紅蓮の魔術師の学園生活

SNOW

第1話

「友達が欲しい!」


 赤の魔塔その一室にてその声が響き渡っていた。

 深紅の髪が特徴的な少女の名前は緋毬ひまり家名はない。そんな彼女には、とある役職が付いている。


「どうしたんですか塔主様?突然に友達が欲しいなんて今更じゃないですか?」


「そうだけど!そうなんだけど!」


 赤の魔塔の塔主。彼女そこの主を担っていた。そんな彼女には、とある悩みを抱えていた。


「14歳になったんだし友達の一人や二人いてもおかしくない歳でしょう!?」


「そりゃあ、塔にこもってばかりじゃ仕事仲間は出来ても友達は出来ないでしょうねぇ。それにしても14歳になったんですね、おめでとうございます。今は飴ちゃんしかないので今度何か用意しときますよ」


「あ・り・が・と・う!そうだよ、14歳にだよ?青春の年頃なんでしょ?友達作る方法なんかない?ミランダは色々なところに繋がり持ってそうだし友達も多そうだし相談にのってよ?」


 部下であり仕事仲間であるミランダは苦笑しつつもそうですね、と一緒に考えてくれる。


「でしたら学園に通ってみるのはどうでしょう?あそこでしたら自然と出来るのでは?」


「学園ってゲニウス魔術学園のこと?私勉強あまり得意じゃないんだけど・・・」


「あそこは魔術師を育てることを名目にしている学園ですので、勉学よりも魔術師としての才が基準以上であれば入学は簡単です」


「へ~そうなんだ」


 学園生活か、想像するだけでもワクワクしてきた。となると残りの問題が・・・


「確かに面白そうだけど、魔塔の仕事は?私が居なくても大丈夫?」


「塔主が必要な決済に関しましては休日の日に相談に来てもらう必要がありますが、赤の魔塔としての仕事でしたら、我々でも充分以上にこなせるレベルには育っていますよ」


「そっか、ならお言葉に甘えちゃおうかな?いいの?寂しくならない?」


「えぇ、会おうと思えばいつでも会えますし、緋毬様もお年頃ですから学園生活という名の青春を思う存分楽しんでください!」


「ふふ、ありがとう!」


 そうと決まれば善は急げと言うし手持ちの書類仕事に取り掛かるとミランダがクスクスと笑いだした。


「学園長も驚くでしょうね、紅蓮の魔術師が入学を希望するなんて」


「あれ?学園長って私の事知ってるの?」


「あれ?知りませんでした?今の学園長は前赤の魔塔主こと獄炎の魔術師であるレイヴン様なんですよ?」


「そうなの!?」


「はい、ですので驚くと同時に凄く喜ばれると思いますよ」


 レイヴン・ノルトー。獄炎の魔術師という二つ名をもつ前赤の魔塔主。私を拾った人であり、師匠だ。年も50を超えたばかりで魔術師としても現役のはずだけれど私への師事を暫くした後に突然塔主の座を私に渡したのだ。皆も戸惑っていたし私も困惑した。でも私の方がその座に相応しいの一点張りで国王に直談判して無理やりの形でその座に収まってしまったのは、今では懐かしい思い出である。


「残りの書類も私一人でもできるものですので急いで学園に行ってきては?早いうちに必要書類等用意してもらった方がいいでしょう」


「そう?度々ごめんね、この埋め合わせは今度するからさ」


「では、駅前のおいしい喫茶店でごちそうになりましょうかね」


「わかった。それじゃあ留守はよろしくね!『接続コネクト:フェニックス』」


「えぇ、いってらっしゃいませって!?ちょっと!?」


 言い終えると同時に窓から飛び降り、炎を纏い鳥の姿となって学園へ向けて飛翔した。背後でミランダが何か言ってるような気がしたけど気のせいだろう。レイヴンに会いたい一心でそそくさと飛び立つのであった。


「そんな大魔法で向かったら人様に迷惑でしょーーー!!!」


 ミランダの叫びが塔中に虚しく響いたのであった。

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