<詩>黒を見つめて

鈴乱

黒を見つめて



黒が、怖かった。


全ての色を飲み込んで、闇に放り込まれる。そんな気がしてしまうから。


だけど――。


好きになった君が、「黒が好き」だと言った。


私が嫌いな黒を、好きだと。


驚いたし、慄いた。


でも、また君が言う。


「黒が、好きだ」って。


あんまり、君がそう言うから、私は黒を見てみようと思った。


君が好きだという黒を、ちゃんと見つめてみたいと思った。


君が好きなものを通じて、君を知りたかったんだ。


君が好きだから、私の嫌いな黒を知りたくなったんだ。


目を逸らさずに、ただ、真っすぐに。


正直言うとさ、とっても怖かったんだよ。


自分が取り込まれてしまうような、そんな不安が拭えない。


それでも、怖いのをぐっとこらえて目を開く。


君の見た景色を見てみたい。


黒と対峙して、じっと見る。


黒と一緒に君の顔もちょっと浮かぶ。


私は、独りで黒を眺めてるつもりだった。



だけど、なんだか、君が隣にいて笑っているような気が、した。


『僕の好きな色、どうかな?』


ってニコニコしてるような気がした。


私はそのうきうきした声に励まされて、顔を下げずに済んだんだ。


目の前の黒から逃げないで、見つめることが出来たんだ。


黒は、ただ、私の目の前に広がっていた。


黒は私を飲み込みもしないし、私を潰そうとするわけでもない。


ただ、“在る”だけだった。


『なんだ、大丈夫じゃないか』




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<詩>黒を見つめて 鈴乱 @sorazome

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