つれない白雪さんにいつの間にか独り占めされています

星野結斗

本編

1. 白雪さんという人について。

プロローグ

 あ———、どうしてこうなってしまったんだ……。

 今更、そんなことを考えても無駄ってちゃんと知っている。


 なぜなら……。

 俺は今クラスメイトの白雪しらゆきさんを抱いているから、頭が真っ白になるほど……彼女の温もりに浸っているから……。


「…………」


 薄暗い白雪さんの部屋で、俺たちは止まらない行為を続けていた。

 耳元から聞こえるエロい喘ぎ声と、俺を抱きしめたまま離さないその両腕……。そう、俺たちはそんな関係だ。みんなの知らないところで、ずっとこんな関係を維持してきたのだ……。


 そして朝を迎える。


「白雪さん……、そろそろ学校に行かないと……」

「ねえ、ゴム……まだあるの?」

「昨日使ったのが最後でした……。てか、朝からするつもり……?」

「ねえ、私から離れてもいいって言ってないけど……?」

「うん……」


 服を着るつもりだったけど、白雪さんがそれを許してくれなかった。


 朝から触る白雪さんのさらさらする髪の毛。

 そして床にはお互いの制服と下着が散らかっていた。


「寒いから、こっちおいで」


 そろそろ起きる時間だけど、彼女の一言に俺はそんなこと気にせず、すぐ白雪さんと肌を合わせた。そして昨日お風呂に入ったせいか、白雪さんの肌から俺と同じ入浴剤の匂いがする……。いつもの通りその暖かい体といい匂いが、お互いの欲求を刺激していた。


 なんか、落ち着く———。


「うーん……、いつきくんとやるのは気持ちいいね」

「……朝から、そんなことを言うんですか?」

「同級生に敬語なんか使わなくてもいいのに、まだ慣れてないの?」

「頑張ってる……」

「じゃあ、学校に行く前に…………」


 俺の手首を掴む白雪さんが笑みを浮かべていた。


「もうゴムないから、また今度にしよう……」

「つけなくても、樹くんがちゃんと注意してくれれば……」

「今夜も……、白雪さんの家に来ますから……。今は我慢してくれませんか?」

「ふーん……、私は今したいのに……。でも、分かった」


 この家での話はいつもこんな風に流れていく……。

 そしてベッドから起きた白雪さんはいつもの顔に戻ってくる。冷たくて、何を考えているのかよく分からない顔。それだけだった。それ以上のことはよく分からないから、俺が知っている白雪さんはここまでだ。


「遅刻する前に準備しましょう」

「うん」

 

 制服を着てさりげなく水を飲んでいたら、下着をはいた白雪さんが俺に抱きつく。


「それ、ちょうだい……」

「はい? 飲み掛けの……」

「いいから、ちょうだい」

「はい……」


 俺が飲んでいたペットボトルに何気なく口をつける白雪さん。

 そして下着姿の体には昨日俺がつけたキスマークがたくさん残っていて、つい彼女から目を逸らしてしまう。


「うん? 樹くん、何見てる?」

「今日の天気、いいなと思って……」

「そう……? ねえ、樹くん」

「はい……?」

「ちょっと、唇貸して」

「はい……」


 部屋を出る前のキス———。

 白雪さんは俺のことをまるで自分の所有物みたいに扱う。


「水分補給……」

「俺は先に飲みました……」

「いいじゃん」


 このままでいいのか。

 俺の高校生活が少しずつおかしくなってしまうような気がした。

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