第一章 脱獄編
第3話 スパイ
<独房?>
「お…………い…………」
「お……い……」
「「おーーーーい!!」」
「びゃっ!?」
声がしたと思い少しづつ目を開けていったら急に大声がするもんでビックリした
「やっと起きたーー!」
目の前には可愛らしい黒髪ショートヘアの女……?がいた
訳が分からない。なんでこんな所に?と問いたくなるほど。
「起きて早々悪いが何故俺は見ず知らずの女子と一緒に独房にぶち込まれてる?」
当たり前の疑問だ
まずはそれを解明しなければ何も始まらない
彼女からはその答えが真っ先に聞けると思ったが――
予想外の返事が帰ってきたようだ
「男だけど」
「は?」
「だから僕、男。アイアム男」
「は?」
「…………」
「えぇえええぇえええぇぇぇぇえぇえ!?!?」
割と一瞬思考が停止しかけた。
***
「で、話を整理すると俺が突然担架で運ばれてきて突然看守に一緒に暮らせと? 」
「そうそう」
そういえば肝心な事を聞いてなかった
ここはどこだろう?
「ていうかここはどこだ? 」
「あぁ、まだ言ってなかったね」
「ここは監獄アスカロン。マラヤ王国の敷地内だよ」
「マラヤ王国?聞いた事ないな」
「まあ、そりゃそうだよね」
聞く話によるとマラヤ王国は知名度がかなり低く、その知名度の低さと戦略の未知数さを利用し奇襲戦法を取っている国なのだという。
「そういえば俺が倒れた時に黒い花火を見た気がするんだけど何か知ってる?」
「あーそれね。随分前に看守から聞いたんだけどあれは撤退のサイン」
「まあ、サインは国によって違うだろうけどあれがマラヤ王国のやつだと思ってくれれば! 」
国によって違うからそういうものだと捉えるのが早い
しかし覚えていてもしょうがないから記憶の片隅にでも放置しておこう。
しばらく話しているとフライパンを持ったくるくるしたヒゲをした太った大男が現れてフライパンをカンカンカンカンと叩く
「喜べ豚ども! 飯の時間だ、メシ!」
次第にそれぞれの牢の看守が鍵を開け囚人たちを外に解放する。
「……新入りか。ついてこい」
看守に手錠をつけられどこか(おそらく食堂?)に誘導される
***
<大きくて騒がしい食堂>
「でっけー食堂だな……それに人がたくさん」
「結構人数いるからねーここ」
食堂ほぼ席も埋まっていて立ち食いしてるやつも
いるぐらいだ
相当数いると考えられる
「そういえば名前聞いてなかったんだが
聞いてもいいか?」
「あ!忘れてた!ボクの名前はイルウィ。
キミの名前は?」
「俺の名前はアラン。今後ともよろしくな」
「うん!こちらこそ」
握手を交し、なんとか空いてる席を探す。空きそうな席をハイエナ<空くまで待ち伏せ>するのもありだと
イルウィが教えてくれた為空きそうな席を探す。
***
「お!リッキーじゃん」
彼女……いや、彼だった
彼が声を掛けたのは米〇玄師みたいな目が隠れている茶髪のムキムキ野郎。
「あ……あぁ……今日も元気そうで何より。それよりそちらは?」
割と体格に反して割と控えめなタイプだ
普通に良い奴そうだから仲良くなりたい
「最近同じ牢に入ったアレン君だよ☆」
「アランだっつーの!!」
「後はバトンタッチ〜」
「(ちょっ!?)」
背中を大きめに叩かれて俺にリッキーとの会話が振られて俺は困惑するが深呼吸して仕切り直し。
「はじめまして、俺はアラン。
まだ新入りだから分からない事だらけだがここの事教えてくれると助かる」
「……ふむ。なるほど」
「知り合って早々悪いが、君はここから脱獄したいか?」
「そりゃあ……もちろん」
「…………そうか」
リッキーは少し悩んでからアランにこの施設の詳細を伝える
「結論から言うがここからは脱獄出来ない……というより脱獄しようとした奴は少ない」
「ここには捕虜だったり、普通に犯罪を犯して捕まった奴が混在している」
「捕虜はほとんど戦場を知ってるヤツばかりだ。戦い方を知らない一般市民はその場で殺される」
「戦場を知ってるヤツは雰囲気が違う。それでマラヤ市民はマラヤの軍章を付けた服を着ている」
「しかし、そのどちらでもないとなるとどうして見逃してもらえた?……賄賂か?」
マラヤ軍服は全体的に緑と黒の配色で周りを見渡してみると確かに着てるやつは多い
「俺は好きだった奴を自分の手で殺すことを条件に生き延びた」
その話をした直後俺はあの光景を思い出して酷い吐き気を催した
「オエッ……!」
今でも思い出すとこうなる
トラウマになってしまって治す術を探そうとしても
見つからない
だから必死に忘れようとしてた。
「やばいやばいリッキーって結構ズバズバ行くから言うの忘れてた……! 大丈夫!?」
イルウィが側によってきて心配してくれる
周りも何事かとザワザワしていてついには看守達も
駆けつけてきたが
とりあえず事情を話して解放してもらった
看守は最初は怪訝な感じだったが事の顛末までを話したら「まあ、そりゃそうなるよな」
って感じで納得したようだ
***
「言うの忘れてたけど牢の中でアランの事聞いたんだよ。聞いた時ですらちょっと危なかったのに
リッキーになったら更に不味い気がしたけど的中するとは……」
「ごめん……ただ、もうちょっと耐えてくれ。このクロワッサンが余ったからキミにあげる」
「少し場所を変えよう」
そうして俺たちは看守に許可を貰い男子トイレに向かう
「さっきの続きだが……」
「お前に殺せと強要したのはおそらく隊長だな。あいつの悪い癖だ」
「隊長か……さぞかし強いんだろうな」
「その通り。ただ、表立って行動しないから引き摺り出されれば弱いだろうな」
「後、さっきの事で聞きたいことがあるんだがいいか?」
「何だい?何でも聞いてくれ」
俺は先程疑問に感じたことをリッキーにぶつける
おかしな言い回しだったから割と疑問だったのだ。
「さっき、脱獄をしようとした奴は少ないって聞いたが」
「何故脱獄に成功した奴じゃなくて脱獄しようとした奴なんだ?」
脱獄に成功したという言い回しなら試みてるという
点がある
しかし彼の言い回しは「そもそもやらない」
というニュアンスだ
不審点がある。
「もう察してるかもしんないが看守の数が多いだろ?他にも脱獄対策はあるが警備自体が厚い」
もしかして脱獄出来る可能性が限りなく低いから……?しかし、それだけの理由なのだろうか。
「しかし、そんなのは理由の2割に過ぎない。それにここには捕虜が沢山いると言ったろ?」
「ああ」
「俺もだが、彼らは戦場を知っている。戦場を知っているからこそここが平和だとみんな口を揃えて言う」
ここが平和……?確かに平和だが何か理由でもあるのだろうか。
「脱獄しようとした奴は例外無く殺される。それがさっきの理由と合わせて脱獄をする意欲に拍車をかけているのだろうよ」
「それとここに入れられてる奴らはたまに
徴兵されるが徴兵されても後方支援に回る。前線の暗殺隊が強すぎるからだ」
ここでは「生きられる」という保証がある
しかし、戦場では「生きられる」という保証がない
だから脱獄しようとしないのか。
「後、戦場は地獄そのものだ。キミが体験した出来事よりも凄惨な事なんてザラにある」
「昨日まで笑いあってた戦友が死んだり等はまだマシな部類だ。
「なっ……!そんなのがマシだってのか!?」
俺は周りが死ぬことすら辛い事なのにそれ以上の事があるだなんて思ってもいなかった。
「銃人と子供については何も話さない、他の奴らに聞いても同じ事だ。話そうとしない」
「ほぼ全員がトラウマみたいなものだからなアレ。名前を出した時点で発狂する」
「俺もこの名前を出したくはなかったが今回だけだ。二度とこの名前を出さないでくれ」
全員がトラウマになるとはどういうものなのだろうかという好奇心と知ってしまったら戻れないという防衛心が心を巡る。
「もし知りたいのであれば自分の目で確かめてくれ。しかしその時にはもう遅いかもだが」
「――――ここから出たら更なる地獄が待っている。後戻りも出来ない。それでも出たいと言えるか?」
「ああ、それでも俺は真実を知りたい」
「そうか……――気に入った!」
「ちょっ、リッ――――あ、遅かった。」
イルウィが止めに入ろうとしたが、時すでに遅く。
リッキーはアランの股間に盛大な蹴りを入れた
「ウギァアァァアァアァアァアァァァァア!!」
凄い断末魔。
大人しいと思ったがそうでも無く、むしろやばすぎる奴だった
友達になろうと思った俺が馬鹿だった――――(遺言)
〜ブルーバレット 完(大嘘)〜
***
<マラヤ暗殺隊 隊長室にて>
デスクで何やら書類を書いている
青髪のロングヘアの男、サンクシン。
あの時は仮面をつけていたが、彼は間違いなくアレンにカレンを殺させた張本人だ
彼が書類を書き連ねていると静粛な彼のマイルームにコンコンと誰かが扉をノックする音が響く
「……入れ」
「失礼しまーーす!!」
その人物が隊長室に入るとサンクシンはバツの悪そうな顔をしてその人物に問いかける。
「ノックのしてこなかったお前がノックをして入ってきたのは褒めてやる」
「しかし、二回ノックはトイレノックだ。弁解はあるか?ミヤ」
「いえ、生憎弁解なんてもんは捨ててきました」
「潔く認めて次気をつけますわ」
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