第二十九話 予期せぬ襲来

「ただいまぁ」


 と、聞こえてくる奈々の声。

 同時、バトンと閉まる扉の音。

 間違いない。


(奈々が帰ってきた!?)


 でもいったいどうして。

 奈々はこの時間はまだ、友達と一緒に遊んでいるはずなのだ。


(いや、そんなこと考えている場合じゃない!)


 真冬だ。

 今は部屋に彼女がいるのがヤバい。

 なんせ真冬は毎回、奈々に告白されて死んでいるのだ。


(このまま二人を合わせたら、どう考えてもいい結果にならない!)


 ないとは思うが。

 最悪、奈々が即座に告白して真冬が爆死……なんて展開もあり得る。


 などなど。

 陸がそんなことを考えている間にも。


 ギシ。

 ギシギシ。


 と、聞こえてくる足音。

 奈々が陸の部屋に近づいてきているのだ。


(くっ! よりにもよってどうして……いつもなら、真っ先に俺の部屋に来ることなんてないのに!)


 どうする。

 どうすればいい!


 とりあえず真冬だ。

 真冬の意見を聞こう。


 と、陸は真冬の方への視線を向ける。

 すると。


「あ、あわっ。あわわわわわわわわわっ」


 真冬さん、めっちゃテンパっていた。

 しかもめっちゃオロオロしている。


(まさか真冬、案外テンパると思考力落ちるタイプなのか!?)


 イメージと違いすぎる。

 だがしかし、そうなっている以上仕方ない。

 ここは陸がなんとかするしかない。


(さぁ、どうする!)


 と、陸は自分の部屋を見回す。

 そうして真っ先に見えてくるのは——。


「真冬! クローゼットに、クローゼットに隠れて!」


「え」


 と、陸の言葉に対しきょとんとしている様子の真冬。

 テンパりすぎて、言葉をよく理解していないに違いない。

 故に陸は真冬の手を引き、半ば押し込むようにクローゼットへと彼女を入れる。

 そして、彼はそのまま彼女へと言う。


「俺がなんとかするから、それまでそこで大人しくしててくれ!」


 そうして。

 まさにその瞬間。


「お兄ちゃん、入るよ?」


 聞こえてくる声。

 同時、声の持ち主である奈々が部屋への入ってくるのだった。

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