3.黒か白か

「やっぱり黒だった・・・。そうじゃないと思いたかったのに・・・」


家の近所のファミレスで、私は自称ではない本当の親友の前で大泣きしていた。

この子は小学生六年生からの付き合いだが、賢い彼女は中学受験をしているため、中学校から学校が違う。よって恵梨香のことは知らない。


「わー、驚いた。本当にそんな子いるのね~。何でそんなに唯花に執着しているのかしら? めっちゃ病んでない?」


「私も知りたい・・・。何でよ・・・? そんなにマウント取りたいと思われちゃうタイプ? 私って・・・」


「うーん・・・」


本物の親友の麻奈は首を傾げた。


「人の物を欲しがるタイプなんでしょうね。それも自分より絶対的に下だと思っている人の」


「下って・・・」


「それと、唯花に幸せに、って言うか、得意気になって欲しくないのかもね」


「得意気になってないし! いや、なってたかな・・・?」


「とにかく、その子とは距離を置きなさいよ。ロクなことないわよ、きっと」


「うん・・・」


分かってたのに! だから距離は置いたのに!


「それにしたって・・・、林田君だって酷い~! 私のこと大好きって言ってくれたのに! こんなにあっさり振るなんて・・・!」


私は喚いてテーブルに突っ伏した。


「そうね。正直、男の方も最低だと思うわ」


「一緒にネズミの国に行こうねって言っていたのに!」


「うん」


「クリスマスも超楽しみにしてたのに~!」


「うん、うん」


「初詣一緒に行こうねって言ったのに~~!」


「うん、うん、うん」


「ずっと一緒にいれますようにってお祈りしようねって言ってたのに~~~!」


「・・・ちょっとうざいな、それ」


泣き崩れる私を尻目に、麻奈はモリモリと季節限定のパフェを食べていた。





フラれてから暫く経っても、私は失恋の痛みを大いに引きずっていた。


朝、足取りも重く学校に向かう。

落ち葉が舞うこの季節。私の恋も枯れ葉となって舞っている。

そんな木の葉が舞う空は今日も秋晴れ。


「おはよう! 唯花ちゃん!」


今日の天気とは裏腹にどんよりとした雪空の心の私に、略奪女は空と同じくらい能天気にカラッと挨拶してくる。


「・・・」


私はジトっと睨みつけるが、相手はどこ吹く風だ。


「どんどん寒くなって来てるけど、今日はお天気で暖かいわね~!」


全く悪気無しの満面な微笑みを向けられて、私はもう溜息しか出ない。


「・・・うん、そうね・・・」


「何か元気無い、唯花ちゃん。大丈夫?!」


彼女は心配そうに、且つ、可愛らしく私の顔を覗き込んでくる。


あんたのせいですけどっ!?


と大声で出して叫びたいが、言えないのには訳がある。


実は、私は最初から彼女を疑って、今回の恋の相手を恵梨香には話していなかったのだ。

つまり、内緒にしていたのである。


なのに、さっさとバレて略奪・・・。

恵梨香とは違うクラスになったからと油断していた。

ちなみに彼氏も違うクラスだったことも仇となった。

お陰で、敵が標的に接近していることに気が付かなかったのだ。


というわけで、恵梨香は自分の今カレが私の元カレという事を知らないというスタンスに立っている。

しかも、今回も男の方から告白されたから付き合った体になっているから厄介だ。


ああ、でも本当に偶然だったらどうしよう?

そうだったら、私のただの醜い逆恨みだ・・・。

その可能性が無いわけではない・・・。


眩いばかりの彼女の微笑みを前にすると、自分の確信が揺らいでしまう。

これだけ可愛いのだ。恵梨香が何をするわけでもなく、林田君が勝手に惚れて、ちゃっちゃと私を振ったのかもしれない。そうであれば彼女は白だ。


「はあ~~~」


私はまた長く溜息を付いた。

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