第7話 収容
作戦は終了、俺たちは施設に帰還した。
すぐに休憩というわけでもなく作戦に参加した人たちは色々と報告しないといけないことになる。
それらのことを色々とやって初めて終わる。
報告含めて最後まで気を抜かずに、遠足と一緒。残念ながら遠足そのものをしたことはないが。
俺も報告して、それで終わるはずだった。
そしていつもの日常に戻るだけだった、俺が閉じ込められさえしなければ。
数日前にさかのぼる。施設に帰ってからほどなくして俺には待機命令が下された。とまどいはしたが、とりあえず自室で大人しくしていた。
そしてある日、人が3人程やってきて付いてこいと言われた。
またも、とまどいはしたが、抵抗らしい抵抗はせず大人しく付いていった、施設内で暴れたりすればどうなるか考えなくても分かる。
ただ説明は求めた、詳しいことは教えてもらえなかったけど。
そして付いていった先、広さは3畳ちょっとほどでベッド、洗面台、トイレが置いてある部屋。
扉上部にある小さな窓は鉄格子みたくなっていて、覗けば廊下を見ることができそうだ。
壁も扉も頑丈そうだ。
外部からではなく内部からのセキュリティがしっかりしているこの内装を見るに能力者を閉じ込める場所だと思われる。
結局、暴れたら連れてこられる場所に来てしまった。暴れてないのに。
とりあえずベッドに腰掛ける。あっ、思ったよりベッドが固くない、そんな驚きも一瞬。すぐ現状について考える。
さて、なぜこうなったのか。思い当たる節があるとすればあの短剣、いや魔道具のことだろう。触れた瞬間、能力を使ったような、またそれとは違うようなあの感覚。
何より極めつきはあの透明な液体。たぶん水だと思うんだけど、あれが魔法なんだろうか。
あれが魔道具なのはほぼ確定しているとして俺がこんなことになっているのは……なんでなんだ?
しっかりと説明はしたはずなんだけどな、どこで拾ったかどんな感覚だったのか。無許可で使ったのが問題だったのだろうか、しかしあの状況で許可を取れるかと言われれば緊急だったし。
そんなことをうんうんと考えていると「飯だ」そんな声と共にガコンという音がした。飯? と思ったら地面にペットボトルと器があった。
どうやってそこに置いたんだろうと思ったら、ペットボトルと器がギリ入るかぐらいの小さな扉があった。
無論、すでに閉じられていてこちらからは開けられない。
器の中を見るとメニューはかけそばだった。
食い終わったら置いておけと言われ、足音が遠ざかっていく。
正確な時間は分からないが昼飯だろうか? もしかしたら朝飯か夜飯かもしれないが。
これは食べて良いのか? 逡巡の末、まあ毒は入ってないだろうと器と箸を取った。
一口食べる……温かく美味しかった。
「ふー」
かけそばを食べ終わり、器を戻して一息つく。
時間が経って器は回収された。
俺は来た人に今何時なのか、なぜ閉じ込められているのか聞いてみた。
時間に関しては俺の予想通り13時をまわる頃、閉じ込められた理由は知らないと言われた。
あまり期待はしていなかったからがっかりはしない。
飯も食べたしどうするか、そんな俺の考えを読んだのかさっきまで器が入っていた場所には紙とペンがあった、書いておいてくれと言われ足音が遠ざかる。
紙を取り内容を見る。
その紙はほとんど報告書みたいな体裁をしていた。
魔暴アジト制圧時の状況について書く欄がある。
一度報告したはずなんだけどもう1回書けということか。
こんな状況どうしても暇になるから何回書いてもいいけど。ペンを手に取りできるだけ詳細に思い出して書いた。
「書けた」座っているベッドの横にペンを置いて報告書を見る、報告書というより感想文みたくなった。
これは俺が報告書を書くのが苦手だからではない理由がある、報告書にそのとき感じたこと思ったことを書くよう指示されていたから。
だから主観を多めにして書いた。
はたしてこれにどういった意図があるのか、思想を知って魔法管理所に反抗的かどうか確かめるためだろうか。本人が書いたものだから客観性に欠けると思うけど。
ペンと紙を元の場所に戻して、ベッドに横になる。
どうなるのだろうか、閉じ込められ食事を届けられ報告書を書いた。まだ1日も経ってないが、かけそばが最後の食事になる可能性を考えてしまう。
さすがに殺す云々の話にはならないと信じたいが。
「はぁ」何もすることができない。
また人が来たと思ったらご飯が運ばれてきた。
たぶん夕飯。もうすぐ1日が終わろうとしている。
報告書を書くために、こんな場所でさっきまでアジトのことを考えていたからか、昔の嫌なことを思い出してきた。
10年ぐらい前だろうか、当時10歳かそこらの記憶。
何もできなかった自分を変えるように、やってきたつもりなんだけどな。
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