第151話 領主様の視察

 昨日の領主様の家で食べた料理美味しかったな…。

 朝の6時30分、今日もロジャーが運転、僕とアンディーが二階だ。


 ミラ姉とシエンナには、今朝はゆっくりしてもらっている。朝ご飯の前、朝飯前の一仕事だ。昨日は、夜遅くまで領主様の家でご馳走を食べたり、飲み物を飲んだりしていたから、一仕事の後にご飯を食べる位で調度良い。


 僕たちを待っている間にメイドの皆さんには食事を終わっておくようにお願いした。多分、行って回収して戻って来るまで20分はかからないと思うとも。だから、僕たちの出発は誰も見送りに来ていない。来なくていいって言ったから。


「二階は、準備良いか?」


「「OKだよ。」」


「出発!」


 時計を見ると6時50分になっていた。出発準備をゆっくりやったからな。トイレにも行ったし。


 いつも通り、ゴーレムコアを回収してパーティーハウスに戻って来た。時刻は、7時15分。昨日より5分も時間がかかっている。1~2階層の素通りには時間はかからなかった。敗因は、普通のゴーレムコアをたくさん集めようとしすぎたことだ。通り道に少なかったから他の道まで探しに行ってしまった。5分もかかっていたなんて思いもしなかった。


 がっくりしながら食堂に行くと、ミラ姉とシエンナは、もう起きて来ていた。


「お早う。あんたたち早いのね。もうゴーレムコア採集に行ってきたの?」


「おう。もう終わったぜ。昨日より5分時間がかかったけどな。」


「それじゃあ、朝ごはん食べたらみんなで砦の壁作りしましょうか。冒険者のみんなも8時には始めるみたいだし、みんなでやれば、10には、積み上げ作業終るんじゃない?」


「そうか。そうだね。みんなで積み上げ作業して、後は、一旦冒険者と村長さんに任せれば、領主様の護衛をしながらダンジョンに潜ることができるかもしれなね。」


 俄然やる気が出てきた僕とロジャーは、朝ご飯をガツカツと行儀悪く食べてしまうと、門の近くに置いてあったロックブロックを収納し、ロジャーは西に、僕は東に向かって正確に並べながら進んでいった。後2段重ねれば終了だ。一番上は凸凹になっている。石組みを丈夫にするためにわざとずらして重ねているからだ。そこを平らにする。


 へこんでいるブロックに3分の1と3分の2、2分の1と組み合わせると平らになる。盛り上がっているブロック高すぎるブロックだ。一番、へこんだところに2個加えることで10段になる。高い場所には、一個と半端なブロックだ。ロジャーにもそれぞれのおおきさのブロックを相当数預けている。


 凄い勢いで、石組をしていった。一番端の腰壁になる部粉も通路部分になっているところから1mの高さにそろえていく。人相手の防御壁なら矢避けも必要になるかもしれないけど今のところは、転落防止のための壁だ。砦の中川にも付けようとしたけど、邪魔になるだけだと言われて階段を付けるだけにした。階段は、10mごとにつけてみた。その為、下から見るとなんかきれいな模様みたいになっていた。


 ロジャーと二人頑張った。アンディーは完成部分を土魔法で強化し、継ぎ目をツルツルにした。特に外側は、光って見える位ツルツルだった。徐々に完成してく砦の外壁。10mの高さで手をかける場所がない位ツルツルの外壁。地価は、3m。壁の中には、結界魔法を刻み込まれた魔石が組み込まれた避難場所が組み込まれている。


 外壁だけで、スタンビート時にこの砦の住民を守ってくれると信じられる作りになっていた。


 これから、この砦の中を充実させないといけない。防御のための武器を配置し、護衛の為の兵士を訓練する。ここには、領主はいないけど、一人一人が自由騎士。スタンビートの時は、国を守る騎士になる者たちだ。魔物を殲滅させる火力を準備しないといけない。まだまだ、スタンビートに備える砦としては、力不足だろう。でも、守りは固まった。これで、人を呼ぶことができる。真にスタンビートに備えることができる開拓村、守りの砦になったんだ。


