転生したらミミックだったけどダンジョンの最下層に誰も来ないのでこっちから出向いてみました

辛士博

第1話

 吾輩は箱である。名前はまだない。


 はい、と言うことで──。

 余りにも有名過ぎる冒頭をパクったことで皆もう分かったと思うけど。そう、。すまない。異世界転生ってヤツだ。

 ん? 何に転生したかって? ほれ、さっきも言ったじゃないの。

 箱だよ箱。宝箱。ダンジョンの行き止まりなんかに、これ見よがしに放置されてる宝箱さ。

 ただの宝箱じゃないぞ? 擬態ミミックさ。

 そう。某有名RPGじゃ開幕即死魔法したりしてプレイヤーをブチ切れさせる、憎いあん畜生だよ。ひゃっほい!

 そんな俺の釣果だけどね。ふふふ、聞いて驚くなよ?


 ……ゼ・ロ♥


 ゼロ。零。〇〇〇ぜろぜろぜろ、ぜーろっ!

 ふ、ふふふ。ふーははははははっ!

 ミミックに転生してこちとら一度も開けられた事がないんじゃい!

 こうして、空想のお友達に話し掛けてしまうくらいには暇なんじゃい!


「あーーー! 誰か俺を開けてみてくれーーー!」


 かつて人間だったミミックは叫んだ。

 自分が一体、どんなところに──最低最悪、最高難易度の、名前すら無い未踏破ダンジョンの最下層。最強のガーディアンに守られた、その最奥に──居るとも知らず。

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