スライム三兄弟

@me-puru

第1話 

スライム三兄弟


ーーーーー時は中世ーーーーーー

この大陸には、魔物と人間が存在していた。魔物は人間を襲うため、人間と魔物の戦いが始まったのはもはや必然といえよう。そんな戦いの中、魔族の始祖、魔王の存在が知られてきた。しかし人間の王国は、連合国で協定を結び、勇者たちを旅立たせて、両者多大な被害を出しつつ、両方のトップが相打ちになった。その数年後、魔王二世が生まれたものの人間の文明は発達していて、なかなか一進一退の攻防が続いた。魔王は魔族を生み出せるものの、多大なエネルギーを使うため、強力な魔物を生み出すのは大変なのだ。しかし、人間たちの方はさらに大変で、勇者と言いつつ人間性がとても悪かったり、欲が深かったり(勇者が誠実すぎるだけ、という考えが魔王軍で広まっている)するのだ。ようやくすると、勇者が全然強くないのだ。ギルドは全部で大陸に五十個あり、正式な(大きいのは)ギルドとなっているのは3つしかない。後は酒場のようなものだ。勇者登録が行えるので、勇者はまずここに行く。これは基本だ。なのに、勇者がろくでなししかいないため、魔王にとって使えない魔物にも時々負けるのだ。そんなわけで王国と魔王軍がぶつかり合い、どちらも消耗しあっていたその頃。決定的な勇者はなかなか生まれず、同時に最強の魔物が生まれるきっかけもえれず、一進一退だったその頃の魔王軍での話。

魔王軍では、そもそもの話、方針が違う、魔王側の『旧魔王軍』、一部の幹部派の『新生魔王軍』に分かれていた。

しかしそこのトップや実力者以外は、顔ぶれはだいたい同じ。仕組みもだいたい同じだが、旧魔王軍は魔王が決定したことは第一であるという方針だが、新生魔王軍は、みんなで話し合って決めるという方針だった。

だが、底辺の仕組みはほとんど同じ、そして特に、最弱の魔物スライムなんかひどくて、一定のエリア(半径1キロ)に弱くてもいいから冒険者が入ったら「来ました」と伝えるだけ。支給品もなく、常に死と隣り合わせ。さらに、なかなか重要な役割をこなしているのに、他の底辺のモンスターすらにも虐められている。ゴブリンにもオークにも、挙句にはちょい凶暴な動物(ウサギの凶暴化版とか)などにも虐められている。

しかし、そのスライム族を助けようと立ち上がったスライムがいた!

ここは旧魔王軍の領土、スライム村。洞窟があって、家が結構立ってて(家と言っても藁を重ねただけのテント)、森林も抜けたすぐそばにあり、崖があったり、色々なスポットがある。結構楽しいところで、勇者にも見つけられてない。

わたスラ「これは全くどういうことか!」

はるスラ「何が?」

そうスラ「スライム族への対応が酷すぎるよ!」

わたスラ「俺たちゃスライム族で革命を起こすんだ〜!」

お調子者で自慢上手の口仕事下手の長男、わたスラ。

能天気で感情的な次男、はるスラ。

真面目で賢い三男、そうスラ。

このスライムたちが、新生魔王軍や人間軍に一泡吹かせ、スライム族の黒歴史を一転させて見せよう

と立ち上がったのだ。

わたスラ「で、どうすりゃ強くなれんの?」

はるスラ「ちゃんと考えろや・・・。」

そうスラ「あのさ、僕たちは、いつも草や水を吸収して腹を足しているよね?」

スライムは、物を吸収して、取り込むことができる。ただぽよぽよしてピキーピキー言っているだけではないのだ。

わたスラ「そうしないと死ぬからな?」

そうスラ「だからね、岩とかそういう固そうなのを吸収すれば、多分強くなれるよね?」

はるスラ「え、でも、このスライム村に、そんな岩とかあったっけ?」

そうスラ「あるじゃ〜ん?」

わたスラ「あ、あそこか!」

はるスラ「あ、裏の洞窟のことか!」

ここで説明しよう。スライム村は比較的平和で、大した洞窟もない。だから吸収材料がないのだが、裏の洞窟という、三兄弟の家の裏の洞窟はかなり深く、最奥部ではマグマも噴き出している。(ただし、全国の洞窟に比べたら、小さい方なのだが。)水晶や鉄鉱石なども結構あり、唯有一のホラースポットとなっている。勇者(笑)たちにも見つかっていない。隠れ名スポットだ。

