第1話 おんがく好きの憶月フィーカ





――――記録――――


2022年 10月28日


side:おんがく好きの憶月フィーカ



『…聴こえますか?


【おんがく好きの憶月フィーカ】です。


ねこ以外は誰も居なくなった終末世界から、

旅の記録や作った音楽を配信しています。

どこか遠くの誰かに届きますように…』




―どこか遠くの世界の、どこかの誰かへ、

古いアンテナから配信されている映像。

そこから聴こえてきたのは

ねこ以外はだれも居なくなった終末世界の、

少し不思議な、旅人の日記でした。


旅人は白と水色の髪に、緑色のモッズコートを着て、アンテナが刺さった大きなリュックを背負っていました。

使い古したゴーグルや古い形のヘッドフォン、頑丈そうなブーツから、旅人がずっと前から旅人なことが分かりました。




『今日はすごく大きな猫と出会いました。

市場を歩いていたら、お店の屋根から屋根へジャンプして行く大きな猫の影が見えて…』


『私がびっくりしていたら【かつおぶし好きのヒゲ曲がりねこ】が、


「あれは【コーヒーねこ】だねぇ」


と教えてくれました。


「アイツは体がコーヒーで出来た、変わりモンの猫さ」


と、ちょっとだけ嫌そうな、うっとおしそうな態度で言いました』




―ねこ以外だれもいなくなった世界に居る旅人は、ねこと話ができるようでした。

それもそのはず、旅人の世界に人間は誰もいないので、旅人の話し相手は、ねこだけなのです。




『私は、コーヒー猫さんが気になって、あとを追いかけました。

お店の屋根に登って、屋上を通って、

【箱好きのダンボール職人ねこ】さんのお店の角を曲がって、【下りみち】を登って…』




―旅人の話に出てくるねこたちは、みんな

【○○好きの○○ねこ】など、

すこし変わった名前をしていました。

そして旅人も、同じように変わった名前をしていました。




『…いつの間にかコーヒー猫さんは居なくなっていました。

ずっと追いかけていたはずなのに、どこで見失ったんだろう…なんだか不思議な1日でした…』




―【コーヒーねこ】と呼ばれるねこは、なぜだか他のねこから嫌煙されているようで…突然消えてしまったり、なんとも不思議なねこでした。

気になることをたくさん残したまま、その日の旅人の配信は終わりました。




『今日はここでおしまい。続きはまたこんど…』




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