決戦! ドラゴン…ドラゴン?⑤

 今日はキャベツと海鮮の炒め物だった。オリーブオイルとニンニク、それになんだろう。変な味がする。

「何これ、ピリピリする」

 初めての味…味、と言うか痛い?

「とおがらし」

 あいつが二本の棒切れを使って、真っ赤な鷹の爪みたいなやつを持ち上げた。あいつが木工でしこらえたものだ。「ハシ」とか言うらしい。アタシも試しに使ってみたけれど、難しくて掴むのすら無理だったわ。それをひょいひょい使ってご飯を食べるの。フォークとスプーンの方が難しいって。不思議よね?

「なに、その赤いの」

「ペッパーだな」

 ジャックが言った。

「胡椒…ではないわよね?」

「俺も詳しい事は知らん。数年前のアリアに入ってきたんだ」

「最近じゃ栽培もしとるぞ。大陸では滅多に見ないのう」

「でも、これおいし〜。タケシ、これ、なに?」

「なに?」

「なまえ、りょうり」

「あー、アヒージョ」

「あひーじょ?」

「うん、うん」

「アヒージョって言うんだ〜え、パンを浸しても美味しいの? どれどれ…あ、絶品!」

「あら、ほんとね」

「こりゃ良いのう。タケシ殿はなかなか見識が豊かなようじゃ」

 そうかしら…。

「あー、ビール欲しい」

 レベッカもお気に召した様子。それから落ち着いてくれた。よしよし。

「蒸留酒ならあるぞい」

「蒸留酒かぁ…私にはきついんだよね」

「さけ、かす」

 酒粕?

「ちがう…つうやく!」

 ええ…

「水割りにしようぜ」

「理解できたの?」

「酒がきつい、とかだろ」

「凄いわね…」

「だから、水で酒を割るんだ。多分、バーボンかウィスキーだろ?」

「ドルベン、そのお酒ってなに? バーボン?」

「その通りじゃ」

「ちょっと貸してくれ、だって」

「何かするのかの?」

「水で割るらしいわ」

 あいつはガラス瓶を受け取ると、コップに四分の一くらい、原酒を入れて、その上から水を注いでさ。予備のハシを使って丁寧にかき混ぜたの。

「これ、のむ」

 レベッカに差し出す。

「なにこれ、美味しそう」

 一口。

「あ、これなら良いわ、飲みやすい!」

「あ、それならアタシも」

「私も~」

「そうだ、柑橘があったよな?」

「あるけど」

「一つくれよ」

「オレンジとライムとレモンがあるけど」

「じゃ、ライムで」

 はい、と手渡す。包丁で二つに切って、水割りに果汁を垂らして。残った皮をそのままグラスに浮かべたの。

「わ、お洒落」

「そうね」

 飲んでみる。ライムの爽やかさが心地いい。

「原始的なカクテル、だな」

「かくてる?」

「お酒と他の物を混ぜたもの」

「それなら、他でも飲んだことがあるわ…ワインに蜂蜜を入れてたっけ」

「あ、飲んだね~。フィヨルドだよね、ホットワインにさ」

「あそこは寒いからね、温まったなぁ」

「フィヨルド?」

「ミルドガルド最北の国よ」

「広いんだな、この大陸は」

「ええ、まぁね…もう一杯頂戴」

「はいよ」

 なんて、お酒を酌み交わしつつ夜が更けていったの。一人、また一人とテントに戻っていって、アタシらも途中でお暇させてもらったわ。

 …レベッカとジャック、それにドルベンは最後まで残っていたみたいだけれど。

 まー、ね?

 どうなるかくらい、分かるわよね…。止めれば良かったわ…。

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