マキナ・リベラティオ 救済者ハンス・ニルヴァーナの話

平たいみかん

とある町医者の話

僕の人生は順風満帆だった。

妻のサラは自身の工房を持つ技術者、僕は小さな医院を営む町医者。

決して裕福では無いものの、何不自由無く暮らすことが出来ていた。

今年で2歳になる息子のクロムと、産まれたばかりの娘のローザがいて、子育ての忙しい時期であったが、それさえも幸せの一部だった。


僕の営む医院はそこそこ外壁に近く、時折普通では無い患者を診る事もあるくらいには治安は治安は良くなかったが、ほとんどの人は僕が医学を学んだ中央区で出会った多くの人よりも温かく、そして優しかった。


そういった患者を相手にしていると、やはり良くない噂も耳にするもので、ここから少し離れた「地下街」という場所では原因不明の病が蔓延っているらしい。

なんでも、その病は「緑化症」と言って、体から何らかの植物が生えてくるものらしい。

しかも治療法が無く、罹患してしまえばいずれ全身が植物になって死んでしまうとか。


僕は初めてそれを聞いた時、「そんな馬鹿げた病が本当にあるものか」と思った。

あくまで噂なのだと本気にしていなかった。

そもそも「地下街」と言う場所を僕は信じていなかった。

この都市「アルティクス」は中央にある大きな機械「マキナ」のおかげで広大な面積があり、地下に住む意味など無いと思っていたからだ。

だが、その噂が途絶えることは無く、普通では無い患者達は皆口を揃えてそこで暮らしているのだと言っていた。


しかし、僕はそれでも不治の病を本気にせず、自分には関係の無いものだと考えていた。

そうして約1年が過ぎた頃、ある転機が訪れた。

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