マキナ・リベラティオ 軍属の科学者ソフィア・ハミルトンの話
平たいみかん
救われた子供たち
私は地下街で生まれ、地下街で育った孤児だった。
周りには自分と同じ境遇の子供だけ。
まだ小さな子が病で死ぬ時もあった。
みんなのために食べ物を取りに行った子が帰ってこなかった時もあった。
それでもみんなと一緒に必死に生きてきた。
私に人生の転機が訪れたのは、私が15歳になる頃だった。
ある男が私たちの元を訪ねてきたのだ。
彼は都市で孤児院を経営しており、地下街に住む子供たちを保護するために来たのだと言っていた。
怪しいとは思ったが、「今のままでは幼い子たちがまた死んでしまうかもしれない」と考えると断ることは出来なかった。
そうして私たちはその男が経営する孤児院に入ることになった。
孤児院に入る前に、いくつか説明をされた。
まず、彼の経営する孤児院は3つあり、それぞれで学ぶことが変わる。
1つ目は6番棟孤児院「ハミルトン」、ここは研究者を育てるための孤児院で、化学に興味がある子や、医師になりたい子もいるらしい。
2つ目は7番棟孤児院「アンジェリキ」、ここは軍人を育てるための孤児院で、運動が得意な子や、頭の回転が早い子が多くいるらしい。
3つ目は11番棟孤児院「グレイス」、ここは技術者を育てるための孤児院で、ものづくりが得意な子や、機械を触るのが好きな子はここに来るらしい。
そうして丁寧に説明してもらい、どこに行きたいかと聞かれた。
その頃には初めに感じていた怪しさは無くなり、他の子たちは目を輝かせ、どこに行こうかとみんなで話していた。
とはいえ何が好きかや何が得意かなど私はともかく他の子たちは分からない。
そこで彼が私たちの才能を見てくれると言った。
そうして他の子たちを振り分けてもらって、最後に私の番が来た。
私は他の子たちと違って行きたいところが決まっていた。
2年前、偶然見かけた名前も知らない人。
その人の体には見たこともない植物が生えていて、とても綺麗だと思った。
色んな人に聞いてみるとそれは「緑化症」という病なのだそう。
私はもっとその病を見たい、その病について知りたいとそう思っていた。
そのチャンスが目の前に来たのだから、逃すはずがない。
「おじさん、私は6番に行きたい。どうしても知りたい病気があるの。」
「ふむ、だが君はもうすぐ大人だろう?周りは小さな子達ばかりだけれどそれでも構わないのかい?」
「うん、大丈夫。そんなことは勉強出来ない理由にならないもん。」
「そうかそうか。わかった、君達全員を私の孤児院に迎えよう。立派な大人になれるよう、全力で支援しよう。」
こうして私は自分が育った地下街を離れ、研究者への第一歩を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます