幼馴染とひさしぶり編

41色 幼馴染とひさしぶり?

 やっほー!わたし色野灯いろのあかり。どこにでもいる普通の女の子!今日も快晴の空の下、わたしはウキウキしながら学校の廊下を歩いていた。


「おはようアカリちゃん」


 そんなわたしに二人の別のクラスの女の子が話しかけてきた。


「あ、おはようミヤタさん、ハナザワさん」


 二人に挨拶をする。


「聞いたよー確か今日だよねー?アカリちゃんのクラスに『転校生』がくるの」

「うん、そうだよ」


 そうわたしがワクワクしていたのは『転校生』がわたしのクラスにくるからだ。


「どんな子か楽しみだなー」


 なにを話そうかと考えるわたしに二人はすこし複雑な顔をして互いをみて確認すると口を開く。


「でも、転校生の子もかわいそうだよねー」

「え?なんで?」


 よくわからないことをいわれてわたしはきょとんとする。


「アカリちゃんはともかくさー緑風がいるんだよー」

「え?クロロン?」

「アカリちゃんもしってるでしょ?緑風がどんなやつなのか」


 え?クロロンがどんな子かって?そりゃあ、


「クロロンはやさしいよ」


 わたしの返しに二人はなぜかすごいイヤそうな顔をする。


「…クロロンって、なに?その呼び方」

「わかったー腹黒のクロだねーアカリちゃんセンスいいー」

「ち、違うよ!クロロンは腹黒じゃなくてかわいくてやさしくてそれにいい子なんだよ」


 突然クロロンの悪口を言い出したから、わたしは必死にクロロンの悪口を止める。


「アカリちゃんは騙されてるんだよ。緑風はサイテーでグズなやつなんだよー?」


 でも、やめてくれる様子はない。


「そ、それは…!違うよ!クロロンはわたしの大切な『トモダチ』なんだから!」


 わたしは必死に訴えるけど、二人はとても怪訝な顔をする。


「アナタ方、朝から随分と不愉快な会話をしていますわね」


 わたしが二人にイヤな目線をむけられているとフラウムが会話に入ってきた。


「フラウム!」

「き、黄瀬きのせお嬢様…」

「おはようございます…」


 二人はたじたじと挨拶をする。


「貴方方、朝から人を悪くいうとは随分と元気なお口ですわね」


 どこからかわからないけど、会話を聞いていたらしいフラウムはすこし怒っている感じだった。


「でも、黄瀬お嬢様!なぜいつもあの緑風のことを庇うんですか!?」

「そうですよーだって『あの』緑風ですよー」


 二人はクロロンの悪口をやめない。それを聞いたフラウムはため息をつくと静かに口を開く。


「聞きますが、貴方方は緑風さんと会話はしたことはありますの?」


 フラウムは冷静に聞く。その質問に二人はなにをいっているの?という感じの表情を浮かべる。


「話すもなにも『噂』が物語ってるじゃないですか」

「そうそう、そんなやつと話したら気分が悪くなるよー」

「………」


 その言葉はわたしもイヤな気持ちにさせた。なにもいえないわたしに変わってフラウムが口を開く。


「噂ですか…ろくに彼のことを知らない癖に噂話だけで彼の全てを決めつけるんですのね」


 フラウムは静かに息を吸うといい放つ。


「そんな貴方達に人を語る資格があるとでも思っているんですの?おこがましいにも程があるわ!」


 フラウムは冷静な言葉だったけど静かな怒りの籠った目で二人を睨み付けると二人はビクッと震える。


「なによ!わたしたちは間違ってないわよ!」

「あー朝から気分わるーい」


 二人は捨てゼリフを吐きながら去って行った。


 その二人の行動にわたしはとても哀しい気分になってしまった。


「フラウム…ありがとう…それに、ごめんね」

「アカリさんは悪くありませんわ」


 クロロンを守ることが出来なくて、わたしが謝るとフラウムがいってくれる。


「そうだよ、いろのさんは悪くないよ」

「!?」


 突然後ろからそういわれ、わたしとフラウムが振り返るとクロロンとシアン、そして、レータの三人がいた。


「緑風さん…聞いていたんですの?」


 フラウムは目を見開いて驚いた顔をする。


「ぼくこそごめんね、二人に変な思いをさせちゃって」


 逆にクロロンに謝られてしまった。違うよ、クロロンは一ミリも悪くないよ…。そう言いたいのに庇えなかったわたしはなにもいえなかった。


「気にするなっていうのは簡単だけどそうもいかないだろうね。だけど、僕達はあいつらよりも君を分かってるつもりだよ」

「れいたくん」

「…クウタのこと昔からしってるからいえる」

「みっくん」


 シアンはクロロンの肩に手をおきいう。


「二人ともありがとう」


 クロロンは二人にお礼をいう。


「じゃあ、さっさと教室に行こうか」


 レータにいわれわたしたちは教室に向かった。その途中でシアンがこっそりと話しかけてくる。


「…アカリ」

「え?」


 わたしも反射的に小声で返すと、シアンはこっちを向かずに前をむきながらいう。


「…大丈夫」

「?」

「…アカリはがんばった」

「!?」


 シアンの言葉にわたしは驚いた。


「わたし…庇えなかったよ…」

 

 だけど、わたしは下をむきながらいうと、シアンは静かに言葉を繋ぐ。


「…アカリの『言葉』、クウタはうれしかったと思う」

「え?」


 わたしの言葉って…そんなすごいこといったっけ?


