第116話 ゴブリン集落の焼き討ち

「確かに、火責め焼き討ちをやってみようと思っていたわよ。でも、それは、こんなに大きな広場があるって思ってなかったからでしょう。入り口をふさいで火責めすることで、『酸素』だったっけ以前言ってた息をするために必要なものをなくせば、全滅させられると思ったからよ。」


「でもさ、この広場とこの規模の集落だから必要じゃない?殲滅の為にはさ。それで、今回は、このゴーレム戦車を作ってみました。」


「これって、炎の中でも移動することができるってこと?」


 そんな話してると、シエンナがガーディーたちを収納して戻って来た。


「それで、これからどうするんですか?このままほっとくと、ゴブリンたちが集落から出てきますよ。」


「僕とアンディーでゴーレム戦車が退避するための退避場所を作って来るからその間、ゴブリンたちを集落から出さないように攻撃しておいてくれないかな?」


「ロジャーの投擲はともかく、私のアイスジャベリンじゃ、焼き討ちの障害になるかもしれないわよ。」


「今は、とっても燃えやすい状況になっているから、アイスジャベリンが、ちょうどいいかもしれない。小さな火花でも発火しそうな状況だから。ロジャーの方が発火の危険があるからできるだけ火花が出ない武器でお願い。金属武器はご法度だよ。石もダメ。木の杭位がいいかもよ。」


「でも、木の杭はアンディーが全部撃ち込んだからな。ストレージには、残っていないぞ。」


「大丈夫。少し小さいけど投げやすい木の杭が残ってる。今から渡すからさっきみたいに手の平を出して準備して。」


 僕は、残っていた小さめの杭をロジャーに渡した。巣へ出の杭を受け取った、ロジャーとミラ姉は、ゴーレムの屋上に立って攻撃を開始した。


 アンディーと僕は後ろの出口から戦車の外に出て高さ1mほどの壁とその後ろに2m50cm程の深さの戦車がすっぽり入ることができる位の穴を掘った。穴の後ろ側はスロープにしておいて前方は全面を塀の上に出すことができる階段を付けておいた。


 集落には、燃料となる木片は大量にある。更に、木の杭を武器にして多数撃ち込んでおいた。杭は、燃料として最高の状態になるように水分を抜いている。


 酸素は、大量に打ち込まれ、今、火種が与えられるとあっと言う間に燃え広がり、焼き尽くすはずだ。


 戦車のかなに戻った僕は、アンディーと一緒に戦車の屋上に上がり、戦車の退避場所と集落の間にリキロゲンボールを撃ち込んだ。撃ち込んだ場所が白く起こりついた。


 攻撃準備が終わると、戦車のかなに戻り、ハッチをしっかりと締めた。僕は、全員分の色付き眼鏡-サングラスを精錬して準備した。


「アンディ―、とどめの一発をお願い。ファイヤーボールを集落に打ち込んで。」


「了解。」


 アンディーが、前方の魔術発出口を開け、ファイヤーボールを集落の家に向かって打ち上げた。ファイ―ボールは放物線を描き、集落の手前側に落ちた。


『ゴーッ。パチパチパチ。』


 凄い勢いの炎がはじけ、目の前の集落を真っ白にした。サングラスをしていてもまぶしいくらいの光が集落を覆い、焼き尽くしていった。


「オキシゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール。オキシゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール。オキシゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール。…。」


 緩い勢いで液体窒素と液体酸素をゴーレム戦車の天井や壁に打ち込み被害を抑えようしていると、ミラ姉が震えながら制止してきた。


「やめなさい。みんな凍り付いてしまうわ。」


 それから、戦車内の気温が上がってくると液体窒素と液体酸素で装甲と室内の温度を下げて火が収まるのを待った。


 30分後、ゴブリン集落は燃え尽きたようで、煙も出ていなかった。白い灰に覆われている。今、少しでも窓を開ければ、すごい熱気が入ってきて、戦車内が燃え出すだろう。


「シエンナ、外の状況、分かる?」


「はい。凄い熱気です。車体が解けないか心配なくらいですが、オットーは、大丈夫だと言っています。集落の中には入れないかもしれませんが、迂回して向こう側に行くことはできそうです。」


「ちょっと待ってね。高温部分をサーチしてみる。」


 僕は、広場全体をサーチして温度分布を調べてみた。集落があった中心部が一番高いのは当然だが、一番最後に燃えたはずの最深部の温度が異常に低い。また、高温部分は左側に寄っているようだ。建物が密集していたのかもしれない。


「右の方が少しだけ温度が低いようだから、右側に迂回して最深部に向かおう。異常に温度が低くなっている場所があるんだ。」


 ゴーレム戦車は、集落跡に沿って最深部に向かった。2度、オキシゲンボールとリキロゲンボールを出したが、蒸し風呂状態という訳ではなかった。ミラ姉は寒すぎると文句を言っていたけど、ゴーレム戦車ごと蒸し焼きになるのは怖いから寒いくらいにさせてもらった。


 最深部に到着した。生きているゴブリンはいないが、ゴーレム戦車内の温度が上がっていかない。外の様子は明らかに違う。


「シエンナ、外の状況を教えて。」


「灼熱の熱さではありません。真夏の日向程の暑さです。外に出ることもできそうですが、出てみますか?」


「ミラ姉、外に出て、ゴーレム戦車に水をかけてあげてくれない?僕は、灰や魔石を収納してくる。」


「了解よ。ロジャー、レイの護衛を頼むわ。アンディーは、私の護衛お願い。」


「「了解。」」


 僕は、ロジャーと一緒に集落跡地に方に向かった。ゴーレム戦車から5mも離れるとすごい熱気が集落跡地の方から伝わってきた。しかし背中の方からは、涼しい風が吹いてくる。


 僕は、集落跡地の方に手をかざして、白い灰と魔石を収納した。大小さまざまな魔石を収納することができた。大量の灰は、上質な肥料になるだろう。


 僕の後ろでは、ミラ姉がゴーレム戦車に水をかけていた。シューッという音がしてゴーレム戦車から白い湯気が立ち上っている。やはり、表面はかなり熱くなっていたようだ。


 ゴーレム戦車から湯気が出なくなったのを合図に、僕たちは戦車の中に戻った。戦車内は、少し寒いくらいのままだった。


「エアコンが欲しいな…。」


「えあこん?何だそれ?」


 僕のつぶやきをロジャーが聞き返してきた。


「部屋の温度を調節してくれる機械だよ。暑い時には涼しい風を出して、寒い時には暖かい風を出すんだ。」


「そんな便利な物があれば、欲しいかもな。でも、そんなものがあっても、外に出れば、同じじゃないか?」


「まあ、そうだね。外に出れば同じだね。」


「レイ、次は、あっちの涼しい風が吹き込んでくる方に向かうんでしょう。」


「そうだね。階層ボスの部屋なのか、2階層の入り口なのか、とにかく入ってみよう。」

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