わたスラ「じゃあ、何を吸収するか決めよう!」

はるスラ「アツいマグマが吸収した・・・。アチ!」

そうスラ「じゃあ、僕は水晶を吸収して、長年の夢だったスケスケボディを実現しよう。」

わたスラ「俺はこの鉄鉱石で硬くなって戦士スライムになるぜ!」

はるスラ「せめて、溶岩の近くの黒曜石を吸収してみようか・・・。」

3人は、一ヶ月間吸収に吸収を続け、ついに能力を得た。長く吸収するほど吸収率が高くなる。一年も吸収すれば、ほぼ同化できるのだ。スライムは作りが意外と複雑で、一度系統を手に入れれば、それ以外の系統は学べなくなってしまうのだ。

この3匹は天才なので、なんと二つの系統を併せ持つこともできてしまうのだが、それ以上吸収するとおかしくなってしまう。3匹もそれは理解しており、欲張りはしないと決めているのだ。

わたスラ「あれ、そうちゃん、スケスケっていうレベルを超えてどこにいるのかわからないよ!」

そうスラ「ここここ!ここにいるよ!見えてないの!?」

ツンツン。そうスラがわたスラをつついた。

わたスラ「うわ、びっくりしたー!」

そうスラ「ふふん。僕は透明になれるんだぞ!」

なんとそうスラは、透明になる力をゲット。水晶の透明さを得たわけであり、的確に能力を吸収した結果といえる。

そうスラ「あれ?お兄ちゃん今日はやけにシルバーで決めてるね。」

わたスラ「気がついたか?俺は鉄並み(自称)の硬さになったのだ!」

わたスラは、鉄の硬さの肉体をゲット。鉄鉱石を吸収して、固くなったのだ。元がスライムなので、恩恵は絶大だ。

はるスラ「それはスライムじゃなくね?」

そうすら「あ、はるにいちゃん!」

わたスラ「なんかお前オレンジに光ってんな。ん?暑い暑い!」

はるスラ「どうだ、マグマスライムだ。平伏すが良い。」

そしてはるスラは、マグマのパワーを手に入れてしまったのだ。

そうスラ「え、どうしてマグマを吸収できたの!?」

研究熱心なそうスラは、興味旺盛で、自分の研究ノートを作っている。新たな発見を書き込んでいるのだ。

はるスラ「えーと、マグマの近くの黒曜石を吸収したのは知ってる?」

わたスラ「なんで俺みたいに硬くならないんだ?」

そうスラ「ふむふむ。メモメモ。」

はるスラ「熱を帯びた黒曜石を吸収してるうちに、熱に慣れちゃったんだよ。」

わたスラ「ふーん、で、マグマを吸収したというわけね。」

そうスラ「じゃあ、早速旅に出よう!」

はるスラ「ちょっと怖いな。」

わたスラ「とりあえず、村を出て地形を確認しないと。」

スライム村の付近の地形を、3人は確認し始めた。

そうスラ「ここの崖の上からは、勇者などが来たときに一方的に気付きやすい!」

わたスラ「あの森の中なら隠れても気づかれなさそうだ。」

はるスラ「この毒草は使えるのかな?」

そうスラ「よし、吸収してみよう!」

わたスラ「気をつけろよ。」

はるスラ「あ、そうちゃんなんだか毒スキルをゲットしたみたい!」

わたスラ「てことは、そうちゃんは系統所持最大限か。」

そうスラ「よし、毒スキルの勉強をしておこう。古文書ちょうだい。図書館から借りてきて!」

スライム村には、とても大きい図書館がある。唯有一、木造りなのだ。古文書などが全500冊ある。

そうスラ「お、強力な毒技が載ってる!」

はるスラ「そういえば、毒系統の強者って聞いたことないな。」

わたスラ「そんなおいしいスキルを?」

そうスラ「はっきり言って地味だからじゃない?」

はるスラ「あっ、勇者パーティだ!」

わたスラ「森に入って行ったぞ?」

はるスラ「魔法使い、戦士、盗賊、勇者か。」

そうスラ「作戦会議だ!」

作戦会議!

〜天才(自称)わたスラの的確(多分)な判断〜

「いいか、俺のスキルは鋼鉄化だ。おそらくほとんどの攻撃は弾いてしまう。だが、魔法使いの呪文だけは、聞くかどうかが曖昧だ。これはとても不安要素。ということで、今夜夜営する勇者パーティーのテントに忍び込み、そうちゃんには毒殺を行ってもらいたい。だが、はるとの偵察で分かったが、盗賊はサーチが使える。あいつらは不寝番をいつも一人は配置する。盗賊が不寝番かもしれないから、その時は中止だ。それ以外なら、魔法使いのテントに透明化で忍び込み、毒で倒してくれ。その後は、全力疾走で俺たちのテントと逆方向に走り、戻ってきてくれ。結構難しいから、失敗しても文句は言わない。魔法使いが不寝番なら尚更簡単だから、この場合は作戦成功がなかなかの確率だ。勇者は回復呪文が使えるらしいが、時間もかかるらしい(図書館で調べた)。俺は戦士と相性抜群だから、戦士とやる。はるとは、素早い相手に抵抗できるから、盗賊とやってくれ。どちらかが深傷を負わせたら、勇者は回復に入ろうとするはずだ。そこを突き、そうちゃんは毒針で刺してくれ。」


