PHOTOCOPY MEMORY ーボクの眼に写るモノー

あしわらん

アルバム 『線路に舞い散る雪』

一枚目 駅の電光掲示板

 電球の点点で描かれた電車が、

【前駅】から【当駅】に向かって移動した。


 多くの人が一度はチラリと電光掲示板を目にしたが、白線の上に立つこの青年はそんなものは見なかった。



 彼の一重の三白眼はカッと見開いて、スマホの画面を凝視している。


 それは大半が真っ白で、写真も広告も皆無の粗末なページだったがしかし、他のどのサイトよりも重大な情報を、この世でたった一人、この青年に向けて発信していた。
















     不 合 格















 

 画面に表示されたその三文字が、青年には「凡人」の二文字に見えた。青年にとって、これ以上残酷な言葉はない。



 分かってはいた。



 青年はそう呟こうとしたのだが、頬が強張って唇が動かせない。



 分かってはいたんだ。


 僕には、

 僕には足りないものがある。

 決定的に、だ。



 だから受からないことは予想していた。結果は分かっていた。分かっていなかったのは――予想外だったのは、自分の中にショックを受ける程の期待がまだ残っていた、ということだった。


 恥ずかしさに襲われ、愚かな自分が情けなく、そして怒りにも似た悔しさが、青年の胸を押し潰す。


 青年は胸にかかる圧力を手のひらに伝え、手中の薄く平たい器械を、強く、強く、握り絞めた。





ぎゅぅううううううぅぅぅぅ



  ぎゅぅうううううううぅぅぅ



ぎゅぅううううぅぅぅうううううぅぅぅぅ



 この力で人の首を絞めたら頸椎をれる。


 そのくらいの力で握り絞めた。



 青年は涙を流している。





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