飛白連理
かがみ
116
さて、116という三桁の数字を聞いて、きみは何を連想するかな?
試しに、真面目な幼馴染みの男子に尋ねてみた。
「NTTの問い合わせ受付番号じゃなかったっけ?」
そうだね。きっと常識的な回答の最たるものだね。
じゃあ次は、不真面目な幼馴染の女子に尋ねてみようか。
「親の60符3翻かぁ、30符4翻だねぇ」
麻雀の点数計算かな? きっとピンピンロクのことだね。
ついでに、頭のおかしい4つ上の従姉にも尋ねてみる。
「倍で進めばスマホの通信速度が早くなるね」
うん。やっぱり頭がおかしいよね。意味が分からないからね。
しかし答えを尋ねるのは敗北感を覚える。仕方がないな。
通信速度と言えば、bpsとか。pingとか。
わざわざスマホと言ったから私でも知っている用語だとは思うけど。
ああ、そうか。あのアマのスマホはまだ4G対応だ。
早くなった後を5Gと想定するのなら話が早い。
倍で進む。つまりは十進法を二十進法にすればいい。
二十進法で50は十進法で100。Gは16だ。
なるほど。5G=116だね。
改めて言おう。あいつの頭はおかしい。
そして最後、私に好意を寄せるひねくれものの後輩にも尋ねてみた。
「レベルですね」
こいつ。あのアマと同じようなことを言いよってからに。
まあいい。あいつと比べたら多少はストレートなはずだからね。
レベル。Level。Lv。ああ、思いのほか簡単だった。
原子番号116のリバモリウム。元素記号がLvだね。
それが昨日のこと。
望む回答は得られなかったけど、そこはまあ仕方ないね。きっと身近に同じタイプの人がいないんだと思う。
だから私はその解答を述べるために、学校をサボって会いに行った。
『ヒハクに会いたい』
その言葉に誘われて。
天気が崩れなくてよかった。身長を20センチもかさ増しすると、雪の日は当然として、雨の日でもつらい。
待ち合わせ場所は駅前の喫茶店。随分と早く着いてしまった。
でも問題はない。その間、ずっと待ち人のことを考えていられるから。
やがてその時は来た。もっとゆっくりでいいのに。わざわざ駆けてきてくれる。
他愛のない挨拶を交わし、向かいに座って貰ったら店員を呼び寄せる。
ケーキは後だ。まずはプリンと、温かい飲み物を頼もうか。
暖房のせいかな。外が寒かったからね。ほんのりと、彼女の顔は赤い。
しきりに前髪をいじっているのは癖なのかな?
それとも緊張のサインなのかもしれないね。
ごめんね? こっちから話題を振ってあげてもいいんだけど、そうして困っている顔もまた、ずっと見ていて飽きないくらいに魅力的なんだ。
しかしながら、温かい飲み物が届いてしまった。カラメルソースたっぷりの、カスタードプリンも一緒にね。
なので、116に対する私の解答を述べてしまおう。その湯気が大人しくなる前にね。
「お誕生日、おめでとう」
1月16日。私にとって大切な日さ。
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