高嶺の花はかくも艶めく

沙霧紫苑

1

 女神たちに愛されたルーメン

 中央にサンクティオ、東にメディウム、西にサルトス、北にゲンティアナ、そして、南にオレア。

 それぞれに女神の末裔たちがおり、今でもルーメンを護っているのだとか。

 実際に創成の三女神の末裔は神子としてサンクティオ、メディウム、サルトスの王家としてあり、四季を司る女神たちの末裔は、加護を受ける者として存在している。

 そしてここは、ルーメン中の子供たちが集められている学び舎。


 花壇の手入れを終えた私は、ほぉっと息を吐いて立ち上がった。

 夏に咲くソニアの花の球根は、春のこの時期に植えなければならない。そして、天気もいいこんな日は作業には持ってこいだった。


 広大なアカデミーの敷地の半分近くは森が占めている。その森へと続く道すがらには、これまた広大な庭園があって、季節ごとに綺麗な花を咲かせている。今の時期はマイオソウティスの小さな青い花が咲いているし、それが終われば色とりどりのローザが咲く。

 同じ花でもその年ごとに顔色を変える花たちの姿は、私にとって最大の癒しだった。


 はずだった……


 そう、少なくとも一年前まではそうだったんだ。

 けれど、学年が上がってなんとなしに学舎の上層階にあるラウンジへ入った事で、運命が変わってしまった。


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