22色 黒いナニかの正体
今日も快晴の空の下、わたしは仕事が一段落したので紅茶を淹れて一服する。
「うーん、自分でいうのもなんだけどうまいねー」
なんて自画自賛していると。
「アオイいるか」
中性的な男性の声がわたしの背後から聞こえる。
「ねぇ、キミは一体いつになったら礼儀をわきまえてくれるのかな?」
わたしは笑顔で振り返るけど、額に青筋を立てながら人の家兼研究所にズケズケと入ってきた顔だけはいい男にいう。
「文句があるならまず戸閉まりをしっかりとするんだな」
文句をいうわたしにマコトはやれやれと云わんばかりに返す。
「キミさ、顔はいいけどモテないでしょ?」
「は?なに意味の分からないことをいってるんだ?」
「なに?逆にそれはあてつけ?無自覚ならなおさら性格悪いね」
「俺はこんなくだらない会話をしにきたんじゃないぞ?」
「もしかして、アノ件?」
「分かってるなら早く話すぞ」
「ホント無自覚ってイヤだよね…丁度紅茶を淹れたからとりあえず座っていいよ」
マコトの無自覚な煽りにイラッとしながらもわたしは席に着くようにいう。
「コーヒーにしてくれ」
席に座ったマコトはそう一言いう。
「………ホント、キミって奴は」
わたしはさらに額の青筋を増やしながらもコーヒーを淹れてやる。
「はい」
「ああ」
マコトはそう一言いうとコーヒーの入ったマグカップを受け取る。
「ついでにこれもね」
ついでに彼の目的でもあったあるものを渡す。マコトはそれを受け取り確認すると眉を顰める。
「やはりそうか」
冷静にそういうとコーヒーを一口啜り一度それを机におく。
「わたしもびっくりしたよ。それを間近で確認した時もナゾの
わたしがマコトにみせたのは一枚の写真だ。ただの写真ではなくわたしが魔力を可視化出来る様にするカメラで撮ったモノだ。
「回収は出来なかったのか?」
マコトが険しい顔で聞いてくる。
「わたしもキケンかもしれないから預かるって言ったんだけど彼が大丈夫って言ったから無理に取り上げることができなくってね」
わたしは机に置かれた写真を手に取り確認すると言葉を付け足す。
「それに、この本というか魔力っていうのかな?『生きてる』感じがしたんだよね」
「ぶぼぉ!なに!?」
マコトはコーヒーを吹き出しながら目を見開く。
「うわあああ!?なにやってるんだよ!きたないなぁ!」
「げほっげほ…わるかった…それよりそれは本当か!?」
「うん、あくまでわたしの感じた感想だけどね」
「マジか…それなら思っていたよりも厄介だな…直ぐに上に報告するか?いや、ことを大きくするとさらに面倒になる…」
マコトは右手を口にあてながらブツブツと考え出しその間にわたしはマコトのこぼしたコーヒーを拭き取っていく。
「とりあえず、お前がモノに宿っている魔力を読み間違えると思えないのは分かっているが、俺が動きにくくなるからこのことは落ち着くまで上には報告しない」
「そう、そうしてくれるとありがたいよ」
わたしは布巾を洗いながら返す。そして、もう一杯コーヒーをいれてやるとマコトはそれを「すまん」と一言いい受け取る。
「わたしも考えなしで回収しなかった訳じゃないからね」
「ああ、分かっている」
「彼の話によるとその本をかなり昔から所持してるみたいだったから彼にあずけておく方が安全かなと思ってね」
「お前がそのくらい考えていることは分かっている。だから今は様子見ってところだな」
「おーけー、キミってムカツクけどそうゆうことはたよりになるからね」
わたしの言葉にマコトは「ふん」と返すとコーヒーを口にする。
「それを踏まえて聞いてほしいんだけどキミも気がついてると思うけど、多分『マモノ』が宿ってるよね」
「だろうな、それを上に報告したら問答無用で『祓う』だろうから確信が持てない今は見守ることしかできない」
『マモノ』っていうのは魔力に命が宿ったモノのことで、いわゆる『つくもがみ』みたいなものだ。一種の呪いとして世間では知れ渡っているけど『マモノ』といってすべてが悪とは限らない。確かにおおくは人間に対する恨みで生まれてしまうものもあるけどそうとも限らないのだ。
「お前のその甘さが仇とならないといいがな」
「それに付き合ってくれるキミもなんだかんだ甘いんじゃないかな?」
「………」
マコトはなにもいわずコーヒーを飲む。
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