 今後冒険者や町から砦建築のために来てもらっている皆さんは、村の施設建築に回ってもらうことになる。しかし、砦建築の仕事は、一旦これで終了だ。後は、現場監督の村長の指示に従い、畑づくり班と、公共施設建築班に分かれてもらって作業を再編成する。


 王宮から許可をもらった砦建築は終了した。細かい仕上げは、これから行うことになるが、大枠の建築は終了だ。これ以上は、フォレストメロウの領主様にタダで、石材を貰うことはできなくなる。


 ロックリザードの討伐報酬は、今まで貰った石材で払ってもらったことになるんだ。でも、みんなが得をしているWINWINの依頼だったんじゃないかな。僕たちも大きな拠点。パーティーハウスを手に入れられたし。村全体の悲願だった砦も出来上がった。


 今日の領主様の視察でロックリザード討伐終了を認めてもらい。王都からの視察で、僕たちの褒賞であった、開拓村の砦の完成を認めてもらえば、砦完成に向けて頑張って開拓村の住民の悲願であり、僕たちの両親が守ろうとしたこの村が王国の守りのかなめになる砦の始まりが終わったことになる。


 砦の外側にそって歩いた。ゴーレムたちが、この10日間ほどの間だったけど、僕たちの村を守って来た木の杭を抜いて行く。南の壁に沿って歩き、北に向かおうとした時、

「ロジャー、アンディー、レイ、町に向かうわよ。」


 シエンナが、ゴーレム戦車に乗って待っていた。すぐに、小型ゴーレム戦車に乗り込み、町に向かった。今から、領主様の護衛をしながら、ロックバレーに視察に行くことになる。少し汗臭いかもしれないけど、領主様には我慢してもらおう。もしも、あんまり臭うようなら拠点の銭湯に一緒に入るのも良いかもしれない。


 町に着いたら冒険者ギルドの前で、ギルマスを乗せて、領主様の屋敷に向かった。門番の兵士に声をかけた後、ゴーレム戦車は後ろ向き走行で、領主様の館の庭に入って行った。


 館前に戦車を止めると、ミラ姉とギルマスが降りて、領主様のお屋敷から、お二人を連れてやってきた。


 一番後方の席に領主様ご夫妻に座ってもらう。中左にギルマス中右にミラ姉、前左が僕、運転はシエンナだ。ロジャーとアンディ―の高火力組は、二階に待機するフォーメーションだ。


「では、一番最初に今回、ロックリザード討伐に使用しました、ロックバレーの拠点にご案内いたします。この拠点は、これからもロックバレーダンジョンの攻略拠点として使用していただければ幸いに存じます。」


 何度も通った、フォレストメロウからロックバレーへの道。まあ、道と呼べるほど整ってはいないが、ここ数日ゴーレムバスが走ったせいで、道らしくなっていた。多足ゴーレム戦車にはほとんど揺れがない。凸凹を沢山の足が鳩首してくれるからだ。


「景色は、飛ぶように流れていくのに、この中は揺れないのね。」


「乗り心地はいかがでしょうか?ご気分がすぐれないとかは、ございませんか?」


 ミラ姉のバカ丁寧な言葉遣いに思わず笑ってしまいそうになるけど我慢した。シエンナは笑っていた。僕は、見た。


 10分ほどで拠点に着いた。


「ロックバレーの拠点に到着いたしました。領主様には、ここ数日寝る間もないほどの忙しさの中、ロックリザード討伐の偉業を支えたギルド職員へのお言葉を頂けるとありがたく思います。」


 領主様が、ギルド出張所に入って行った。それまで、冒険者への素材料は支払いの事務仕事を一生懸命していたギルド出張所の職員が固まった。


「フォレストメロウ領主のアーヴィン・ロイド・マクマスター様と夫人のフローレンス様だ。」


 ギルマスの言葉に慮区立不動の姿勢だ。


「みな、固くならずとも良い。此度の偉業、皆に本当に感謝しておる。助かった。あと少し大変だと思うが、頑張ってくれ。」


 夫人も深々と頭を下げ感謝の意を表した。ゾーイさんの目から涙がこぼれたのを僕は見逃さなかったよ。大変だったものね。


 ギルド出張所を出て、食堂兼酒場や宿泊施設と銭湯を案内した。一緒に入りませんかと耳打ちしたけど、手を振って断られた。やっぱり汗臭いままダンジョンに潜らないといけないのか…。