夜になり、勇者パーティは、それぞれのテントで寝始めた。

わたスラ「よし、夜になって、予想通り寝始めたぞ。」

はるスラ「見張りは戦士だから、そうちゃんなら大丈夫だね。魔法使いじゃないから、確率は下がるけど・・・。」

そして、見事そうスラは魔法使いのテントに。

そうスラ「さ、魔法使いに毒を入れよう。」

そうスラの頭脳で研究し続けた毒が、無警戒の年寄りに抵抗されるわけがなく、何も支障なしで倒せた。

魔法使い「グフォオ〜!」

全員「なんだんなんだ!?」

そうスラ「やばい!全力疾走!」

そうスラの50M走のスピードは四秒。昼のうちに超・猛特訓した成果だ。

盗賊「サーチしたが、範囲内にいない!」

勇者「くそ、どうしてこのエリアに毒使いが・・・!」

戦士「しかも、サーチの範囲内にいないなんて!」

盗賊「範囲外から毒を当てたとしても、そんなモンスターがこのエリアにいるはずない!」

戦士「足が速いなんて、このエリアじゃスライムだけだ!」

勇者「バカ、スライムに毒が使えるものか!」

盗賊「魔王軍の直属配下か!?」

勇者「このエリアにわざわざ!?しかも魔法使いを!?」

戦士「もうしょうがない・・・。もう寝ないことに・・・。」

わたスラ「今だ!突撃!」

はるスラ「盗賊を倒せばいいんだな!」

そうスラ「透明になって司令塔の勇者を倒しておくよ!」

わたスラ「じゃ、厄介な戦士を俺が倒すか。」

戦士「ふん、あの程度の硬さ、俺の斧で砕いてくれる!」

勇者「待て!1匹いなくなっている!」

盗賊「だめだ!マグマスライムの攻撃を避けるのに必死で使えない!」

勇者「とにかく周囲に注意するんだ〜!」

わたスラは、やはり予測通り戦士の攻撃を全て無効化していった。

戦士「ばかな!こんな硬いスライムがいるはずが・・・!」

わたスラ「ふん。隙が見えますね戦士さん。」

ボガ!わたスラが戦士の頭に突撃!戦士が倒れた。

勇者「く、くそ、プチリカバリー!(小回復)」

そうスラ「今だああああああ!」

そうスラの毒針がプスッと刺さり、勇者も倒れた。

盗賊「クッソ!なんだこのスライム!全員やられちまった!無理だこんなん!」

はるスラ「マグマアタック!」

全身に炎を纏い、相手に体当たりする攻撃。大きな火傷が狙える。

盗賊「だ・・・め・・・だ・・・。」

そうスラ「やった!スキルポイントがたくさん!」

『レベルアップ!』

はるスラ「じゃあ、引き続きマグマスキルに振ろう。」

わたスラ「俺も引き続き鉄の体スキルに。」

そうスラ「うーむ、毒スキルをもうちょっと強くしよう!」

わたスラ「じゃ、行こう。」

そうスラ「でも、このパーティ、かなり強いんじゃないかな?」

はるスラ「確かに、奇襲にも考慮した考え方だし、司令塔がなかなか優秀だ。」

わたスラ「魔王軍に知らせが届いてるんじゃない?」

そうスラ「だといいけどなぁ・・・。」

勇者パーティーが全滅ということはなかなか珍しいので、もちろん知らせは届いた。が、同時に大事件が3つも起きていたので、魔王の耳にはあまり入らなかった。一つ目は、魔王軍には将軍が十二人いる。それぞれが圧倒的な力を備えていて、魔王軍の最高戦力だ。そのうちの二人が死んだのだ。これは、大きな痛手だ。二つ目は、十二将の一人「阿修羅」がトップクラスの勇者パーティーを三日間のうちに立て続けに5つも潰したのだ。先ほどの勇者パーティーの侵入に見張りが気づけなかったのは、阿修羅と共に勇者パーティーと戦っていたからである。三つ目は、十二将の一人「ボーンドラゴン」が、大きい冒険者ギルドを1つ、小さいギルドを10軒も壊したということだ。これにより、十二将の存在が確定した。全面戦争の、火蓋が切られたのだ。

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