恩師と天才の行く末は…

星蓮アカネ

第1話

「ねぇ、僕の親いつ帰ってくるの?今日は僕の大事な誕生日なんだよ?ねぇ!!いつ来るのか聞いてるんだけど!!」

僕のこの問いに答える人はいなかった。


「ねぇ、ライアンなんで、僕のこの問いに答えないの?ライアンなら簡単でしょ、僕より父についているんだから。ねえ、メアリー?なんでお前も答えないの?僕のこの問い難しい?ねえ、メアリ〜?簡単なはずだよね?だって、お前は母についているんだから。ねぇ、どーして誰も答えてくれないの?僕のこの問い難しい?」


僕は、ただ両親に会いたい。それだけなんだよ?この5年一度も顔を見せにこない両親に会いたいだけなんだよ?その為に、僕は…手を沢山汚した。たくさんのメイドや執事を退職させ、言葉遣いを変え性格すらも変えた。その全ては、“両親から怒られるため”に。ただ、そんな毎日だと疲れてしまうから。時々外出したりしたけど。


「ふふっ…」

メアリー、ライアン、可哀相に震えているね。まあ大方、目星はついているんだけどね。どうせ、あの子(僕)には言わないでね。言ったら、一族全員殺す。だとか言われているんだろうね。そこまでしないと、あんなに頑なに口閉じないよ。

ただ、僕、追跡魔法だとか個人情報解除魔法とか扱えるからどこにいるかわかるんだ。残念だったね。まぁ、もういいや。ここまで意固地になってても仕方ない。

さっさと、ここから抜けだそ〜。


「もーいいや、言わないならさっさと定置に戻ってくれる?さもないと、僕何するかわからない。」

僕は呼び出したメアリーとライアンに視線を向けると慌てて、二人は扉から出ていった。


そんな時だった。全員いなくなったタイミングを見計らって白髪の男が俺の目の前に現れ、綺麗な礼を向けていた。


「お坊ちゃん、支度を手伝います。」

「分かった。任せた。」


その人に任せると、あっという間に準備が終わった。


「お坊ちゃん、これからどこにいかれるのですか。もしよければ、この爺やついて行ってもよろしいでしょうか?」

男は胸に手を置きコチラを見て座り込んだ。


「ああ、いいよ。ついてきな。今日はギルドの仕事をやろうと思っていたところなんだ。」


僕は窓に近づき、そこから飛び出した。

屋敷自体の面積は大きく、それに伴い庭の大きさも桁違いだった。

だが僕は、体全体を魔法で強化し、姿を変える魔法をかけて、僕の家から出て行った。


「やっぱ、ここっていいよね。姿変えただけで、僕のことをあの噂の男だと思わないのだから。しかも、城下町のみんな優しいし…」

「そうですね…。坊ちゃんがあのように振る舞ってからこちらでは領主のことを不安がっている人ばかりですが、今の姿を見ると逆にみんなから好かれていて、爺やは嬉しい限りです。」

爺やは泣き始めた。


「爺や!?流石に、僕だって姿を変える魔法までしたんだからあんな態度はとらないさ。泣き止んでくれよ。爺やに泣かれると僕はどうしたらいいのかわからないからないんだ。」

(それより、なんだこの視線不気味だな。誰かからずっと見られている気がする。)


「爺や…」

僕はワントーン声の高さを落とした。

「はい、坊ちゃん。かしこまりました」


爺やは、いなくなったが、すぐ帰ってきた。

爺やの手袋に少し血が見えたが、それに気づいた爺やは一言僕に謝ると手袋を変えた。



「爺や、ついたここだよ。爺やには今から僕の付き添いとしてではなくお兄さんとして行くよ。家出る前に姿を変える魔法をかけているから、おかしくはない。」

「はい、かしこまりました。それでは、爺やはどのようにお坊ちゃんをお呼びすればいいですか?敬語は外すべきですかね?」

「僕のことは、レオンと呼んでくれ、領主の息子の名で呼ばれるとバレるから。

それと、敬語は無しでよろしく。」

「はい、わかりましたよ。レオン。」


“ガチャ”


やっぱ、体格いい人ばかりここにはいるな。さすが、ギルド。視線も桁違いの悪さ。値踏みされている視線もあるな。まぁ、悪くはない。


「こんにちは、新規のお客様ですよね?」

「そうですよ。」

僕は、執事の背後にいた。僕が出ると馬鹿にされる恐れがあるからな。

身長110cmしかないし、年齢も5歳だしな〜。身長を誤魔化すことは魔法でも無理だった。


爺やがギルドの受付で申請している間、僕は店内を歩いて回った。店内にはギルドクエストが貼ってあるところ、2階へ行く階段、待つためのソファが置かれているところ、受付をするところ、そして、ギルドランクを決めるための闘技場へ繋がる扉に分かれていた。大体の人がギルドクエストが張ってある掲示板で集まっていた。中には、面白いのがあった。それは、僕の執事やメイドの募集する紙が一番下のランクに飾ってあったことだ。それを見た時、笑いが止まらなくて仕方なかった。いくら、領主の息子が嫌われているからって一番下はないだろう。ほんと、凄く面白かった。まぁ、感情には出さないように教育されているから、あくまで心の中だけどね。


「レオン〜!レオン〜!」

すっごいイカつい顔して探している爺やに近づいた。


「いなくなってごめんなさい。それで、どんな感じ?」

ワントーン落として、告げた。

そうすると、爺やは一瞬目を細めた。そして、周りを見回した。

ただ、顔は僕の方を向けたまま目線で見回していた。

「細かい書類の手続きが終わり、これから、戦うところです。」

「それは、僕の分も?」

「終わってます。」

ほんと、爺や最高。まぁ、それぐらいの働きはしないとそもそも雇わないけどね。


「アシードさん?レオンさん?準備が終わりましたら、こちらにお越しください。」

闘技場へ行く扉が開いていた。それは、近くにいた受付の女によるものだが、中はすごい暗かった。これは、安易に冒険者という道を選ぶなという無言の圧なのかもしれない。


「はぁい、今行きます。」

「はい、お待たせしました。今向かいます。」







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