灯台とセーラー服と
光城 朱純
第1話 古い灯台
もう、死にたい。生きていくのやめたい。人生なんて、辛いことしかないのだから。
ただ一心に、死ぬことだけを考えた私が辿り着いたのは、古い古い灯台。岬の先端にあって、昔はその位置を船に教えるために活躍してたそうだ。
それが今は自殺の名所として、インターネットに取り上げられていた。今の時代、ネットさえあれば何でもわかる。死ぬ場所も死に方も、何もかも。
中学生の私ですら、簡単に知ることができる。便利な時代。
使われなくなった灯台は、そこらじゅうの塗装がささくれていた。潮風に当てられて、多分普通の建物よりも劣化が早い。
黒ずんで見えていた壁面に近づいてよく見れば、誰が書いたかわからない落書きがびっしりと書き込まれていた。
『死にたい』『一緒にいこ』『先に待ってるね』
まるで私のことを呼んでくれてるような落書き。
ここには、私の仲間がいる。
つい、そんな風に考えた。私の居場所なんてどこにもない。仲間なんて、この世界にいるわけもない。そう思っていたから。
誰が書いたかもわからない落書きに、引き寄せられた。
ギィ。鉄製の扉は、蝶番が錆び付いて、奥歯が疼くような嫌な音を立てる。大嫌いな音を聞いた不快感で、胃の中から酸っぱいものがせり上がってきた。吐きたくなるのをこらえて、灯台の中の階段に目を向ける。
灯台の中は潮と錆と何かが腐ったような、嫌な臭いが立ち込めていた。
死ぬのも簡単ではないみたい。
吐き気に追い討ちをかけるような臭いから逃げるように、階段を走って上がっていく。
上に行けば窓がある。柵の壊れた、飛び降りるための窓。新鮮な空気を求めて、死に場所を求めて、私は無我夢中で駆け上がった。
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