んでいる世界があり貴官はその世界の一つで天寿を全うして記憶がそのまま引き継いで新たに生まれ変わったと言うのだな?」
石原莞爾は前世で生きた世界情勢を詳細に話す。
真珠湾攻撃から始まった大東亜戦争は、昭和十七年六月四日のミッドウェイ海戦を切っ掛けに敗北の坂を転げ落ちて山本五十六は昭和十八年にブイン上空にて機上戦死を遂げ、そこからは物量に勝る米国に完全に押されて日本本土の大都市は全て丸焼けになり昭和二十年八月十五日、屈辱の降伏を決意したのだが陸軍若手将校及び重鎮による軍事クーデターによって講和派の人物は全て斬殺されて本土決戦が実施された事を話す。
「……何という愚かなことを! しかもそのクーデターに大西君も絡んでいたとは……信じられない、今まさにこの真珠湾攻撃の作戦要領を立案してもらっているのだが」
山本の言葉に石原は頷きながらその続きを話す。
南九州に殺到した米軍の攻撃に守備隊は全滅覚悟で迎え撃とうとしたが米海軍機動部隊の正規空母を始めとする大型艦が突如、別世界から来た一隻の潜水艦によって全てが撃沈されて続く関東上陸作戦も被害最小限で勝利を手にしたことを話すと共にその背景にも一隻の潜水艦による活躍があった事を話すと、その潜水艦がこの世界に漂流してきたことを伝える。
「潜水空母だと!? 私はその構想を練っていた所だが現実には難しいと考えていたがそれが存在すると?」
山本の言葉に石原は頷くと論より証拠で一度、実際に見てみてはいかがかなと提案すると直ぐにそれを承知する。
「貴官の話は未だ半信半疑だが私の勝負勘は大当たりだと鈴が鳴っているぞ? そうか、伊勢神宮に行けばいいのだな? 善は急げだな、数日の間に予定を立てておこう」
「感謝致します、それでは私はこれにて先に伊勢神宮に行き祭主様とお会いして山本閣下の事をお伝えしましょう」
石原が立ちあがると山本も立ちあがって甲板まで案内する。
五分後、石原が乗った艇が“長門”から離れて行き桟橋に向かって行く。
それを見送りながら山本は未だ信じられないが、心の奥底から血沸き肉躍るような想いが構成されてきたことを実感する。
「布哇諸島及び米国本土上陸か、早期講和には十分すぎる作戦だ。最も成功すればだが……。しかし、あの石原莞爾という軍人、凡将ではない! それに……潜水空母を直に見てみたい」
久々に心が躍った山本は直ぐに伊勢神宮に行く日を決めてその旨を石原莞爾の元に届ける。
♦♦
その頃、夫婦岩から七キロ沖合の水深七十メートルの地点にて、一隻の大型潜水空母が停止している。
その潜水艦の名は“伊400”で無数の平行世界の日本を助けるために時の漂流者としてこの世界にやってきたのである。
伊400の発令所内の艦長席に座っている『日下敏夫』少将の傍に副艦長に当たる先任将校『橋本以行』大佐が一枚の紙を日下艦長に渡す。
ざっと目を通した日下は懐かしそうな表情をしながら橋本に言う。
「信じられないが運命と言うか人の縁と言うのは面白いな? まさかあの世界の石原莞爾閣下がこの世界に記憶を持って生まれ変わるとはね?」
橋本も頷くともしかすれば有泉さんや小沢さんと言った方達とも会えるかもしれませんね? と言うと日下も頷く。
「艦長、ちょっとした同窓会になるのでは?」
橋本の言葉にそうだなと頷くと艦内放送用のマイクを手に取って、今夜、一足早く石原閣下と再会するので0200時に浮上する事を伝える。
「ふむ、今までは滅亡寸前か崩壊寸前の日本を助けてきたが今回は開戦時から始まるとは初の出来事だ」
この世界に来たのが一週間前で伊勢神宮の祭主様にこの世界の状況を聞くために来たがとんでもない情報に吃驚したのである。
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