第11話惚れた弱みはどっち(槌居健輔の呟き)

毎週行くスーパーで見かける彼女

どこかで見たことがあるのだがどこでだったっけ


挨拶もよくしてくれる

店長と仲が良いのかよく話して笑ってる

美人では無いけど笑顔が可愛い

歳は俺とそんなに変わらないだろう

結婚指輪をしていないが結婚はしていてもおかしくない歳だ


スーパーの社内対抗ソフトボール大会に今年も呼ばれたので参加してきた

うちの社が準優勝だったので表彰式に出ることになっている

表彰式まで時間があったのでスーパーの休憩室に店長を探して顔を出した

店長はいなかったが彼女が1人で休憩していた

競馬放送を見せて貰いながら何となく話しかけるきっかけを探していた


彼女が席を立つらしい

コタツを独り占めしてしまっていたので

つい声をかけてしまった

「コタツ独り占めしてごめんね。他の男と一緒にコタツに入ってたら旦那さんから怒られちゃうか」

「そんな人いないから大丈夫ですよ〜笑

ゆっくりしていってくださいね」

そう言って彼女が部屋から出て行った


慌てておいかけてしまった

身支度を整えていた彼女がびっくりしていた

「今度飲みに行きませんか?」

「すみません💦子供がいるので飲みに行くのは難しいんですけど」

「じゃあご飯食べに行きませんか?」

「ご飯くらいなら」

「電話番号教えて」

メモがないから名刺を渡した

自分の電話番号も名刺の裏に書いて渡した

彼女が書いてくれた電話番号の横には名札とは違う名前が書いてあって

「実家にいるんです」と笑っていた


いつもこんなことをしてる訳じゃない

こんなチャンスはなかなかあるもんじゃないし、何故か彼女は以前から知ってる気がしていた

次の彼女の一言で思い出した

「ゴルフ場のレストランにはまだ行かれてるんですか?」

「8年前にレストランの方へ勤めていた時に来られてましたよね」


あの頃バイクで通う彼女と数度挨拶を交わしたことがある

暑い夏にハーフパンツで颯爽と走っているのを何度か見かけていた

よく笑う子だと思った

その後そのまま転勤して会うことはなかったが、あの子だったんだ


なんだか少し嬉しかった


デートの日彼女は緊張していたのか調子が悪いからとご飯も残していた


車の免許もなく普段は妹の車に同乗して通っているらしい

交通手段も無いので送って行くことにしたけどこのまま別れたくない

「少しドライブしようか?」

「少しならいいですよ」

1時間半かけて小さな港町へ行った

喫茶店でもと思ったけどしまっていたから自動販売機でコーヒーを買って渡した


彼女は黙って海を見ていた

そっと肩を抱こうと手を掛けるとすっと避けられてしまった

「寒くなったので先に車に帰ってますね」

しばらく頭を冷やそう


帰りの車の中は静かだった

眠そうなのを我慢している彼女を見ていると我慢が出来なかった

車を道路脇に停めると抱きしめた

「君が欲しい」

彼女からは拒絶されてしまった

「俺の事嫌い?」

「嫌いじゃないと思います。でも」

焦りすぎたかな

「ちゃんと怒る時は怒らなきゃ、俺みたいに物分りのいい男ばかりじゃないんだから」

「ごめんなさい」

「謝らないで、俺が今夜枕を濡らせばいいいんだから」

くすりと笑った

さっきまで半分泣きそうだったのに


やっぱり可愛い


家の前まで送った

は「早く降りないとKissするよ」

冗談半分で言った

「…良いですよ」

「ほんとに?」コクン

そっと口づける

ぎこちなく受け止める唇が熱い

思わず強く口づけすると彼女がそっと背中に手を回して来た


頭が混乱している

さっきエッチは嫌だと断った彼女なのにKissは良いなんて


俺は弄ばれてるのか

「次はいつ会える?」

「わかりません。あまり遅くはなれないので」


ひとまずゆっくり寝るしか無い

来週営業に行った時の彼女の顔を見ればわかるだろう



彼女との縁が幻なんかじゃありませんように








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