獄中

 未来観測記録  報告官 akira kudou


 ルートD 2150年


 人口増加に伴う食糧不足と重要犯罪者急増に対応するため、独裁国家HINOMOTOは1つの法律を2100年に制定し即時施行した



 法律名「重・重大犯罪者における死刑執行方法と食料への転用について」


 法律概要


 この法律は犯罪者を


 A・軽犯罪者(窃盗・迷惑行為等をしたもの)


 B・中犯罪者(過失による殺人及び経済的重大な損失等を起こしたもの)


 C・重犯罪者(殺人・性犯罪及びそれに準ずる行為を指示または幇助等をしたもの)


 S・重大犯罪者(国家転覆及びテロ行為を実行・指示・計画・幇助等をしたもの)


 

 この4段階に分類し、重・重大犯罪者の死刑方法並びそこで生産された副産物である人肉の処理方法について定めたものである



 本記録では


 本法律が施行されてから50年後の世界を様々な手法を用い分析し、我々のルートにおける有用性等を検証したものである











 検証方法1


 重大犯罪人:成都 トオル(なりと とおる)に記録用チップを埋め込み被検体とし

被検体の五感及び感情変化を遠隔にて観測及び記録する








 


















 「お・・い!成・・・都・・・成都・・・・成都!!」

 「・・・・・!!!」

 俺は同じ牢獄に収監されているカナトに叩き起こされる



 「大丈夫か?ひどくうなされてぞ?」

 カナトが心配そうな顔で俺に聞く


 「あぁ・・・何か嫌な夢を見てたみたいだ・・・」

 「お前ほどのやつも悪夢にうなされるんだな」

  


 「まぁな・・・」

 俺は力なく答える





 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」

 狭い監獄の中、俺たちは沈黙する


 「明日か・・・」

 「あぁ・・・明日だ・・・・・」

 明日、俺は死刑を執行される


 死刑内容は完全秘匿のためどんな風に執行されるのかについてはわからない



 「お前がここに投獄されてからもう5年が経ったんだな・・・・・」

 重・重大犯罪者は熟成期間という5年間の余生が必ず与えられる


 「あぁ・・・」



 「お前が投獄された日のこと昨日のことのように覚えてるぜ?」

 「ははっ・・・そうか・・・」


 「HINOMOTO政府の閣僚を30人以上暗殺し、官僚及び政府関係者を千人殺害・・・・・自らの手で演説中の首相の心臓に刃を突き立て、返り血を浴びて真っ赤になったところを現行犯逮捕された異常者が収監されるって聞いたときには、刑務所内のうじ虫たちが小便ちびってたからな」

 カナトは俺に笑いながら話す 


 「そうだったのか・・・」

 「あぁ・・・お陰でその時は刑務所内が臭くてたまらなかったがな」



 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 俺たちは再び沈黙する





 「やっぱりなんか悔しいよ・・・・・俺は・・・」

 カナトがそう口にする


 「確かに、お前はたくさんの人を殺した・・・・・それは許されることじゃない・・・でも、俺はお前がこんな目に合うのがどうしようもなく悔しい・・・なぁ、知ってるか?」

 カナトが俺の方をまっすぐ見て尋ねる


 「この国は100年以上前、HINOMOTOじゃなくて違う名前だったらしいぜ・・・」

 「そうなのか?」


 「あぁ、その名前はあらゆる記録から抹消されて覚えてる人もいないんだけどな・・・何でも今の政府の要人たちの先祖が革命を起こして腐敗した旧政府を倒したときに、過去との決別という意味合いを込めて名前を変えたらしい」

 「・・・・・・」

 俺はカナトの話を静かに聞く



 「でも皮肉なもんだな・・・革命当時の旧政府がどんだけ腐敗してたか知らないけどさ・・・・・結局、今の政府は人を人とも思わず自分たちが安全にぬくぬくと暮らせるそんな国しか見ていない・・・今の政府は絶対に旧政府より腐ってる・・・」



 「なぁ・・・カナト」

 「なんだ・・・?」

 いきなり名前を呼ばれたカナトは少しだけ驚いたような表情をする



 「お前の話を聞いてやり残したことが出来た・・・でも、俺はどうやっても明日死ぬ・・・・・だからお前に遺言として託したい・・・・・」

 

 俺はまっすぐカナトを見つめる

 「俺からの遺言聞いてくれるか・・・?」

 「あぁ・・・」



 俺はカナトに遺言を託し早めに眠りについた・・・・・







 「成都 トオル・・・・・お前の死刑を執行する・・・出ろ・・・」

 「はい・・・・・」

 朝になり俺は刑務官に連れられ運動場に出る


 「・・・・・・?なんで運動場に出るんだ?」

 「お上からの伝達でな・・・・・お前は過去に類を見ない重罪人だ・・・よって本日の朝礼で見せしめとして全国に生中継で死刑を執行する事が決まった・・・・・」


 「・・・・・・・」

 俺は唖然とする

 「執行は30分後・・・・・それまでに執行台に全裸になり待機していろ・・・

まぁ、拒否しても無理やり脱がすがな」


 俺は刑務官に言われるがまま全裸になり執行台の前に立つ

 





 執行10分前

 

 受刑者たちが運動場に集まりだす


 「おい、あれって・・・・」

 「成都じゃねぇか?」

 「なんであんなところに?」

 「しかもなんで裸なんだ?」

 受刑者が口々に疑問を口にする




 執行5分前


 異様な空気の中撮影用ドローンが一斉に空へ飛び上がる

 

 


 執行3分前

 

 1人の刑務官が壇上に上がり、俺の横に立つと大声で話し始める


 「ここにいるのは大勢の政府の要人を殺害し、首相を暗殺しようとした大罪人

成都 トオルである!!」

 そう言うと刑務官は1枚の紙を取り出し、受刑者たちに見せる


 「ここに書かれているは首相閣下からのお言葉である!!心して聞くように!!」

 そう言うと刑務官は内容を読み上げる



 「本日、成都 トオルへの死刑が執行されるにあたり我々政府は彼に最大限の怒りを伝えるとともにその表しとして、成都 トオルへの残酷かつ屈辱的で恥辱的な死刑を行う」


 刑務官は紙を読み上げ終わると、俺の方に向き直ると執行台に俺をくくりつけさるぐつわをつけ生命維持装置を手早くつける


 「肉の鮮度が落ちるから本当は麻酔を使ってササッといきたいんだがな・・・・・」

 刑務官はブツブツ言いながら準備を完了させる



 「それではこれより死刑を執行する!!」

 


 





















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