 拠点の施設見学後、ゴーレム戦車に乗って石切り場へ出発した。石切り場の中には、ロックリザードは一匹もいないかった。


「このような広々とした石切り場を見たのは初めてだ。私が知っている石切り場は、たくさんの石工が金槌とのみを振るい、たくさんの人が石を運んでいる石切り場か、ロックリザードが闊歩する石切り場しかないからな。こんなに広かったのだな。ここは。そして、本当に一匹のロックリザードもいなくなったのだな。本当に本当にありがとう。」


「私たちは、できることをしただけです。多くの者が力を合わせて。ただ、今回の討伐で誉めていただきたいことがあるとすれば、一人も死者が居なかったことです。沢山の怪我人は出ましたが、死者が一人も出なかったことが私たちの誇りです。」


「おおっ、そうなのですね。それは、すばらしい。何という偉業なのでしょう。このような大規模な討伐にもかかわらず、死者が一人も出なかったとは。本当にありがとう。素晴らしき偉業です。」


 夫人は、感動に打ち震えるように胸の前に手を合わせて褒めて下さった。嬉しかった。ミラ姉も少し目を潤ませていた。


「で…では、ほんの少しですが、ダンジョンの中をご案内いたしましょう。お約束していただきたいのですが、何があってもこの中、ゴーレム戦車のかなから出ることがないようにお願いいたします。」


 シエンナの運転で、ロックバレーの中を進んでいく。3分もしないで、ダンジョン入り口の前に着いた。


「ここが、転送型ダンジョン入り口でございます。では、中に入ります。」


 ふっと、体重が無くなるような感覚の後、明るかった景色が変わった。目が慣れてくると薄暗い中に小さな生き物がチョロチョロと動いているのが見えた。


「目を凝らして良くご覧ください。あれがロックリザードの幼体でございます。今の防御力であれば、大剣や斧でも倒すことができます。」


 ミラ姉は、ゴーレムタブレットを取り出し、


「ロジャー、アンディー、ロックリザードの幼体を1匹ずつ、討伐してみて。ロジャーとアンディーに送信」


『ロジャー:了解』『アンディー:了解』


 ロジャーとアンディーの二人が天井から飛び降りて斧と大剣でロックリザードの幼体を討伐しだした。動きは早いが、魔力が少ないためすぐに切断されてしまう。ロジャーの方は、死体はダンジョンに吸収され、小さな魔石が残った。アンディ―の方には、ロックリザードのかわがドロップされた。


「ご覧いただいたように、討伐後のドロップ品は、一定ではありません。時には、肉、時にはロックリザードの皮をドロップします。初級冒険者には、丁度良い一攫千金を狙えるダンジョンとなると思われます。」


「戦車に戻って。ロジャーとアンディーに送信。」


 二人が戦車の天井に戻った。


「では、下の階層に参ります。」


 ミラ姉は、ダンジョンの説明をしながら、領主様に、今ある拠点を維持して、このダンジョンを運営していって欲しいことを伝えた。領主様は、二つ返事で了承した。


 第5階層まで案内して、宝石のドロップがあることを確認してもらって、第2階層からダンジョンの外に出た。


 ダンジョンを出た後、フォレストメロウの街に戻った。領主夫妻は、王都への凱旋報告も僕たちに是非お願いしたいと言ってくれた。勿論指名依頼だ。その後、ギルマスは領主様の屋敷で降りて僕たちは、パーティーハウスへ戻った。


 僕も5階層まで見ることができて嬉しかった。


 パーティーハウスに戻って久しぶりにダイアリーを確認してみた。いっぱい書いてあった。ゴーレムタブレットのことも知りたいみたいだ。白黒だけど写真を撮れるようになったことを書き込んだ。びっくりするかな。ついでに、今日撮った領主様の写真とダンジョンの写真も精錬コピーでデータ化して日記に貼り付けた。写真の実験で試しに取った、みんなの写真も一緒にだ。それから、時間を見つけて、また異世界転生したいことも。こっちで8人乗りのドローンを、出来たら10人乗りのドローンを作って欲しいと書いておいた。

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