 顔をあげてそんな顔をしているわたしの考えがわかったのかシアンはすこし笑顔をむけてくる。


「アカリはしっかりとクウタを『守れた』」

「!?」


 突然のシアンの笑顔と言葉にドキッとしてしまう。


 そんなわたしを知ってか知らずかシアンは離れて前を歩くクロロンたちのところに戻った。


「………」


 シアンの言葉がうれしくてわたしは口角が緩んでにやけてしまう。


「…えへへ」

「意外と見てるんですのね」

「あひゃあ!?」  


 突然、フラウムが話しかけてきてわたしは変な声をだしてしまう。


「フ、フラウム!聞いてたの!?」

「ええ、目の前を歩いてるんですから聞こえるに決まってますわ」


 なにをいってるんですの?という表情を浮かべるフラウムをみてひとりで気持ち悪く笑っていたわたしは恥ずかしくなってしまった。

 


 教室についたわたしたちは授業の準備をしながらいつも通りの会話を楽しみ授業がはじまる時間になると自分たちの席に座った。そして、しばらくして先生がはいってきた。


「皆さんおはようございます」

「おはようございます!」


 わたしたちは口々に先生に挨拶をする。


「皆さんも知っての通り今日は転校生がきます」

「どんな子かな、楽しみー!」

「そうですね、では、いきなりですが、みんなに挨拶してもらいましょうか」


 先生は教室の入口に向かって「入ってきていいですよ」というと教室のドアが開かれて黄緑色のショートヘアの髪でキレイなエメラルド色の目をしたかわいい女の子がはいってきた。


「ふぇーかわいいこだね」


 わたしは隣の席のシアンにいうとシアンはなぜか驚いた顔をしていた。


「?どうしたの?シアン」

「はい、色野さんごめんなさいね。今は授業中ですよ」

「は、はい、すいません!」


 シアンに聞こうとしたら先生に注意されてしまった。


 わたしはもう一度女の子を見るとすこしフシギに思った。


(あれ?どこかでみたことあるような?)

 

 なんて考えていると先生が話を続ける。


「では、守目もりめさん自己紹介の方をお願いします」


 女の子は先生に「はい」と一言答えると自己紹介をする。


「わたしの名前は『守目葉月もりめ はづき』です。今日からこのクラスでお世話になります。そして、『久しぶり』」

「え?ひさしぶり?」


 女の子の突然の一言にわたしたちはすこしざわつく。しかし、シアンだけは彼女の言葉に動揺していなかった。


「…ひさしぶり」

「え?」


 シアンから出た言葉にわたしは驚いた。


「よかった!やっぱりみっくんだね!」


 モリメさんはうれしそうにシアンの元に走ってきた。


「あら?天海くんと知り合いだったんですか?」


 先生も驚きながら聞く。


「はい!わたしとみっくんは幼馴染なんです」

「ええ!?」


 わたしたちは驚きの声をあげる。


 そして、わたしは思い出した。


「ああー!?もしかして、シーニの研究所でみた写真の女の子!?」


 わたしはすこし前にシーニの研究所でみた写真のことを思い出す。


「あ、本当ですわ!アナタ、何処かでみたことあると思いましたわ」


 フラウムも思い出したようだ。


「あれ?ということは…シアンとあなたと『もうひとり写ってた』よね?」


 わたしたちはそのもうひとりの人物に注目する。


「まあ、初対面の人達に写真を見られていたのは恥ずかしいけど、そうその通りよ!会いたかったよー!クウくん!」

「!?」


 そういうとモリメさんはクロロンに抱きついた。


「な!?アナタ、いきなりなにを!?」


 それをみたフラウムは動揺する。


「久しぶりー!何年ぶりかな!?昔っから顔が変わってなくて一目でわかったよ!」


 モリメさんはすごいうれしそうにクロロンに抱きつきながら聞くけど、なぜかクロロンは顔を青くしてすこし震えていた。 


「クロロン?どうしたの?」


 わたしはクロロンが心配になり聞く。


「どうしたのクウくん」


 モリメさんも異常に気づいたのか聞く。


 すると、クロロンは震えながら思いもよらない言葉を口にした。


「ど、どちら様でしょうか?」


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