第25話

 客室で白雪さんに怒られた後……、俺たちは温泉に入る準備をした。

 てか、来る前に「混浴したい」とか言われたけど、さすがに冗談だよな……? いくら白雪さんだとしても……、一緒に入るのはまだ早いし。いや、もうあんなこともやっちゃったし……関係ないか? それでも……、ずっとお互いの裸を見るのは恥ずかしいことだった。これはどうにかしないと……。


 そして温泉に向かう、俺と白雪さん。

 まさか、本当に混浴するのかなと思って、ちらっと彼女の方を見ていた。


「…………」

「山田先輩と芽依は先に入ったらしい、私たちも入ろう」

「う、うん……」


 入ろうって言われたも……、先からずっと俺のそばから離れないし。

 やはり……俺と一緒に入るのか。


「うん? どうしたの? 樹くん?」

「あ、あの……! 白雪さん、やっぱり二人で入るのはやめましょう! は、恥ずかしいんで!」

「今更? 私、めっちゃ期待してたけど……。一緒に入らないの?」

「どうして……、そんなことができる? い、一応付き合ってるけど……それでもこんなことは早いんじゃないかな……? み、美波はそう思わないの?」

「うん。思わない。好きな人と好きなことをするだけ」

「…………」

「ふーん。じゃあ、樹くんは私のこと好きじゃないから……一緒に入りたくない。そう言いたいわけ?」

「い、いや……。そんなことじゃなくて……、あの…普通に恥ずかしいだけだから」


 なんか、話が通じないような気がする。

 でも、そんなことを言われるのは……ちょっと悲しいなと思ってしまう。なぜだろう。白雪さんに「好きじゃない」とか……、いつの間にか彼女に嫌われたくない自分に気づいていた。一緒に過ごした時間が長いからか……、ちょっと気になる。


「じゃあ、私は二人がいるところに戻るから一人でゆっくり……」

「ご、ごめんなさい。一緒に……入ります」

「それ……、入りたいって言ってみ」

「はい……?」

「私の前でねだってみ。一緒に入ってくださいって」

「……い、意地悪い」

「最初から変なことを言わなかったら、私もこんなことさせないよ?」


 入り口の前で恥ずかしいことを言わせる白雪さん、顔が熱くなって唇が震える。

 今白雪さんと一緒に入ると……、もう普通の関係には戻れないよな。出会ったあの日からそんなことをやっちゃったけど、それ以上のことはやりたくなかった……。でも、これは白雪さんの話だから逆らえない……。彼女に従うけど……。それでも、白雪さんはどうしてこんな俺が好きなのか…それがよく分からなかった。


「一緒に入ってください……」

「私と入りたいよね? 彼女と一緒にいたいよね?」

「うん……」

「ふふっ」


 ……


 やばいやばいやばいやばい……、本当にこんなことしてもいいのか?

 まだ……、俺たち高校生だけど、本当にいいのか……?


「うわぁ……、気持ちいいね」

「うん……。そうだね」

「こっち見て」

「は、はい……!」


 二人っきりの時にはなるべくため口で話したいのに、緊張するとすぐ敬語になってしまう。てか、俺が他の人にため口で話すなんて……、本当にこんな日が来るとは思わなかった。ちょっと不思議……。


 白雪さんと入っているこの露天風呂、その向こうからすごい景色が見えてくる。

 視野に入る自然、それが俺の心を癒してくれた。


「よいしょ……」

「えっ?」


 突然、膝に座る白雪さん。

 それより……、タオルを纏ってない体でくっつくのはやめてほしいけど……。


「エッチ……」

「それ……こっちのセリフだよ」

「すごくエッチ……」

「だからこっちのセリフ……」

「でも、好き」


 そのままキスをする白雪さん。


「…………」


 温かくて、熱い感覚……。


「え……、いきなり……?」

「さえちゃんと何を話してたの……?」


 そう言いながら俺に寄りかかる白雪さんだった。

 なんかベッドでくっつく時とは違う感じ……、俺を抱きしめる白雪さんが耳元で囁く。


「挨拶くらいかな……?」

「挨拶だけなのに、女の子の顔が真っ赤になるの?」

「えっ? そうだった……?」

「うん。すれ違った時に見たよ」


 変なことは考えたくないのに……。

 白雪さんとくっついているこの状況はかなりやばい……。その柔らかい感触がすぐ伝わるから、知らないうちに恥ずかしいところを見せてしまう。これは……、白雪さんが狙ってるような気がした。


「私のこと。冷たい人だと考える人多いけど、私も女の子だから嫉妬とか……そういう感情を知ってる人だよ? 相手が子供だとしても、樹くんがあの子に興味ないのを私が知っていたとしても……。知らない女の子と楽しく話すことには……、すぐ嫉妬しちゃう女だよ」

「はい……」

「でも、こんな格好を見せるのは私の前にいる時だけだから、今度は許してあげようかな?」

「はい……? 知らない、そんなこと」

「ここ」


 まずい……、やっぱり知ってたのかよ。

 うわ、恥ずかしいすぎ……。


「キスマークも噛み痕もちゃんと残っていて、すごく気持ちいい。これで樹くんは私の物になったから、もう誰にも取られたくない」

「美波はこれが好き?」

「うん……。私しかいないからね……? 樹くんを幸せにさせる人は」

「……うん」


 風呂の中でお互いの体を抱きしめる。

 俺はそばから離れない白雪さんと、そのままゆっくり時間を過ごしていた。


「樹くん、温泉好き……?」

「うん。好き」

「じゃあ、新婚旅行も温泉に行く?」

「……いきなり、何を……」

「ふふっ」

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